昨日、一昨日のブログでファクターXについて書いた。今日は新型コロナウイルスの今後の展開を予想したい。
感染封じ込めに成功した国や地域、台湾、香港、ベトナム、ニュージーランドなどは今後も安泰だろう。
うまくいったのはたまたまではない。行政の迅速な判断と、綿密な追跡・調査機能があった。今後、国境開放に伴っての再流入に備えて、その優れたノウハウをさらに強化しているはずだ。
日本政府や専門家会議はぜひこれらの成功国に目を向け、参考にしてほしい。
ちなみにニュージーランドは2週間以上新規感染者ゼロが続いているが、少しでも怪しいとPCR検査になるので、いまだに1日平均2000件以上PCRを回しているとのこと。人口は日本の20分の1だから、日本に換算すると1日4万~5万件ということになる。
今週の月曜日にはついにすべての規制を廃止。国境は閉じたままだが、国内旅行、コンサート、スポーツ観戦もコロナ前のように、自由に楽しむことができる。
ただしこれらの国々は、今後世界主要国との国交をどう再開するかで苦慮しそうだ。せっかく封じ込めたのに、新型コロナ流行国との往来を拡大するわけにはいけない。
成功国のジレンマになる可能性がある。
中国も見事に制御した。今でも多少新規感染者がいるとはいえ、人口当たりで考えれば限りなくゼロに近い。
強権国家の実力をまざまざと見せつけられた思いでいる。
同じ強権国家でも、ロシアはどうやら負け組のようだ。新規患者数が増えているのに、死者がさっぱり増えないのは、公表数を操作しているとしか考えられない。
ディスクロージャーのレベルががいまだ中国並み(以下?)であることを国際社会に知らしめることとなった。
ヨーロッパはそろそろ回復するのではないか。主要国の新規感染者数は日本の最悪期をとっくに下回り、さらに減少傾向が続いている。

現場では「こうすればコロナに勝てる」という期待が確信に変わっていることだろう。
首相、大統領といった国のトップたちも、おおむね理性的だ。近いうちにEU内での国境閉鎖が解かれれば、巨大経済圏が復活する。さらに「感染状況が似た国同士」でアメリカとも交流を戻せば、経済的な恩恵は大きい。
先ほど挙げた封じ込め成功国や日本は、逆に取り残されてしまう可能性がある。
ただしそのアメリカは危うい。トランプ大統領と知事との間で連携がとれておらず、一部の州では新規患者数が増加中だ。
例えばカリフォルニア州。早期にはニューヨーク州よりもうまく抑え込んだものの、その後も感染の増多は収まらす、最近の新規感染者数はニューヨーク州の2~3倍で推移している。
(ただしカルフォルニア州知事は民主党であることは明記しておきたい)。

州によってこれだけ対策や感染状況が異なれば、人の往来を活性化させるのは難しいだろう。今後どのようにバランスがとられるのか見当がつかない。
トランプ大統領の興味は国民の生命でなく、自分のメンツと再選にしかないようにみえる。
なぜこういうトップが選ばれるのか、そしていまだにある程度の支持者がいるのか、アメリカは不思議な国だとつくづく思う。
アジアでは一部で封じ込めに成功したものの、ほとんどの国で状況はよくない。南アジア各国、インド、バングラディシュ、パキスタンなどでは患者数の増加傾向が止まらない。西アジアはもっと悪い。
人口当たりでみれば新規・累積とも世界最悪のカタールは、ようやく新規患者数の増加傾向が止まったところ。今後漸減となるのか、それとも横ばいが続くのかを注視している。
世界で最初に集団免疫を得るとしたら、西アジアかもしれない。
アフリカの問題はこれからだ。
感染状況は特に南アフリカ共和国で悪く、人口当たりの新規患者数では(スウェーデン以外の)ヨーロッパ諸国を抜き、しかも増加傾向が止まらない。6月1日にロックダウンが解除されたことにより、患者数がどう推移するのか注目だ。
アフリカの国々は元々の医療体制が脆弱ので、感染が急拡大すればひとたまりもない。国際的な支援が必要とされる局面が、数カ月以内に訪れるのではなかろうか。
南米ではブラジル、チリ、ペルーといった最も状況が悪かった国々でも、新規患者数の増加傾向が止まったようにみえる。人口当たりでみれば、西アジアに次いで新規感染者数が多いのがこれらの国々だ。
現地ではまもなく冬本番を迎えるため、再度患者数が増加することが懸念される。ただし西アジア同様、一時の悪夢の後、世界に先駆けて集団免疫を得る可能性もある。
そして日本はどうなるか?
正直に言って、僕は悲観的だ。以下、欧米と比べて日本が不利と思われる点を並べる。
・高齢化が進んでいる
・屋台・畳文化のせいか、非常に小さな飲食店が多い
歌舞伎町が代表的だが、どの街でも古い繁華街にはこの手の小さな店が多くみられる。
これらではソーシャルディスタンスがとりにくい他、中・大規模店と比べ経営者の意識が低く(言いにくいけど)、スタッフがマスクを着用しないケースが多くみられる。
マスクに対する啓蒙をなんとか深められないものか。
・クラブ・キャバクラが多い
これらは日本独自の文化といっていいだろう。
アジアでは売春とセットになっていて店舗数は少ないし、欧米ではほとんど見られない(女の子と話すだけで大枚をはたくなどありえない。そんなのはパブで話し掛ければいいじゃん、というのが彼らの感覚だ)。
マスク装着、ソーシャルディスタンスの確保がどのくらいできるだろうか?
・ホストクラブが多い
シャンパン・コールも日本独自の文化と言っていいだろう。密閉空間での大声はマスクをしていても危険に思える。
・ライブハウス、(踊る方の)クラブも欧米と比べると小さい店が多い
それに比べると欧米は大きめの箱が多く、規制によってソーシャル・ディスタンスを確保するのが容易だ。
・プライバシーへの意識が高く、公に個人情報を渡すことを極端に嫌う
グーグル様に情報を渡すのは平気なのにね。
行政が接触者を追跡したり、迅速に補償を行うことを困難にしている。
・行政の権力が弱く、休業などに際する強制力がない
民度が高いとはいえ、(当たり前だが)いろいろな人がいる。自主性や同調圧力、善意だけで長期戦は戦えない。
・行政が硬直しており、柔軟性では世界最悪レベルといえる
PCR検査を増やせなかったことでいかにお粗末かが露呈した。OECD加盟国ではメキシコについでワースト2位。
・財政不安
日本の政府総債務残高(対GDP比)は237%(2018年)と世界最悪だ。
EUの優等生であるドイツは62%だし、赤字国債発行額の増多が問題視されているアメリカだって104%に過ぎない。
身の丈以上の財政支出を続ければ、財政破綻やハイパーインフレといった破滅的状況を来す可能性もある。
と日本には数々の財政的・法的・歴史的・文化的弱点がある。読み進むにつれ気分が悪くなった人も多いのではなかろうか?
僕も書いていて辛い。
日本が第1波にうまく対応できたのは、元々もっていた生活習慣、クラスター班の活躍、民間に早く広まった危機感、そして同調圧力だ。
それでも実効再生産数がはっきりと1を下回ったのは、4月の最初から緊急事態宣言が一部地域で解除された5月15日頃まで。わかりやすくいえば、緊急事態宣言発出の少し前から一部地域で解除されるまでの1カ月半しかなかったことになる。
3月下旬や、5月中旬から現在までの自粛レベルでは、感染収束には至らない。
あの緊急事態下での自粛(それなりに厳しいものだった)を続けたり、繰り返したりすることに、日本国民は「自主的に」対応できるだろうか?
きわめて困難だと言わざるをえない。
僕は最近の感染者数を「微増」ではなく、PCR検査体制の拡大に伴う「誤差範囲」だと考えている。
しかし東京ではいまだカラオケボックス・ライブハウス・飲食を伴う接客業に休業要請がなされたままだ。これが解除され、さらに自粛ムードが弱まれば、実効再生産数は再び1を上回るだろう。
今月中旬以降は首都圏から地方への移動制限も弱まる。
東京でいつまでも感染がくすぶり、時折それが地方に飛び火するという展開を個人的には危惧している。

おやつ。