年を追うごとに雪国の冬が好きになってきた……気でいたのだが。


今年はよく雪が降る。新潟なら当たり前と思われる人も多いと思うが、実は新潟市、特にその中心部では例年あまり雪はつもらない。積雪ゼロ、なんて年もあるくらい。

子供の頃は雪が大好きだった。そうでない子供などいるだろうか?
新潟市内ではあったがはずれで育ったので、小学校までは遠く、2キロ半あった。
ただでさえ長い距離だが、雪が降ると車道が除雪され、その分も積みたされる歩道は雪山のようになる。
その上に通勤・通学の人々に踏み固められることによって、獣道のような細い道ができ、大人も子供も、そこを一列になって歩く。
ただでさえ通学には30~40分かかったが、雪が積もれば1時間以上かかる。
それがうれしくて仕方がなかったのだから、おかしなものだ。

年を追うごとに、新潟の冬が嫌いになっていった。雪も寒さもさほど気にはならない。厚着をして、滑りにくいブーツを履けばすむ。
問題は日差しだ。
北陸の冬は日照時間が極端に短い。日が差さない日が長く続くと、地元生まれの僕でも気分が鬱々としてくる。
調べたところ、冬に日が差さないのは地球規模ではむしろ普通で、晴れの日が多い日本の太平洋側の方が特殊なのだという。
しかしそれを知ったところで、気分が晴れるわけではない。
とはいえ、冬なのにいい天気が続くと、徐々に落ち着かなくなってくる。気分がふわふわして、締まらない。
ある程度は寒く、そして雪もあったほうがしっくりくるようだ。
人はそうやって環境に適応していくのだろう。いつの間にか新潟の冬が好きになっていた。

先日、小学校6年生の三男が、「毎日寒くて嫌だな」と言った。
数年前までは雪に目を輝かせていたが、子供たちもこのくらいの年になると雪や寒さを嫌うようになってくる。
「父さんも、ずっと新潟の冬が嫌いでね」
僕は息子に話した。「でも最近はだんだんと好きになってきた。生まれ育った土地って、そんなものなんだろうな。見てみろよ。雪景色、きれいじゃないか」
すると息子は、不満そうに口をとがらせて言うのだった。
「だってお父さんは、寒ければ家から出ないじゃない!」

あ、そうか。僕が新潟の冬を好きになったのは、加齢や、郷土愛によるものだと思い込んでいた。
違った。
アーリーリタイアしてから、寒い日は(毎夕のジョギング以外は)家から出なくなったからだ。
窓からの雪景色を楽しみながら、朝風呂に入る。昼食をつまみに一杯飲むこともしばしば。
昼寝から起きると、子供たちが帰ってくる。
寒い、寒いとヒーターの前に群がるのを、「このくらいの寒さで、情けないぞ」と軽く叱る。
いい気なものだし、そりゃあ、冬が好きになるわけだ。

しかし、それを息子に指摘されるとは・・・。
今、父親としての僕の背中は、彼らにはどんな風に映っているのだろう?
少し気をつけないとね。




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内山 直

作家、医師、医学博士。
1968年新潟県新潟市に生まれる。新潟大学医学部卒業、同大学院修了。
2004年に独立し自分のクリニックを立ち上げ、「行列のできる診療所」として評判を呼ぶが、その後アーリーリタイアメントを決意。
2016年2月、クリニックを後輩医師に譲りFIRE生活を開始する。
地方都市でゆるゆると生息中。

「お金、地位、美貌」で得られる幸福はたったの10%で遺伝が50%とされています。
残りの40%に目を向ければ、幸せはすぐにやってくる!をキャッチフレーズに幸福の啓蒙活動を継続中。

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