「つらい体験したときには即効的な解決策を求めない方がいい」……深い


今週紹介しているのは村上春樹著「村上さんのところ(新潮文庫)」。
寄せられたメールでの相談に村上春樹氏が次々と回答していくという、考えようによってはかなり贅沢な造りの本で、すっかりはまってしまった。
僕はいわゆるハルキストでも、ましてや村上原理主義者でもないが、この本を読んでいると、村上氏の優しさや言葉選びの真摯さにぐいぐいと引き込まれていく。


まずは「ヘイトスピーチ」について。

p457
(前略)
いちばんの問題は、愛よりも憎悪の方が、理性よりは怒りの方が、簡便に言語化できることです。ポジティブなことよりは、ネガティブなことの方が、人の心に直接的に訴えかけやすいことです。「あんなやつはカスだ、アホだ、無価値だ、非国民だ」と罵倒するほうが、「あの人はとても立派な人です」と説明するよりは、多くの場合インスタントな説得力を持ちます。条理を説くよりは、憎しみや恐怖をあおる方が人々の耳目を引きます。しかしそういうものを「しょうがない」として放置しておくと、それが根を下ろして、知らないうちに大きく育っていきかねません。
(後略)

「愛よりも憎悪の方が、理性よりは怒りの方が、簡便に言語化できる」というのは本当にその通りだと思うし、そのような「傾向」について、僕らは常に意識的であるべきだと思う。
SNSなんかを眺めていると、無防備に、そして簡単に過激な方向へ流される人が多いのに驚かされると同時に、危機感すら覚えることがある。
もちろん僕自身も慎重でいなければ、と再確認。

次は「本当につらいとき、闇に耐える強さ」。こちらは質問も一部紹介する。

p470
(前略)
河合隼雄さんの著書もたくさん読みましたが、『こころの処方箋』の「灯を消す方がよく見えることがある」という章が特に好きです。
その中の「子どもがつらいときに、方法を探しまわるのではなく、子どもとただそこにいることが大切。そうすれば暗闇から光が見えてくることがある」という言葉が、子育てする上において、私の指針となっています。
村上さんも「井戸の中に下りて行く」ということを言われていて、同じような意味なのかなと思っています。
私はお二人の言葉にすごく共感するんですが、実際はつらいときや苦しいとき、方法を探してそこから逃げたくなるし、何もせずにただそこにいるというのはとても難しいです。
(中略)
不安にかられたときにうろうろする人ではなく、灯を消して、しばらくの間、闇に耐えられる人になりたいのです。
どうすればそんな強さを持てるようになるんでしょうか。村上さんのお考えをお聞きしたいです(45歳 女性)

回答がこちら。

何か本当にきついことを、つらいことを体験したときには、あまり直接的な、即効的な解決策を求めない方がいいのではないかと、僕も考えています。少なくともしばらくのあいだは、誰かに相談したりもしない方がいいだろうと。それよりはその「きつさ」をじっと抱えていた方がいいのではないかと。それを一人でしっかり抱えているうちに、何かしら自然に見えてくるものがあるのではないかという気がします。それがおそらくは、河合先生の言う「灯を消す方がよく見えることがある」ということなのではないでしょうか。
あまりに早く解決策をみつけてしまうと(あるいは見つけたと思ってしまうと)、人にとって大事な「心の年輪」みたいなのが、そこでうまくつくられないままに終わってしまいます。「今は年輪をつくっているところなんだ」と思って、じっと我慢することが大事です。僕が「井戸の底に降りていく」というのも、たしかに同じような趣旨のことなのかもしれません。

質問も深いし、回答も実にいい。僕の解説は蛇足にしかならないので、今回は省略。
久しぶりに河合隼雄氏の本を読み返したくなった。

このシリーズは明日で最終回の予定。



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内山 直

作家、医師、医学博士。
1968年新潟県新潟市に生まれる。新潟大学医学部卒業、同大学院修了。
2004年に独立し自分のクリニックを立ち上げ、「行列のできる診療所」として評判を呼ぶが、その後アーリーリタイアメントを決意。
2016年2月、クリニックを後輩医師に譲りFIRE生活を開始する。
地方都市でゆるゆると生息中。

「お金、地位、美貌」で得られる幸福はたったの10%で遺伝が50%とされています。
残りの40%に目を向ければ、幸せはすぐにやってくる!をキャッチフレーズに幸福の啓蒙活動を継続中。

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