高いものに慣れてはいけない ~グルメ達の気の毒な日常


自著「幸せの確率―あなたにもできる! アーリーリタイアのすすめ(セルバ出版)」から、「高いものに慣れてはいけない ~グルメ達の気の毒な日常」という部分を紹介する。
グルメほど馬鹿馬鹿しいものも少ないように僕には思える。
うまいものになれてしまえば、「快楽順応」により、幸せを得にくくなってしまう。かといって、そんじょそこらのものではもはや満足できない。体にも懐にもきつい、悪循環が続くだけだ。
食事は健康的なものを適量いただくのが一番!
どんな珍味だって空腹という調味料には太刀打ちできない。その程度のものだと僕は考えている。
以下引用。

“開業医として成功し、収入が増えたのにもかかわらず、地味な生活態度を変えようとしない私を見兼ねたのか、裕福な友人が高級寿司店に連れて行ってくれたことがあります。友人にしてみれば、「おいしいものの味を教えてあげたい」という好意からの行動だったのでしょうし、私自身も、いくぶん緊張はしたものの、町で一番といわれる味を存分に堪能することができました。
その後、二次会に移動するためのタクシーの中で、友人は私にからかうような口調で言いました。
「こういう味を覚えたら、もう回る寿司屋なんて行けないだろう?」
しかし私はその後も、寿司といえば家族で行く回る寿司屋か、近所にある、あまり高くないお店の出前で満足しています。高級なお寿司屋さんはもちろん素敵でしたが、「一生に一度で十分かな」というのが正直な感想でした。逆に、もし私が本当に、「もう回るお寿司になんて行けない」なんて感じていたら、その後の人生は大変だっただろうと思います。
以前、テレビを見ていたら、あるタレントが、いわゆる風俗店での遊びについて、自分は行ったことがないとことわった上で、こう言っていました。
「酔った友達から、これから一緒に行こうって、しつこく誘われたことはあるけどね。風俗はすごいぞ! これを経験したら、もう普通のセックスじゃ満足できなくなるぞ、って。でも、それを聞いて思ったんだ。僕はまだまだ普通のセックスを楽しみたいから、もしそれが本当なら、なおのことそういう店には行っちゃいけないな、って」
例え話として適切かどうかはわかりませんが、このタレントさんの発言には、我が意を得る思いがしました。貪欲に刺激を追い求めるのではなく、逆に、元の生活に戻れなくなるかもしれないような快楽は、あえて避けて通るという考え方は、長い人生を通じて質の高い豊かさを享受し続けたいのであれば、とても賢明なことのように思われます(でも風俗って、そんなにすごいんですかね?)。
作家の内田百閒は、いいお酒を土産でもらった際、それがいつも自分が飲むものより「はるかに香りが高くてうまかった」と認めた上で、「常用の味と違う!」と言って、料理用に回してしまったそうです。この話は、内田百閒の偏屈さを表すエピソードとしてよく引用されますが、私はむしろ、彼の幸福に対する揺るぎない信念を感じます。おいしいものや高級品が、必ずしも幸せをもたらすわけではないと確信していなければ、さすがにここまではできないでしょう。これもまた、我が意を得たり! とここまで言っておいてなんですが、私ならもちろん、料理用にしたりはせず、冷やでありがたく頂きます。だって、もったいないもの!
高いものに馴れれば、安いものは以前よりもおいしく感じなくなってしまいます。私自身もこのところ、それなりにいいワインをたしなむようになったため、数百円で売っているワインには、あまり食指が動かないようになってしまいました。舌が肥えるということは(と偉そうに言うほどのレベルではありませんが)、何かと不自由なものなのです。
食事だって、地の旬のものなら、たいていはおいしいですよ! 私の町なら、春はウマヅラハギ。刺身に蒸した肝を和えると絶品です。また、妻の実家が山間部にあるので、山菜をたくさん送ってきてくれます。夏はあわび。近くの海岸での漁が解禁になる一~二か月の間だけ、びっくりするぐらい安く、新鮮なアワビが手に入るのです。刺身を醤油につけるのではなく、塩とレモンを少しだけかけてスパークリング・ワインと合わせるのが、私と妻とのお気に入り。枝豆、ゴーヤといった野菜も、この季節の楽しみです。秋、冬は、挙げていたらきりがありませんが、例えば刺身ならサバや寒ぶり、焼き物ならハタハタ。真だらの白子、あん肝もうまいし、加えて、おでんに鍋料理。ああ、だめだ、書いているだけで一杯飲みたくなってきちゃった!
希少価値であるために高額になってしまう珍味の類や、選りすぐりの高級食材なんて、別に食べなくてもいいじゃないですか。キャビアだってフカヒレだって、冷静に考えれば、値段に見合うほどのおいしさはないと思いませんか? 高価なモノや刺激的な環境に馴れ、それなしでは幸福感が感じられなくなるような生き方は、どうしてもというこだわりがあるのでない限り、避けて通るのが無難なように私には思われます。
「美味しんぼ」の海原雄山なんて、日々を苦痛なく過ごすためにどれだけ苦労しているんだろうって、つくづく同情しますもの。まあ、余計なお世話でしょうけど。“


僕が妻の料理にケチをつけることはまずない。聞かれない限りリクエストもしない。出されたものをおいしく頂くだけ。
当たり前だと思うかもしれないが、これにだってある程度の心構えや準備が必要だ。
間食をせず、きちんと空腹にしておく。もちろん健康状態にも常に留意。
食事直前まで調べ物をしない(食事に集中しにくくなる)。
そして料理に合いそうな酒を妻の分もセッティング。
そのくらい、やはり当たり前だって?

そう言われても、そのくらいしかできないからなあ……



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白ワインで。

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内山 直

作家、医師、医学博士。
1968年新潟県新潟市に生まれる。新潟大学医学部卒業、同大学院修了。
2004年に独立し自分のクリニックを立ち上げ、「行列のできる診療所」として評判を呼ぶが、その後アーリーリタイアメントを決意。
2016年2月、クリニックを後輩医師に譲りFIRE生活を開始する。
地方都市でゆるゆると生息中。

「お金、地位、美貌」で得られる幸福はたったの10%で遺伝が50%とされています。
残りの40%に目を向ければ、幸せはすぐにやってくる!をキャッチフレーズに幸福の啓蒙活動を継続中。

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