なぜ東南アジアでは新型コロナウイルスの感染者が少ないのか?

新型コロナウイルスが日本で蔓延しにくい原因は、主に生活習慣にあると書いてきた。
欧米の状況をよく観察すると、免疫や遺伝といった体内的な要素で感染が拡大したとは思えないのだ(過去の記事を参照してほしい)。

そう主張すると聞こえてくるのは、「じゃあなんで、日本ほど清潔ではない東南アジア諸国でも感染者数、死者数が少ないの?」という疑問だ。
欧米に比べると報道されることが少なく、状況が掴みにくいのもありそうだ。
今日は早期にウイルス封じ込めに成功したタイとベトナムを例にとって考えてみたい。

まずはタイ。国内感染者がほとんどみられなかった2月の時点で、感染増加地域からの入国者に対する2週間の自宅待機を義務化している。
3月18日には全国の学校や娯楽施設を閉鎖。この日の新規感染判明者数はたった35人だ。ちなみにそのころ日本では41人でタイと同程度だったが、まだ「オリンピックは予定通りできるのか」という呑気な議論が交わされていた。
3月22日のタイでの感染者数は188人(これがタイでのピークとなる)。この日、首都バンコクで食料品店や薬局などを除く全ての店が閉鎖された。一方日本は連休で、好天に恵まれたのもあり人出が多くみられた。この時点での新規感染者数は43人と、まだタイよりも少なかった。
ここでの対応の差が明暗を分けたものと思われる。
その後もタイでは26日に非常事態宣言、4月3日に夜間外出禁止令が矢継ぎ早に出される。日本の非常事態宣言発出は4月7日と、タイより約2週間遅かった。

僕が重視している「マスク事情」はどうか?
2月の時点で多くの人が着用していたそうだ。日本はマスク不足でアップアップしていたが、タイではすでに大量の布マスクが出回っていた。

その後4月下旬からは1日の感染者数が10人以下で推移したため、5月17日、百貨店やショッピングモールが約2カ月ぶりに再開。
時期的には日本と近いが、その際の対策はというと、客にマスクの着用、検温、手の消毒を求めるだけではなく、入退店時にはスマートフォンでQRコードを読み込んで時間を記録するなど、日本以上であった。
その後も1日の新規感染者数が10人を上回ることはほとんどない。

行政が優れていただけではなく、民度も高い。ギャラップ社が3月末、30カ国で実施したコロナウイルスに関する世論調査によると、「自分自身または家族のだれかが実際にコロナウイルスに感染するかもしれないと思う」という意見に対し、「そう思う」と回答した人はタイでは77%、日本では52%だったとのこと。
タイ人のほうが、早期から「正しく怖がって」いたわけだ。
また実質的な感染のピークは非常事態宣言が出される2週間前である、3月12日前後であった可能性が高い。
行政の判断よりも先に国民が自主的に自粛生活に入ったという点では日本以上といえる(麻生さんに教えてやりたい)。

さらにタイは高齢化社会ではないことや、冷房の普及率が先進諸国より低く、オープンエアの飲食店が多いことも幸いした可能性がある。これらを考え合わせれば、タイで感染が抑制できたのは必然なのだ。
ちなみに致死率は1.9%と、同じく早期封じ込めに成功した台湾、オーストラリア、ニュージーランド同様に低い(これらの国では重症化しにくいのではなく、検査数が多く、無症状~軽症例にも検査できたため、致死率の分母が大きくなったという見解は以前述べた)。

ベトナムはさらに見事な対応をしている。
3月18日からすべての外国人に対するビザ(査証)の発給を停止(このときの感染者数は50人)。
3月22日にはすべての外国人の入国を停止(感染者96人。ちなみに日本が米英からの入国を禁止したのは4月3日)。
3月24日、ホーチミン市は席数の多いレストランなどに対し、同日午後6時以降の営業停止を指示。
3月26日、3月28日から4月15日の期間、外出を最大限制限、商業サービス活動の休止などを指示。
と、タイ同様、すべてが早い。

さらに見事だったのが感染者の追跡だ。
感染者との濃厚接触者はすべて政府の用意した施設で隔離。さらに濃厚接触者の接触者までも自宅隔離(アプリでの監視あり)。
SARSや鳥インフルエンザで苦しんだ経験が、しっかりと生かされていたというわけだ。
ベトナムではここ1カ月間、国内での新規感染者は報告されていない。死者数はゼロのまま。となると欧米株は水際で止めた可能性が高い。

日本人は欧米を上に、そしてアジアを下に見る傾向がある。だから欧米の状況が近隣アジア諸国より悪いと、何か特別な事情があるはずだ、とつい考えてしまう。
逆に、もし欧米での状況がよく、アジアでは悪かったとしたらどうだろう?
「やっぱりアジアはまだまだだね」などと反射的に考えたのではなかろうか。
「東南アジアでも感染者が少ないくらいだから、きっとアジアの人間はうつりにくいんだよ」
ろくに考えもせずにそう吹聴していた人は反省の上で認めてほしい。
彼らは実によくやった。日本を含む先進諸国は完全にしくじったのだと。

ちなみに東南アジアならどの国もうまくいっているわけではない。
フィリピンは3月17日とかなり早期から都市封鎖に踏み切ったが封じ込めには失敗し、いまだに感染者数は増加を続けている。
このウイルスに極端な都市封鎖は必要ない。マスクの装着、3密回避、クラスター・接触者対策こそが重要なのだ(というのが僕の見解)。
フィリピンはマレーシアのような接触者追跡対策を取ることができなかった。今後、新たな感染の中心地になってしまう可能性は大いにあると思う。

東・東南アジア・オセアニアが何らかの遺伝的、免疫学的理由で有利だった可能性は残る。でもほとんどは「マスク」と「正しい政策」で説明がつくというのが、現時点での僕の見解だ。
マスクで救われたのは日本、政策で成功したのがオーストラリアとニュージーランド。新規感染者ゼロを続けている台湾、香港、ベトナムにはこの両方が備わっていた。
日本ももう少し早く欧米からの入国を禁止していたら、と残念でならない。


追記
ちなみに僕はタイに1989年から2003年の間4回訪れていて、大好きな国のひとつだ。
毎回2~4週間ほど滞在した。
その後、医師として開業し、子供が生まれてからは足が遠のいてしまっている。
(子連れでの途上国旅行は僕にはちょっときつい)。
また行きたいなあ。
僕はちょっとだけタイ語が話せる。
ポンプーパーサータイ、ニッドノイ、だ。

フィリピンにも若い頃に一度行ったが、個人的にはあまり好きではなかった。
(ただし、今のように観光地化される前のボラカイでのんびり過ごせたのはいい思い出だ)。
当ブログでよく取り上げる、ドイツ、フランス、イタリア、スペインにも観光で訪れている。
フランスは2回行ったし、イタリアはシシリー島まで南下した(若かったなあ)。
イギリスには1年住んだ。

それらの国々の空気に触れることなく、ネット情報だけをつなぎ合わせていると思われるのも癪なので、一応付け加えておく。
昔はフットワークが軽かったなあ。



IMG_5314.jpg

ガパオライス(タイ)。

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内山 直

2016年、47歳でセミリタイア。地方都市でゆるゆると生息中。
「お金、地位、美貌」で得られる幸福はたったの10%で、遺伝が50%。
残りの40%に目を向ければ、幸せはすぐにやってきます!

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