あえて苦言を呈するとこれはちょっと発想が古い。今の時代、結婚しない、あるは結婚はしても子供はもたない人も多いのは指摘するまでもないだろう。中年期には、後悔しない生き方が鍵となります。人生を折り返すにあたり、自分にとって一番大切なことを、改めて考えてみましょう。日々の生活に忙殺されていると、忘れてしまいがちなことです。ただ、今しっかりと考えて、どのように生きていくかを決めておくことは、残りの人生を悔いなく過ごすために必要な準備です。特に、中年期は、目まぐるしく変わってきた人とのつながり方の最終的な節目だと言えます。とにかく無我夢中だった青年期は、自分が主役でした。自己実現や成長だけに集中できました。やがて、家族を持つと、生活の中心が子供になり、自分は後方支援にまわるようになります。そして、子供の巣立ちと入れ替わりに、定年退職や親の心配も出てきます。若い頃とは、人生の価値観も大きく変わっているはずです。
僕はリタイア以来、あまり「社会参加」をしていない。社会とのつながり方も、リラックスしたものに変えていくとよいでしょう。エラスムス医療センターの公衆衛生学者のクロエツェンが、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの学者とともに行った、10か国に住む50歳以上の人(平均年齢63歳)を対象にした研究によると、社会参加の種類が、精神衛生と関係あることが分かっています。
というわけで、なあんだ、やっぱり無理に社会参画なんかしなくていいわけね、という結論になる。宗教組織への参加で、4年後のうつ状態が改善しますが、政治組織や地域組織への参加は、逆に、うつ状態が悪化していました。気が張るような集会は、精神衛生上よくない結果となっています。それ以外の活動(ボランティア活動、生涯学習コースやスポーツクラブへの参加)では、4年後のうつ状態は改善しませんでした。ただし、活動の直後ではうつ状態に変化が認められており、こうした活動によるうつ状態の抑制効果は、短期間でなくなると考えられます。一方、宗教組織や政治組織への参加は、うつ状態に長期的な影響を与えることになります。
宗教組織のように、心に寄り添う効果がある場合には、精神衛生上、長期的な効能が期待できます。政治組織への参加にはない効果です。また、幸福の伝播が、職場では見られないことを思い出してください。こうして見ると、心のよりどころを、家族や友人といった身近なコミュニティーに持つことは、私たちを幸せへ誘う近道だと考えられます。
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内山 直
作家、医師、医学博士。
1968年新潟県新潟市に生まれる。新潟大学医学部卒業、同大学院修了。
2004年に独立し自分のクリニックを立ち上げ、「行列のできる診療所」として評判を呼ぶが、その後アーリーリタイアメントを決意。
2016年2月、クリニックを後輩医師に譲りFIRE生活を開始する。
地方都市でゆるゆると生息中。
「お金、地位、美貌」で得られる幸福はたったの10%で遺伝が50%とされています。
残りの40%に目を向ければ、幸せはすぐにやってくる!をキャッチフレーズに幸福の啓蒙活動を継続中。