瞑想以外で悟りの境地に達するための「効率的」な方法とは?


いわゆる「悟りの境地」に興味のある人は多いと思う(多くないよ、というご批判には耳を傾けず淡々と続けるw)。従来からそれには瞑想が重要と考えられてきた。
瞑想が脳のどの部位に、どのような影響を及ぼすかは、様々な研究によって解明されつつあり、一番顕著なのは、前頭葉(論理的思考、計画、感情および自意識の機能をうけもち、人間を人間たらしめている部分)の機能が一時的に低下すること。
さらに神経解剖学者ジョン・ボルト・テイラーは自身が脳卒中により左脳機能を失ったとき、「幸福な恍惚状態に宙吊り」になったような激しい感覚を覚えた、と自著に記している(奇跡の脳 新潮文庫)。
これは仏教でいう「涅槃」ではないのか? 実に興味深い。
しかし、となると自他共に認める左脳人間であり、また医師として前頭葉を常に活発に使い続けてきた僕のような人間にとって、瞑想は非常に困難なものとなってしまう。
人一倍がんばるしかないのか?
実はそれを逆手にとる方法がある。
なんと科学を学べば、瞑想などしなくても悟れるし、現に自分は悟ったと主張する本があるのだ。前野隆司・著「幸せの日本論(角川新書)」。


著者による論説を、僕なりにまとめるとこうなる。

「諸行無常」はすべてのつくられたものは無常である、という意味だ。
デカルトからカントまでの近代哲学者が追い求めた哲学的真理や倫理的真理に対し、むしろそれはないと考えざるをえないことに気づいたのが、いわゆるポストモダンであり、それをふまえれば、物質的なものはもちろん、抽象概念である真や善も常に正しいというわけにはいかない。さらに、素粒子論、複雑系科学などの現代科学が、近代西洋流の限界を示したことなど、まさに諸行無常そのものではないか。
また、諸法無我は、すべてのものは、我ざらなるものである、もしくは、実体がないものである、という意味だ。
ベンジャミン・リベットによる「指を曲げる研究」により、自分の意思で思う瞬間よりも、0.35秒早く、脳内における無意識的な運動野での神経発火が計測されている。つまり、「指を曲げよう」という自分の意思に思えたものは、「我ならざるものである」ことがわかる。つまり、「我思う、故に我あり」だと思っていたら、「我思う、しかし、その実態は、無意識に追従する幻想のような自分」だったのである。
昔はこれらの知見がなかったから、座禅を組む等の修行を重ねることによってしか、諸行無常、諸法無我ということを理解することができなかった。しかし冷静に考えれば、それらはすでに現代科学によって証明されているようなものなのだ。


要約が下手で申し訳ないが、抜粋すると相当長くなってしまうので、出来る範囲でまとめてみた。
そして、ここからは抜粋。

2500年前と違って、私たちは、困難な修業を経なくても、科学の成果の論理的な理解によって、悟り(=至福)に至ることができるのではないかと思うのです。
私自身、悟りの境地とは何か、はっきりとわかります。すべては無である。欲は幻想である。私も、昔は恥ずかしながら名誉欲や金銭欲に支配されがちでしたが、今は違います。今、死んでも悔いはない。もちろん、名誉や金など目指していない。今を生きるだけ。しかも、自然の一部として。究極の自然体です。悩みもない。至福です。心を落ち着けると、このスタンスに立てます。しかし、ブッダと違って、気を許すと煩悩の世界に戻りそうになりますので、修行は一生続くと言うのもよくわかります。


うわあ、なんだか、すごい迫力! この人、偉人なのか、はたまたよほどの変人か・・・。
本の略歴をみると、1962年生まれ(僕より6歳上)、東京工業大学卒、同大学院修士課程修了。キャノン入社後、ハーバード大学客員教授、慶応大学教授などを経て、現在、慶応大学大学院システムデザイン・マネジメント研究家委員長・教授、とある。
経歴をみた個人的な印象でいえば、「突き抜けた変人」であるように思える(もちろん、いい意味で!)。
この本を読んで、(そうか、左脳人間の僕でも、論理の積み重ねで悟ることも可能なのか!)とうれしくなった。

僕自身はこの本と出合った後、類似の本を何冊か読み、そこから3日間集中的に瞑想を行ったところ、自我たるものの脆さを実感することになる。
「悟り」には遠く及ばぬレベルであることは自覚しているが、たとえば認知バイアスに捉われることは随分減った。
自分が本当に論理的に考えているのか、それとも感情的に結論を下してその後で作話を行っているだけなのかが、メタ認知によって把握できる頻度が高くなったように思う。
偉そうに聞こえるかもしれないが、ほとんどの人は「自分はできている」と思いながら、実はほとんどできていない。これは一般的な学歴との相関はなさそうだ。

悟りの境地に興味があり。しかし左脳タイプで瞑想には自信がないという人にはお勧めの1冊だ。




ランキングに参加してます。ぜひ一票を。
更新の励みになります!
    ↓
にほんブログ村 ライフスタイルブログ セミリタイア生活へ
にほんブログ村



IMG_5771.jpg
苺シロップ作成中。

スポンサーリンク

内山 直

作家、医師、医学博士。
1968年新潟県新潟市に生まれる。新潟大学医学部卒業、同大学院修了。
2004年に独立し自分のクリニックを立ち上げ、「行列のできる診療所」として評判を呼ぶが、その後アーリーリタイアメントを決意。
2016年2月、クリニックを後輩医師に譲りFIRE生活を開始する。
地方都市でゆるゆると生息中。

「お金、地位、美貌」で得られる幸福はたったの10%で遺伝が50%とされています。
残りの40%に目を向ければ、幸せはすぐにやってくる!をキャッチフレーズに幸福の啓蒙活動を継続中。

自著の紹介

ツイッター(更新告知など)

ブログ・ランキング参加中

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

こちらは執筆・取材・講演依頼など業務連絡専用です。 記事に対するコメント・ご意見はX (旧ツイッター)でお願いします。 こちらに頂いても返答しかねますので、ご了承ください

全記事表示リンク

プライバシーポリシー

検索フォーム