新型コロナウイルスの感染拡大をめぐり、比較的緩やかな独自の対策を続けてきた北欧のスウェーデン。
ついに死者が4500人を超え、対策の責任者は地元メディアに対し「今よりも、もっとうまくできたはずだ」と対策が十分ではなかったことを認めた。
では優先した経済はどうなったかといえば、一国だけで活性化できるわけもなく、輸出の落ち込みから停滞。
またノルウェーとデンマークは、今月15日から入国制限を一部解除し、相互の行き来を再開するが、スウェーデンは死者の数が多いなどとして対象から除外される。
まさに踏んだり蹴ったりだ。
4月にはスウェーデンのやり方を支持し、「日本も自粛など必要ない」と主張していた自称・知識人たちは、それについてダンマリを決め込んでいる。
とスウェーデン政府や一部SNS住民を批判しても生産性はない。
当ブログでは逆に、「なぜスウェーデンは『そこそこ』うまくやれたのか?」に着目したい。
新規感染者数の推移をみると、スウェーデンでは4月に入ってからずっと横ばいが続いている。
つまり実効再生産数が「1」あたりで推移しているのだ。
感染爆発が起こらなかった理由はというと、スウェーデンでは都市封鎖こそしなかったものの、それなりの対策はしていたから。
箇条書きにしてみる。
・飲食店やバーは営業が可能だが、客同士の密集を避けるため、顧客の間には腕1本分(内山注;スウェーデン人だと80cmくらいか)を目安に適切な距離を確保するよう推奨するとともに、飲食中は常に着席することを義務付けた。
・50人を超える集会は禁止。
・教育機関については高校、専門学校、職業訓練所、大学を閉鎖し、遠隔授業を行うよう推奨。
・店舗やショッピングモールに対して、滞留顧客数を制限し、支払時に列ができずにすむ代替策や間隔を空けた並び方の掲示などの措置を要請。
・企業など雇用主に対しては、可能な限り在宅勤務とすることや、不要不急の外出や出張の取りやめ、近距離での接客の回避などを要請。
・70歳以上の高齢者や感染リスクが高い住民に対しては、公共交通機関の利用も一切避けるよう求め、高齢者には薬局や食料品店での買い物も避けるよう呼びかけ。
スウェーデンは決してノーガードだったわけではない。
考えようによっては今の日本よりもよほど厳しい対策がなされているのだ。
そして、これが実効再生産数が1、すなわち感染者数が増えも減りもしない自粛レベルということになる。
これよりも厳しくすれば、患者数は減少(今の西ヨーロッパ諸国が該当)。
逆にこれより甘ければ、患者数は増えていくことになる。
そんな中、単純な対比を難しくしているのがマスクだ。
スウェーデンはいまだにマスクをしていない人がほとんどで、これが最大の失敗だと僕は捉えている。
なぜガイドラインで、マスクの着用を求めなかったのだろうか?
それを加えさえすれば、実効再生産数が1以下になった可能性は大いにあったのに。
何にせよ、対策が甘すぎたと認めているスウェーデンでさえ、「ソーシャルディスタンスの確保」、「在宅勤務、リモート授業の拡充」、「近距離での接客の回避」といった意識は浸透している点に留意したい。
日本では非常事態宣言が解除されたことに浮かれ、自粛が緩みすぎてはいないだろうか?
しっかり対策をとらない限り、今後もソーシャルディスタンスのとれないパーティーや小さなバー、それにクラブなどにおける近距離での接客によって、感染者数が増えてしまいそうだ。
「スウェーデンの政策が、ちょうど実効再生産数1のラインであり、成功・失敗の分岐点である」
ここを理解すれば、コロナ終息への道は自ずから見えてくるはずだ。
壮大な社会実験によって与えられた貴重な資料を、人類は見逃すべきではない。
明日は新コロで「なぜか患者が少ない」と首を傾げる人も多い東南アジアの情勢を紹介する予定だ。

ローストポーク、キッシュなど。