幸せになりたいなんて、いい加減にしてください!


前野隆司氏で最後にもうひと記事。今日は前野氏とアルボムッレ・スマナサーラ氏との共著「幸せの法則(サンガ)」を紹介する。
スマナサーラ氏はスリランカ上座仏教長老。1980年に国費留学生として来日したのが縁となり、現在は日本テーラワーダ仏教協会で初期仏教の伝達と瞑想指導に従事されている。
一方の前野氏は、前回紹介した「幸せのメカニズム」の著者で、肩書は慶應技術大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授となる。
このふたりの対談は、なかなか噛み合わない。
というか、スマナサーラ氏の対談は何冊か出版されているが、どれもあまり噛み合っていないようにみえる。
スマナサーラ氏は修行の末、おそらく仏教的世界観を習得しており、市井のものとは大きく異なる視点から言葉を繰り出すので、一般人にとっての「常識」をベースとした議論にならない。
逆にそこがおもしろいと言えば、おもしろい。
たとえば、「楽観」について、スマナサーラ氏の弁。

p129~
“人生に起こるすべての不幸な出来事は、自分自身を成長させるための宿題にすぎないと思う人には、楽観主義・悲観主義という極端から抜けます。その人は人生がよい方向に流れると楽しいし、悪いことが起きたら「挑戦するべき宿題が現れた」と楽しくなるのです。”

p130
“一般人の世界では、楽観主義、悲観主義と言いますが、本当は、そのようなラベルは貼れません。仏教の世界ではそのような価値判断はしないのです。”

こんな具合で、ある程度仏教的価値観を知っていないと、理解しにくい。
時にはこんな、ドキッとするような発言も。

p164
“前野先生は幸せの研究をしていらっしゃいますが、私はあえて一つ、言いたいことがあります。なぜ人間は幸せを探してしまうのでしょうか? みんな、「幸せになりたい、幸せになりたい」と言いますが、私はそれに対して、「いい加減にしてください」と言いたいのです。”

いきなり幸福学の全否定?(笑)
これは後にこのようにつながる。

p165
“我々はずっと幸せを探し求めています。
仏教的にいえば、探し続けているのは「幸せがないから」です。もし幸せがあるのだったら、誰も探す必要はありません。つまり、「生きる」というシステムの中に幸せはないのです。それなのに、人間は幸せを探しています。探すことを生きると言うのです。(中略)
仏教は「生きることは苦である」と説きます。それを発見したのがお釈迦様です。幸せを探すのではなく、我々は苦をなくすようがんばろうじゃないかと。“

幸せを探すのではなく、「苦」をなくすべき。この本で話されているのはここまでだが、これは、「だから欲をなくすべき」という仏教観につながっている(はずだ)。
よく仏教を「幸福の宗教」と呼ぶ人がいるが、僕は仏教の求める世界は「平穏」であり、一般的な意味での「幸福」とはニュアンスが違うと感じている。
もちろん平穏は幸福につながるのだけれど。





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カオマンガイ(タイ料理)

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内山 直

作家、医師、医学博士。
1968年新潟県新潟市に生まれる。新潟大学医学部卒業、同大学院修了。
2004年に独立し自分のクリニックを立ち上げ、「行列のできる診療所」として評判を呼ぶが、その後アーリーリタイアメントを決意。
2016年2月、クリニックを後輩医師に譲りFIRE生活を開始する。
地方都市でゆるゆると生息中。

「お金、地位、美貌」で得られる幸福はたったの10%で遺伝が50%とされています。
残りの40%に目を向ければ、幸せはすぐにやってくる!をキャッチフレーズに幸福の啓蒙活動を継続中。

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