【人に期待をせずに過ごしてみる】
(前略)
ということで今回は、僕らが常日頃から他者に対して抱く、期待や欲望について考えてみたい。
まず大前提となるのは、皆それぞれに固有の人生があり、あなたを満足させるために生きているわけではないということ。そのことさえしっかりと認識すれば、他者に対する願望はある程度コントロールできるはずだ。
テーラワーダ仏教長老、アルボムッレ・スマナサーラは著書、「現代人のための瞑想法―役立つ初期仏教法話〈4〉(サンガ)」の中で、こう喝破している。
「偉そうに、自分のために世界が動いてくれると思っているあなたは、なに様ですか」
周囲に対する期待は、実は自分のエゴに過ぎないのかもしれない、というわけだ。
しかしそうは言っても、相手が親しい間柄だとこれがなかなか難しい。
職場の同僚が生返事をしても、さほど腹は立たないが、配偶者や親しい友人がきちんと話を聞いてくれないと、すぐに怒りの感情がこみ上げてくる。
それは、親身に聞いてもらって当然だという具合に、そもそもの期待値が高いからに他ならない。
相手が自分の子供だと、さらに難しくなる。
自分の分身のようなものだし、成長に責任も感じているから、どうしても過度に要求してしまう。だから、成績が思うように伸びなかったり、態度が悪かったりすると、腹が立ってしかたがない。
しかし、いくら自分の子供とはいえ、異なる人格をもった別の人間であり、親の意に沿うために生まれてきたわけではない。
あなたにできるのは、より長く人生を送ってきた者として、愛情のこもったアドバイスをすることだけだ。
それを聞いて態度を改めるかどうかは、子供の自由意思であるべきで、期待感、場合によっては所有欲につき動かされるようにして干渉を続ければ、あなたの幸せが遠ざかるばかりではなく、親子関係が歪になったり、子供が成長する機会を奪ったりすることになりかねない。
そのように考えれば、人が自分の望むように動くなどと、期待するほうがおかしいとわかる。逆に望むことを減らせば、ストレスが減り、より快適に日々を過ごせるようになるだけでなく、対人関係も改善されていくことだろう。
期待値を下げるのは、少しずつやろうとすると、むしろ難しい。今日1日は一切の期待をせず、
「周りのことまで、自分ひとりで引き受けてやろうじゃないか」
という気持ちで生活してみてほしい。
そのせいで余計な仕事が増えて、大変な1日になるなどということは、普通はない。相手に対する期待によって、今までの自分がどれだけの気苦労を背負い込んできたのかがわかり、いつもよりすっきりとした気分で過ごせるはずだ。
(中略)
周囲の人に対して、一切の期待をせずに過ごしてみよう!
それによって、自分が意外と恵まれていることに気づいたりもするから、気の持ちようというのは本当に大切だ。
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内山 直
作家、医師、医学博士。
1968年新潟県新潟市に生まれる。新潟大学医学部卒業、同大学院修了。
2004年に独立し自分のクリニックを立ち上げ、「行列のできる診療所」として評判を呼ぶが、その後アーリーリタイアメントを決意。
2016年2月、クリニックを後輩医師に譲りFIRE生活を開始する。
地方都市でゆるゆると生息中。
「お金、地位、美貌」で得られる幸福はたったの10%で遺伝が50%とされています。
残りの40%に目を向ければ、幸せはすぐにやってくる!をキャッチフレーズに幸福の啓蒙活動を継続中。