子供にはお金よりも「心のエネルギー」を使おう!


引き続き、自著「幸せの確率―あなたにもできる! アーリーリタイアのすすめ(セルバ出版)」から。
今日紹介するのは子育てとお金、そして幸せに関する2つの文章。
「子供にお金がかかって大変!」と嘆いている人には、ぜひ一読してもらいたい内容だ。

“「子供にはお金よりも「心のエネルギー」を使おう」

ここでは幸福の観点から、子供へのお金の使い方について考えます。
世間を見渡してみると、私には多くの親が子供にお金をかけ過ぎているように思えてなりません。将来のために十分な教育をうけさせてあげることは、もちろん重要です。しかし相当数の親が、親としての十分な責任を果たさないまま、お金を使うことによって、いい親のふりをしている、厳しく言うなら、お金に逃げているというようなことはないでしょうか?
心理学者の故・河合隼雄は著書「こころの処方箋」(新潮文庫)の中で、以下のように述べています。

それでも親たちは昔のことに縛られていて、子どもには物を豊かにやれば幸福だと安易に考え、「心を使う代わりにお金を使って」子育てをしようとしていないだろうか。(中略) 子どもの欲しがる気持がわかり、それを買うお金を十分に持っていながら、それを買わないためには、相当な心のエネルギーを使わねばならない。このとき、親が子どもに対して接する姿勢にこそ、その親の個性が出てくる。叱るか、どなりとばすか、説得するか、上手にごまかすか、方法はどれでもいい。親の個性にふさわしい心のエネルギーの消費によって、子どもは親の愛を感じるのである。こんなとき、ハウ・ツー式にやろうとしたり、人真似をしようとする人は、エネルギーの節約、つまり愛の出し惜しみをしているので、子どもに見破られてしまうのである。
 現代の親は、ものが豊かなときの子育てについて、あまり知らない。こんなことはかつてなかったことなのだ。
(中略)
物を買い与える頻度を減らし、そのたびに「心のエネルギー」を使うということは、決して簡単なことではなりません。日々、時間に追われる現代の親にとっては、お金を出して解決するほうが楽なことも多いでしょう。
しかし親たちは、欲しがる物をすぐに買い与えることによって、子供たちが成長する機会をみすみす逃しているだけでなく、幸せさえも奪ってしまっている可能性があることを、しっかりと認識しておく必要があります。“


もう一か所、抜粋。

“「単調さを楽しむ能力」

子供に贅沢な娯楽を与えすぎると、どのような弊害が起こりうるかについて述べておきます。
私たち人間は、退屈よりも刺激や興奮を好みますが、常に興奮の中で生きていくことはできません。興奮に対する欲望も、物質に対する欲望と同様に根深く、そして、理性をもって制御しない限り、際限なく広がっていく特性があります。もちろん、退屈な生活よりも刺激的な日々の方が、魅力的に聞こえるのは確かです。しかし、例えば楽しいパーティーで夜通し騒いだ次の日は、どうしても退屈なものになってしまいますし、ギャンブルで大勝した興奮を、すぐにまた繰り返すことは困難でしょう。もし、さらなる刺激を連日連夜追い求めれば、金銭的に困窮するばかりでなく、いずれ健康を損ねることは必至です。
刺激的な経験自体は、決して悪いものではありませんが、適度な範囲内に抑えるべきですし、現実的に、そうせざるをえません。ということは、私たちは興奮に身を置くひと時以外の、人生の大半の時間を、単調に、時には退屈に感じながら過ごさざるをえないということになります。
その点に気づきさえすれば、私たちが幸福な人生を送るためには、いかに退屈に耐えることができるか、ポジティブに言い直せば、単調な日々の中から、どのように喜びを見出すことができるかということが、とても重要な意味をもつことがわかります。では、そのような能力は、いつ身につけることができるのでしょうか。哲学者・ラッセルは、三大幸福論の中のひとつに数えられる著書、「幸福論」(岩波文庫)の中で、それは幼年時代に獲得されるべきだと指摘した上で、次のように述べています。

現代の親たちは大いに責任がある。彼らは子供たちに、ショーだの、おいしい食物だのといった消極的な娯楽をたくさん与え過ぎている。そして、毎日毎日同じような日を持つことが子供にとってどんなに大切であるかを、真に理解していない。もちろん、やや特別の機会はこの限りではない。幼年時代の喜びは、主として、子供が多少の努力と創意工夫によって、自分の環境から引き出すようなものでなければならない。(中略)子供が最もよく育つのは、若木の場合と同様に、いじりまわされないで同じ土壌の中に置かれているときである。多すぎる旅行やあまりにも多彩な印象は、幼い者たちにとってよくないし、大きくなるにつれて、実りある単調さに耐えることができなくしてしまう。

子供に十分な食事や教育、そして愛情を与えることは、もちろん重要です。しかし、子供に過度の娯楽を経験させることは、物を買い与え過ぎるのと同様、家計に悪影響を与えるだけではなく、子供の人生を幸福から遠ざけているのかもしれないということを、親はしっかりと理解しておく必要があります。
ここで得られる結論も、先ほどと一緒。そう、子供にはお金よりも、心を使うことが大切なのです。“ 



はっきり言おう。お金で子供を育てるのは楽なのだ。一方で子供にある程度の我慢を強いながら、かついい関係を続けるには根気や工夫が必要になってくる。
倹約の意義は子供のうちにそれを「実感」させないことには根づかない。僕には多くの子供たちがあまりにも物質的に恵まれていることに大きな違和感を覚えている。
貧乏くさい生活をさせたほうがいい。それではじめて自発的な工夫が生まれる。豊かさを実感できるのは、自分が額に汗して働くようになってからがいい。そうすればその価値を真に実感できる。
今どき流行らない教育論であるのは重々承知しているが、僕自身はそうやって育ってきたし(本当に貧乏だったので他に選択肢はなかった)、今はあえてそうやって子供たちを育てている。
3人の息子はそれぞれまったく個性は違うが、それなりに頼もしく育ってくれているようだ。
明日も自著からの引用を続ける。もう少しお付き合いいただきたい。




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自家製キムチ。

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内山 直

作家、医師、医学博士。
1968年新潟県新潟市に生まれる。新潟大学医学部卒業、同大学院修了。
2004年に独立し自分のクリニックを立ち上げ、「行列のできる診療所」として評判を呼ぶが、その後アーリーリタイアメントを決意。
2016年2月、クリニックを後輩医師に譲りFIRE生活を開始する。
地方都市でゆるゆると生息中。

「お金、地位、美貌」で得られる幸福はたったの10%で遺伝が50%とされています。
残りの40%に目を向ければ、幸せはすぐにやってくる!をキャッチフレーズに幸福の啓蒙活動を継続中。

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