ジャン=フランソワ・マルミオン編「バカの研究」(亜紀書房)をとても楽しく読んだ。

例えばこんなところ。
“多くの研究によると、バカはかなり高い頻度で自己評価を一定レベルに維持するテクニックを駆使するという。<偽の合意効果>〔他人は自分と同じように考えるとみなす認知バイアス〕に関する研究結果によると、わたしたちは、自分と同じ悪習を持つ人間の数を誇張する傾向があるらしい。だから、バカに一時停止違反を指摘するとこう逆ギレされるのだ。
「こんなところで一時停止する人なんて誰もいないわよ!」
バカはしょっちゅう<後知恵バイアス>〔物事が起きてからそれが予測可能だったと考えること〕を発揮する。友だちに子どもが生まれると、バカはこう言う。
「やっぱりね、男の子だと思ってた」
テレビを見ながら、バカはこう言う。
「ほらね、マクロンが大統領に当選すると思ってたよ」
さらに、バカはあなたに向かって時折こう言う。
「ほら、そう言うだろうと思ってた!」
バカは嘘つきなのか? 預言者なのか? いや、どちらでもない。バカは、本当はそうではないのに情報通であるふりをして、「知っていた」と言うのだ。だが、バカ本人に対してそんなことを言ってはいけない。「そんなことない」と、真っ向から否定されるに決まっている。
(中略)
こうした傾向に、さらに<自己中心性バイアス>〔自分の知識を基準にして他人の心理を判断すること〕がかかると、自分をバカだとわからない大バカ野郎になってしまう。大バカ野郎にとって、三回離婚した原因は三人のバカな元妻(夫)が悪いからで、仕事に失敗したのは同僚がみんな能無しだからなのだ。子供の頃は「くさいのは自分の足じゃない、靴下のせいだ」と文句を言い、大人になってからスピード違反で捕まると、「運が悪かった」と愚痴を言う。当然起こりうる結果に対して、ふつうは「運が悪い」とは言わないことを、大バカ野郎は理解できないのだ。
(中略)
バカはいつも、さもわかったような口をきく。
「弁護士になるのなんて簡単さ。法律を暗記すればいいんだから」
「禁煙? その気になれば誰だってできるよ」
「飛行機のパイロット? まあ、バスの運転手のようなもんだな」
そしてバカは、量子物理学の難解な講義を受けながら、何ひとつ理解できなかったにもかかわらず、講師に対して「まあ、そういう考え方もありますね」と、平然とのたまうのだ。“
いやあ、痛快。世の中ってほんと、バカばっかりだよね。よくぞ言ってくれたと膝を打っていると、こんな文章も。
“最後にこれだけは言わせてほしい。バカに関するこうした考察は、バカだけではなくアホやまぬけにも有効だ。性別、年齢、社会的立場も問わない。あらゆるタイプのバカ、アホ、とんま、まぬけ、うすのろ…(中略)
本書「バカの研究」は、こうしたすべての人たちにスポットライトを当てている。これはあなたたちのための本だ。ただし、あなたたちは自分のことだと気づかないかもしれないが……。“
ここを読んで、「ほんとだよ。俺以外の奴はちゃんと理解したほうがいいいね」ともし思うようなら、あなたは本書でいう「大バ〇〇郎」に該当する可能性が高いのかもしれない。
馬鹿げたことはしたくない人は必読の書。
僕? 僕はどうにもとある国際政治学者の顔がちらついてしまって……
リンク
ランキングに参加してます。ぜひ一票を。
更新の励みになります!
↓
にほんブログ村