空腹が最高の調味料なら、快適なリタイア生活を送っていると娯楽から得られる悦びが減るのではないか?


「空腹は最高の調味料」とよく言う。僕はこれに完全に同意する。
腹が減っていないときに食べる料亭の料理より、腹ペコのときにかきこむ牛丼のほうがうまいに決まっている。
同様に、部屋の整理をしているとき、出てきた本を読み返したり、アルバムのページをめくったりするのには麻薬のような楽しさがある。
「こんなことをしている場合じゃないんだけどな」
という気持ちがスパイスになり、その時をよりかけがえのないものにするのだろう。

となると、アーリーリタイア後は遊びがつまらなくなるということにならないだろうか?
忙しい仕事の合間につくった時間や、たまの休日には大いなる解放感がある。
普段から自由に生活していて余暇が日常になれば、それらのことを以前より楽しめなくなるのではないだろうか?
これについても、実はその通りだと思っている。
僕の場合、たとえば飲みにでるのが以前ほど楽しくはなくなった。だからふらりとバーを覗く頻度もずいぶん減った。
読書も以前よりは興味が湧かない。

これはあながち、悪い面ばかりとは言えない。
まずは酒。
以前より外で飲むのが楽しくないのは、そもそもそれが僕にとって大切なことではなかったからだと思う。日常のストレスを発散させるのが主目的で、生産性には乏しい。
「ストレスが減ったから、あまり飲みに出なくなった」と考えれば、むしろいいことのように思える。
読書も、確かに現役時代、隙間時間にページをめくるのは心躍った。
ただしまとまった量を読む時間はとれなかったから、手にするのは以前も読んだことがある、そして短時間で読めるエッセイの類が多かったように思う。
今は分量の大きい本に、正面から向き合うことができる。
「興味」「楽しさ」が単純に減ったのではなく、その「質」が変わってきたと言えそうだ。

と、理屈ではそう納得はしているのだが……。それでも現役時代と比べ娯楽から得る喜びが減っているのは事実で、一抹のさみしさもある。
そういう時は、自分に意図的に負荷をかけるしかない。
しなければいけないこと、面倒な雑用を一気に片付け、なんならその後、いつもよりもハードに体を動かしてもいい。
そうすれば、夕食での酒がよりうまいのは確かだ。
でも、そういうふうに考えると、それだけのために一日自分を追い込むなんて、バカバカしいという気もしなくはない。
うむむむ。

なんにせよ、
アーリーリタイア→ストレスの低下→ある種の喜びの減少
という側面は確かにあるから、アーリー/セミリタイア希望者は、頭の片隅には入れておいたほうがいいように思う。
ある程度自分を律することができないと、楽しみもないままどんどん堕ちていくことになりかねないからね。



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フルーツたっぷりの牛乳寒天。

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内山 直

作家、医師、医学博士。
1968年新潟県新潟市に生まれる。新潟大学医学部卒業、同大学院修了。
2004年に独立し自分のクリニックを立ち上げ、「行列のできる診療所」として評判を呼ぶが、その後アーリーリタイアメントを決意。
2016年2月、クリニックを後輩医師に譲りFIRE生活を開始する。
地方都市でゆるゆると生息中。

「お金、地位、美貌」で得られる幸福はたったの10%で遺伝が50%とされています。
残りの40%に目を向ければ、幸せはすぐにやってくる!をキャッチフレーズに幸福の啓蒙活動を継続中。

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