【我慢して、選択肢を減らせば幸せになれる】
(前略)
幸福学の調査によると、欲しいものを好きなように手に入れられる境遇にいるよりも、ある程度の我慢を強いられる立場にいる方が、幸福度が高いことがわかっている。であれば、幸せになるためには、日常の要所要所に我慢を取り入れればいいということになる。
例えば、おやつ。毎日チョコレートを食べる習慣があるなら、量を半分にするか、頻度を1日おきにしてみてはどうだろう?
ダイエットになるわ、幸せになるわで、一石二鳥だ。
買い物でも、お酒でも、外食でもいい。マンネリ気味で幸福を感じにくくなっている行動があれば、すかさずちょっとだけ我慢。
支出が減って幸福度が上がるなんて、なんとも愉快な話だ。
また、心理学者、バリー・シュワルツは、「現代の先進国においては、選択肢の多さが逆に人々の幸福度を下げている」と述べた上で、その理由を次のように説明している。
① あまりにも多くの選択肢を前にすると、間違った選択をしたくないというプレッシャーから、人は、ストレスや無力感を感じる。
② 自分が選んだものに少しでも不満が生じると、選ばなかった他の選択肢への未練により、満足度が低くなってしまう。
③ 選択肢が多いと、商品に対する期待値が上がってしまうので、たとえベストな選択をしたとしても、やはり満足度は低くなってしまう。
④ 自分が取った選択に満足できなかった場合、選択肢が少なければ店や社会のせいにできるが、選択肢が多ければ自分を責めざるをえない。
実際、お店で商品の種類を増やし過ぎると、売れ行きが悪くなってしまうという実験データもある。何を買うのかを決めるために、より多くの労力が必要になるので、そのストレスを避けようと、一部の客は購入自体を見送ってしまうのだそうだ。
シュワルツ氏はこう結論づけている。
「全く選択肢がないよりはあったほうがいいが、多ければ多いほどいいわけではない。どれくらいが適切なのかはわからないが、現代の先進諸国において、選択肢の多さが私たちに快適さをもたらすという段階は、とっくに通り越してしまった」
(中略)
ドイツの哲学者、ショーペンハウアーは、著書「幸福について―人生論(新潮社)」の中でこう語っている。
「すべての物事を限局するのが幸福になるゆえんである。われわれの限界、活動範囲、接触範囲が狭ければ、それだけわれわれは幸福であり、それが広ければ、苦しめられ不安な気持ちにさせられることもそれだけ多い。その範囲の増加拡大とともに、憂慮や願望や恐怖も増加し拡大するからである」
最初この書に触れた時は、あまりに厭世的過ぎると感じたものだが、最近の研究データを見ると、彼が唱えた思想の正当性が立証されつつあると言えそうだ。
というわけで、今日の課題。1日限定で、選択肢を半分くらいに減らしてみてはどうだろう?
それによって惨めな思いをすることになるのか、あるいは逆に気分が晴れ晴れとしてくるのか、ぜひ、自分自身で体感してみてほしい。
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内山 直
作家、医師、医学博士。
1968年新潟県新潟市に生まれる。新潟大学医学部卒業、同大学院修了。
2004年に独立し自分のクリニックを立ち上げ、「行列のできる診療所」として評判を呼ぶが、その後アーリーリタイアメントを決意。
2016年2月、クリニックを後輩医師に譲りFIRE生活を開始する。
地方都市でゆるゆると生息中。
「お金、地位、美貌」で得られる幸福はたったの10%で遺伝が50%とされています。
残りの40%に目を向ければ、幸せはすぐにやってくる!をキャッチフレーズに幸福の啓蒙活動を継続中。