昨日のブログの続き。
神戸大学の岩田健太郎氏は
自身のブログで、新型コロナウイルスのファクターXについて、
“状況証拠から一番プラウジブルな理由は、「スタート地点が違っていたから」というものです。”
と述べている。
より詳しく述べている個所を引用しよう。
“欧米でも徹底的なロックダウンによってCOVID-19を激減させることに成功しています。しかし、それでも感染者、死者が非常に多かったのは、初動の段階ですでに感染者がたくさんでていたので、対策を始めたときはすでに手遅れだったのです。
一方、日本、韓国、タイ、ベトナム、シンガポール、香港、台湾、オーストラリア、ニュージーランドなどでは問題が顕在化したときには感染者数はでていなかったか、ほとんどいませんでした。韓国のように大量の患者が発生した国ですら、いそいでクラスター追跡をしたのでなんとか間に合ったのです。日本は3月下旬からクラスター追跡だけでは足りなくなりましたが、それでも手遅れなほどではなかった。
欧米と、アジア・オセアニアの違いを決めたのはこの「気づくタイミング」の違い。ここが決定的だったとぼくは考えています。“
僕はそれは考えにくいと思う。
国別感染者数グラフで反証できる気がする。

出所
https://www.covid19-yamanaka.com/cont3/17.htmlヨーロッパでは確かに感染の立ち上がりは早かった。
しかしアメリカ、カナダ、ブラジル、インドでの流行はずっと遅く始まった。
「スタート地点」では日本よりもはるかに有利だったこれらの国で、現に感染爆発が起きているではないか。
ヨーロッパの震源地となったイタリアでは、1月の時点で中国との航空便の運航中止を決定している。
アメリカも1月31日に中国本土からの入国を禁止。
かたや日本は、1月31日に中国全土ではなく、「湖北省」からの入国のみを禁止している。
封じ込め成功国の香港、韓国もこの時点での入国制限は湖北省に限定している。
対策はむしろ、欧米のほうが早かったのだ。
結局、各国共に水際での流入阻止には成功していない。
しかしその後、感染者数グラフでみる「立ち上がりの角度」が欧米とアジアでは雲泥の差なのだ。
それにそもそも、なぜヨーロッパで先に流行が起きたのだろうか?
武漢からの人の流入で考えれば、1番多いのは中国のその他の地域、次が中国からの観光客が多い日本、タイ、シンガポール、マレーシアだ。
中国はすっかり豊かになったから、欧米への旅行者も増えてはいるが、それでも近隣諸国への旅行者とは桁が違う。
なのになぜかアジアではなく、欧米で感染爆発が起きた。
そこで、「ファクターX」があるはず、との議論が生まれたわけだ。
僕の「マスク説」では、こう説明できる。
冬場にマスク装着が一般的だった国や地域では、無症状感染者が周囲にうつしにくかった。
よって実効再生産数が上がらず、流行のスピードが遅かったため、クラスター対策や濃厚接触者の追跡ができた。
一方で欧米ではマスクをする人がほとんどいず、ハグやキスの文化もあって、感染が瞬く間に広がった。
このほうがよほどすっきりと筋が通るではないか。
(ただし繰り返し書いているとおり、マスクだけではオセアニアの成功が説明できない。
オセアニアでの感染の立ち上がりは日本よりは急だが、ヨーロッパ諸国よりはなだらかだ。
これに関しては、中国人観光客の数(ヨーロッパ>オセアニア>アメリカ)で説明ができなくもないが、自分でも完全に腑に落ちているわけではない。)
岩田氏は消去法によって、それらしきファクターXが見当たらないことより、「スタート地点が違っていた」という結論に達しているが、昨日のブログで書いたとおり、肝心なマスク説を怪しげな論理で消去してしまった点が間違いなのだと思う。
それに岩田説こそ簡単に消去できるのは、上のグラフで示した通りだ。
ちなみに各国のロックダウン開始日と、その日の新規感染者数は以下のとおり。
成功国
日本での緊急事態宣言発出 4月8日 新規感染者数351人
オーストラリアでのロックダウン 3月23日 364人
失敗国
イタリアでのロックダウン 3月9日 1797人
アメリカ(ニューヨーク)でのロックダウン 3月22日 8631人
ロックダウンのタイミングが早かった国がうまくいっているのは、岩田氏も述べている通り。
問題はなぜこれだけ感染増多ペースが違ったかで、「たまたまそうだった」が岩田説、「マスクや旅行客数で説明できる」が内山説。
皆さんの評価はいかがだろうか。
相手は高名な教授だから、普通に考えたら僕が間違っているんだけど、どうしてもそうは思えないんだよなあ。


マンゴーシロップのかき氷。
美味くないはずがないよね。