昨日予告した通り、今日は死者数について見解を述べたい。
最初に結論を言う。
日本の死者数が少ないのは、昨日書いた理由で感染者数が少ないからにすぎない。致死率は(医療レベルが同等であれば)、欧米と東アジアとではあまり変わらない可能性が高い。
巷でよく聞くのが、日本人は欧米人より重症化しにくいという説。そこで日本と欧米・オセアニア諸国の致死率(死者数/確認された感染者数)を高い順に並べてみる。
(世界平均 6%)
フランス 19%
イタリア 15%
イギリス 14%
アメリカ 5.7%
日本 5.3%
ドイツ 4.7%
ノルウェー 2.8%
ニュージーランド 1.9%
オーストラリア 1.4%
あれ? と首を傾げる人も多いのではなかろうか。日本の致死率は世界平均よりちょっとマシな程度で、そう低くもない。フランスの約3分の1、オーストラリアの約4倍だ。
オーストラリア、ニュージーランドの致死率が低いのはもちろん、ヨーロッパ内でも早期にロックダウンしたノルウェーは2.8%とかなり低い(隣国スウェーデンとは好対照だ)。
この他でもスイスは日本と同程度だし、デンマーク、オーストリア、フィンランド、ポルトガル、ルクセンブルグなどは日本より低い。あたかも日本の致死率が低いかのような報道が盛んにされている理由が僕にはよくわからない。
もちろんこの数字を額面通りに受け取ってはいけない。感染の拡大に比べ早期に検査体制が整った国では、無症状接触者にもPCR検査を行っている(日本は最近の北九州市でこのレベル)。体制の整っていない国では、軽症者は検査をしてもらえない(1カ月前までの日本がこれ)。
PCR検査の充実具合をみる指標が「陽性率」で、これが高いところは感染者数が少なめに、したがって致死率が高く算出されてしまう。
だから上の一覧は、
PCR検査で陽性率の高い国・・・フランス、イギリス、アメリカ
中間の国・・・日本、ドイツ
低い国・・・ノルウェー、ニュージーランド、オーストリア
と分ければわかりやすい。感染者数をまともに把握できていない現状で致死率がわかるわけがないのだ。
無症状感染者が多いこの疫病で正確な致死率を知るには、確度の高い抗体検査を広く行う必要がある。それでようやく分母となる既感染者がわかり、致死率を割り出すことができる。
しかしまだ検査によってばらつきが大きいのに加え、調べられている人数が少ないため、検証に足る指標にはなりえていないのが現状だ。
ちなみに乗船者全員に対して検査が実施されたダイヤモンド・プリンセス号の場合、乗船客が高齢層に偏っているにも関わらず、致死率は2%を下回っていた。となれば実際の致死率が2%よりずっと高いとは、まず考えられない。
(ただしこの時は武漢型(Aタイプ)であったことは意識しておきたい)
話を国際比較に戻す。
ウイルスに対する抵抗力を知る目的で日本人の致死率を他国と比べる場合、最低でも以下の条件を合わせなければならない。
1.その国が医療崩壊を起こしていないこと
2.日本と医療レベルが近いこと
3.高齢者の比率に大きな差がないこと
4.PCR検査の陽性率が近いこと
この条件に合致する国となると、欧米ではドイツだ。そのドイツと日本とでは致死率はほとんど変わらない(細かく言えばドイツが0.6ポイント低い)。
ドイツ人が他の欧米諸国と比べ、重症化しにくい体質や生活様式を有している可能性はどれだけあるだろう?
僕にそう考える理由はない。であれば当然、日本と欧米諸国とで(医療レベルが同じであれば)致死率には大した差がないだろうとの結論に達する。
さらにデータを2つほど。先ほども取り上げたダイアモンド・プリンセス号では、日本人、欧米人との間で重症化率、致死率にほとんど差はなかった。
サンプル数が十分とはいえないが、「異なる人種が似た生活様式を共有し、かつ全数検査が行われた」という貴重な状況から得られた数字だ。
現在のデータ不足を考えれば、重視しておくべきだろう。
もうひとつはアメリカでの人口10万人あたりの死者数。人種別では、黒人54人、アジア系24人、ヒスパニック系24人、白人22人となっている。(こちらのデータは国別の陽性率の差異に振り回されずに済む)。
黒人の死亡率が高いが、これは経済的な格差から生じている可能性がある。しかし少なくとも、アジア系が白人よりずっと致死率が低いことなさそうだ。
日本人の致死率は特に低くもなさそうだとわかってもらえただろうか。であれば日本の「死者数」の少なさは、「感染者数」の少なさによることになり、その理由は、昨日まとめた結論とほぼ同じになる。
ただし今後データの収集が進むにつれ、日本のほうが若干致死率が低くなる可能性があると僕は考えている。
理由は以下の通りだ。
・医療レベルが高く、医療崩壊が起きなかった
・肥満率が低い
・ハグ、キスによる挨拶の習慣がないため、感染時のウイルス暴露が少量で済みやすい
これらの影響はそう大きくはないだろうが、ゼロだとも考えにくい。ただし高齢化によってこれらが打ち消される可能性にも留意したい。
そしてここでも昨日の感染者数同様、HLA説、BCG接種説、交差免疫説といった、検証の難しい仮説を持ち出す必要性は見出せない。
ファクターXの最終結論はこうなる。
・クラスター対策班や保健所職員等による献身的なクラスター対策
・マラソンなど大規模イベント休止、休校要請により国民が早期(2月後半)から危機感を共有
・マスク着用や毎日の入浴などの高い衛生意識
・ハグや握手、大声での会話などが少ない生活文化
・早期から3密を避けたこと
・先に武漢株が入ったことにより、後の欧米株に備えられたこと(ただし欧米株が本当に感染力が強いのかは、まだ実証されていない)。
また、以下によって重症化率・致死率が若干下がった可能性がある。
・医療レベルが高く、医療崩壊が起きなかった
・肥満率が低い
・マスクをする習慣があったため、感染時のウイルス暴露量が少なくすんだ
(高齢化によりこれらが打ち消された可能性にも留意)
一部玉虫色の部分も残したが、現状では如何ともしがたい。数か月後にぜひ検証したいと考えている。
そしてここで僕が強調しておきたいのは、「日本人は欧米人と違ってこのウイルスに強いから、心配する必要はない」などと考えるべきではないということ。
そんな証拠は直接的にはもちろん、間接的にも存在しないのだ。第2波の危機はすぐそこまで迫ってきている。
明日は新型コロナウイルスの今後の展望を考えてみる。

卵かけご飯。
卵白はホイッパーで泡立て。
自家製XO醤と小葱を混ぜて食べる。絶品。