新型コロナウイルス関連で2点ほど。
厚生労働省は16日、東京都の約2千人の抗体保有率を調査した結果、0.1%に陽性反応があったと発表した。
これに関して色々なコメントがなされているが、僕に言わせれば、
「サンプル数が少なくてお話にならない」
に尽きる。
抗体保有率に東京の人口を乗じると、抗体保有者は1.4万人。
東京で確認されているPCR陽性者が5600人だから、この結果が正しいとすると、既感染者のうち40%がすでに補足されていることになる。
これはまずありえない。実際の感染者はPCR陽性者の数倍いると考えて間違いない。
さらに、都内の死者数をこの数字で割ると致死率は2.2%。
これもまた、ありえない。高齢者が多かったダイヤモンドプリンセス号より、東京都全体の致死率が高いはずがない。
一部報道によると、使用されたキットは信頼できるとされているアメリカの会社2社のもので、両社のもので陽性だったものだけが陽性と判定されているとのこと。
であれば陽性の判定基準が厳しすぎたのだろうか。
しかし同じ検査で、大阪では0.17%陽性で、同様の計算だと致死率0.56%だった。
こちらはそれらしい数字が出ている。
一部死因が新型コロナと気づかれなかった死亡者がカウントされていないと考えれば、僕が推定した日本での致死率0.8%にかなり近い。
なぜ同じ検査でここまで差が開いたのだろうか?
致死率が東京都で実際に大阪府の4倍近かったとは考えにくい。
キットがいい加減なものだったとも考えにくい。
大阪では死亡者数が適正にカウントされていない、というのも考えにくい(だとすると東京の致死率が事実に近いことになってしまう)。
となると考える理由はひとつ。
冒頭に書いた通り、ゼロコンマ数パーセントの事象を明らかにするのに、サンプルが数千では足りないということに尽きる。
今回わかった唯一のことは、この感染症の抗体保有率を知るにはもう一桁多いサンプルが必要だということ。
どう考えても整合性のとれないこのデータを、マスコミが「実際には多くの感染者がいることがわかりました」、または「意外と広まっていないことがわかりました」と番組によって正反対の報道しているのには笑ってしまった。
ふたつめ。
新型コロナウイルスは発症前後で感染力が最大になり、発症後10日には感染力がほぼなくなるということがはっきりしてきた。
この知見にはいい面と悪い面とがありそうだ。
いい面は、「意外と移りにくそう」ということ。
発症後10日でウイルスが体内からいなくなるわけがないから、少量のウイルスでは感染が起こりにくいことを意味する。
となればこの伝染病に打ち勝つにはマスクとソーシャル・ディスタンスが最重要で、それによってウイルスの暴露量が減れば感染リスクがぐっと低くなるはずだ。
悪い面は、発症前後で感染力が最大なら、接する相手が無症状者でもまったく気を抜けないということ。
症状がない場合でもマスクをする「ユニバーサル・マスキング」を国民ひとりひとりが心掛ける必要がある。
勘違いしている人も多いが、医療従事者がつける高性能のマスクとは異なり、市販のマスクに予防効果はほとんどない。
基本的には、感染者が人に移さないためのものなのだ。
この前テレビを見ていてたまげたのだが、とあるカラオケ喫茶では新型コロナウイルス対策として、「歌う人以外」にマスク着用を義務付けていた。

歌う人がマスクをするのが大切で、待っている人がマスクをするかどうかはあまり問題ではないというのに。
映像だと歌う人の前にビニールシートらしきものがあるが、ここにウイルスが付着したら、次の歌唱者はエアロゾル化したものを吸い込むリスクもある。
番組中で、この対策が間違っていることを指摘する声はなし。
せっかく「見落としがちな感染リスク」ってタイトルなんだから、そこを突っ込んでほしかった(笑)。
症状の有無にかかわらず、ソーシャルディスタンスがとれない場合はマスクをする。
大声を出さざるをえない人は、特にしっかりと装着する。
これだけの注意で、新型コロナウイルスは意外と簡単に抑え込めるはずなのだが、国の指針がその方向に定まらないことを非常に歯がゆく感じている。

ロコモコ。