サピエンス全史から考える、より幸せな生活への方策 前編


昨日の記事の中で、サピエンス全史(河出書房新社)に触れた。
ずいぶん前のベストセラーであり今さらという感じもするが、いまだ古びた感はまったくないので、一部を引用の上、自分の考えを述べたい。
今回は、主に上巻からの抜粋。

狩猟採集民は、地域ごと、季節ごとに大きく異なる暮らしをしていたが、後の農民や牧夫、肉体労働者、事務員よりも、全体として快適で実りの多い生活様式を享受していたようだ。

狩猟採集民が未来を考慮に入れなかったのは、彼らがその日暮らしで、食べ物を保存したり、所有物を増やしたりするのが難しかったからだ。(中略)そのおかげで、狩猟採集民は多くの心配ごとを免れた。自分にはどうしようもないことを悩んでもしかたがなかったからだ。

農業革命は、安楽に暮らせる新しい時代の到来を告げるにはほど遠く、農耕民は終了採集民よりも一般に困難で、満足度の低い生活を余儀なくされた。狩猟採集民は、もっと刺激的で多様な時間を送り、飢えや病気の危険が小さかった。人類は農業革命によって、手に入る食糧の総量をたしかに増やすことはできたが、食糧の増加は、より良い食生活や、より長い余暇には結びつかなかった。むしろ、人口爆発と飽食のエリート層の誕生につながった。平均的な農耕民は、平均的な狩猟採集民よりも苦労して働いたのに、見返りに得られる食べ物は劣っていた。農業革命は、史上最大の詐欺だったのだ。

歴史の数少ない鉄則の一つに、贅沢品は必需品となり、新たな義務を生じさせる、というものがある。人々は、ある贅沢品にいったん慣れてしまうと、それを当たり前と思うようになる。そのうち、それに頼り始める。そしてついには、それないでは生きられなくなる。
(中略)
普通の郵便だけだった時代には、人々は何か大切な用事があるときにだけ手紙を書いた。(中略)今日では、私は毎日何十通もの電子メールを受け取り、相手はみな、迅速な返答を期待している。私たちは時間が節約できると思っていたのに、逆に人生の踏み車(トレッドミル)を以前の10倍の速さで踏み続ける羽目になり、日々を前より落ち着かず、いらいらした想いで過ごしている。

2014年の経済のパイは、1500年のものよりはるかに大きいが、その配分はあまりに不公平で、アフリカの農民やインドネシアの労働者が一日身を粉にして働いても、手にする食料は500年前の祖先よりも少ない。農業革命とまったく同じように、近代経済の成長も大がかりな詐欺だった、ということになりかねない。人類とグローバル経済は発展し続けるだろうが、さらに多くの人々が飢えと貧困に喘ぎながらいきていくことになるかもしれない。

人類は発展をとげていると皆が言う。
それはそうだ。暖かい家に住み、清潔な服を着て、車や電車、時には飛行機まで使って移動し、珍味を味わい、テレビにパソコン、スマホまで使いこなしている。
だがそのお陰で日々が豊かになったか、ゆとりができたか、そして幸せになったのかと問われれば、答えは大いに疑問だ。
狩猟採集民は昨日も述べたように、1日3~4時間の労働時間で十分に生活できたようだ。さらに、現代の先進国並みの栄養状態や平均寿命に恵まれていたともされている。
現代に生きる我々より、よほど幸せだったのではないか?
しかし現実問題として僕らが狩猟採集民になれるわけではない。そのためにはあまりにも人口が多過ぎるし、彼らがもっていた狩る動物や採集する植物についての深い知識を、僕らはとっくの昔に失ってしまった(人々が時間とともに知能を高めたという証拠は、実はまったくない)。
では、僕らが幸せになるにはどうしたらいいのだろうか?
前回も述べたように、狩猟採集民を見習って労働時間を適切にするのが第一歩。そして新しい技術に振り回されないようにする。
僕にはメールアドレスどころか携帯電話ももたない友人がいる。だから彼に連絡を取りたいときは、彼が家族と共有している家の電話にかけるか、直接訪れるしか手段がない。
そして彼は僕、そして僕の他の大半の友人よりも、よほど優雅に日々を過ごしているようにみえる。
なら真似をすればよさそうなものだが、一度一線を越えると引き返すのは難しい。
今僕が行っている精一杯の抵抗は、スマホをもたないこと。ガラケーは所有するがメールはパソコンのみで利用し、ガラケーからは送らないということくらいだ。
これだけで、少なくとも外出中はデジタル空間から離れることができる。
未来への備えももちろん大事だが、それが過ぎたり、あるいは資産形成が目的化するような状況にならないようにするということも重要だ。
いわゆる「未来煩い」を避ける。狩猟採集民は、僕らよりも未来煩いをしなかったはずだ(引用文にもある通り、する意味自体が希薄だった)。
マーク・トウェインは言った。
「私は人生の苦難を味わってきたが、実際に起きたのはほんの少しだった」
本当に、その通りだと思う。
人類の発展と幸福については、下巻での記述がより充実しているので、明日はそのことについて掘り下げてみたい。




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タイ料理。

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内山 直

作家、医師、医学博士。
1968年新潟県新潟市に生まれる。新潟大学医学部卒業、同大学院修了。
2004年に独立し自分のクリニックを立ち上げ、「行列のできる診療所」として評判を呼ぶが、その後アーリーリタイアメントを決意。
2016年2月、クリニックを後輩医師に譲りFIRE生活を開始する。
地方都市でゆるゆると生息中。

「お金、地位、美貌」で得られる幸福はたったの10%で遺伝が50%とされています。
残りの40%に目を向ければ、幸せはすぐにやってくる!をキャッチフレーズに幸福の啓蒙活動を継続中。

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