p53~
皆さんは、自分の体は個体だと思っているでしょう。でも、少し長い時間軸で見てみると、絶え間なく流れている流体だということがわかります。流れ去るとともに、作り替えている。シェーンハイマーはアメリカに渡った研究者なので、これを英語で「ダイナミックステイトに私たちの体はある。動的な状態にある」と論文に書いています。このコンセプトこそが、ミクロなプラモデルみたいな部品で私たちができているという機械論的な生命観ではなく、私たちの体はもっと流動的に、絶えず動いているという生命観を教えてくれたのです。
それに気づいた私は、シェーンハイマーのコンセプトを日本語では「動的平衡」と呼べばいいのではないかと考え、提唱することにしました。
「動的」とは、常に動いているということです。「平衡」はバランスを意味し、絶え間のない流れの中で、常に合成と分解がバランスをとっていることが私たちの体のいちばん大事な特性で、「動的平衡があるから、生命が生命たらしめられている」ということができるのです。
p168~
「生命とは何か?」という問いの答えは、「生命をどう定義するか」によって見方が変わってきます。だから、「生命は動的平衡である」という私の定義から見たら、細胞も生命だし、細胞と細胞の集合体である私たちも生命だし、個人が集まっている人間社会も生命体だし、人間と他の生物との相互作用で成り立っている地球全体も一つの生命体だということができます。生命の定義によって、何を生命を見なすかという境界線は膨らんだり縮んだりします。動的平衡の観点から見ると、地球全体も一個の生命体だというふうに考えて差し支えないと私は思います。
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内山 直
作家、医師、医学博士。
1968年新潟県新潟市に生まれる。新潟大学医学部卒業、同大学院修了。
2004年に独立し自分のクリニックを立ち上げ、「行列のできる診療所」として評判を呼ぶが、その後アーリーリタイアメントを決意。
2016年2月、クリニックを後輩医師に譲りFIRE生活を開始する。
地方都市でゆるゆると生息中。
「お金、地位、美貌」で得られる幸福はたったの10%で遺伝が50%とされています。
残りの40%に目を向ければ、幸せはすぐにやってくる!をキャッチフレーズに幸福の啓蒙活動を継続中。