「収入が多いほど幸福度が増す」との報告について考える ~ お金で幸せは買えるのか その1


従来、収入による幸福は年800万円程度で飽和すると考えられてきた。収入が増えるにつれ幸福度が上がるのはその辺りまでで、それ以上収入が増えても幸福度の押し上げ効果はほとんどないようなのだ。
しかし逆に、「年収は高ければ高いほど満足度や主観的幸福が増す」という、従来の考えとは真っ向から対立する驚きの研究が数年前に報告されている。
https://www.pnas.org/content/118/4/e2016976118

pnas2016976118fig01.jpg


論文によると、これまでと違う結果が出た主な理由は

・リアルタイムでの幸福度の測定(以前の研究では『過去のある期間』の振り返りなので、実際の幸福度と異なる可能性があった)
・幸福度のスケールを広くとった(以前の研究ではこれが狭かったため、多くの低所得者が容易に上の幸福度に達した)
・多数の高収入の参加者を含み、より高い収入をきめ細かく測定した

といった点。
それらの変更によって年収800万円でプラトーに達するどころか、年収8,000万円まで調べても幸福度は上昇し続けるという結果になったというのだ。
つまり「幸福はお金で買える」ことになる。実に興味深いし、「幸せはお金で買えない」の信念の元でFIREした僕にとってはいささか都合が悪い。
今日から数日間、この新しい知見について徹底的に考えてみる。

まず第一に、この研究結果をもって「幸福はお金で買える」という結論に飛びつくのは早計だということ。「幸福はお金では(ある程度しか)買えないらしい」ことを示す根拠は、前述した「年収800万円の論文」だけではないのだ。
手元にある「幸せのメカニズム」前野隆司著だけでも、これだけの知見が紹介されている。

・長期的に見れば収入と幸福の相関は弱く、収入が増大しても主観的幸福感は高まらない傾向がある
・ものを購入することは幸福感とあまり関係がない
・服などの物質的消費よりも、コンサートや旅行などの体験的な消費のほうが、幸福感に強く影響する(そして経験のために高収入は不要だ)
・幸福度が最も高い上位10%の人々は、彼らよりわずかに幸福度が低いひとたちほどには高収入ではない
・アメリカの中高生への調査の結果、労働者階級の子供たちのほうが中上流階級の子供たちよりも幸福度が高かった

もちろん他の本をあたればこれ以外の知見も山と出てくる。「お金で幸せは買えない」はある程度までは真実であるはずなのだ。
ではそれらの知見と今回紹介された「収入の幸福への寄与に頭打ちはない」とはどちらが正しいのか?
これは本当に難しいが、僕の感覚では「どちらも正しく、どちらも正しくない」ように思える。両論ともしっくりこないのだ。
その理由について明日以降アップしていきたい。




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卵白を泡立て、自家製XO醤を添えたスペシャル卵かけご飯。

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内山 直

作家、医師、医学博士。
1968年新潟県新潟市に生まれる。新潟大学医学部卒業、同大学院修了。
2004年に独立し自分のクリニックを立ち上げ、「行列のできる診療所」として評判を呼ぶが、その後アーリーリタイアメントを決意。
2016年2月、クリニックを後輩医師に譲りFIRE生活を開始する。
地方都市でゆるゆると生息中。

「お金、地位、美貌」で得られる幸福はたったの10%で遺伝が50%とされています。
残りの40%に目を向ければ、幸せはすぐにやってくる!をキャッチフレーズに幸福の啓蒙活動を継続中。

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