新型コロナウイルス(covid-19)においてユニバーサルマスキングが大きな拡散防止効果をもつはずだと、僕はこのブログで繰り返し書いてきた。
しかし考えてみれば、今まで「ユニバーサルマスキングとは何か」をきちんと説明してこなかった気がする。
今日はそれについて書きたい。
ユニバーサル・マスキングの意味と意義
元来、ユニバーサルマスキングという言葉は医療機関で使われてきた。
たとえば新型コロナウイルスに関しても、日本環境感染学会は、「
医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド第3版」でこのように注意喚起をしている。
“ユニバーサルマスキング
新型コロナウイルス感染者の咽頭には、症状出現の2⽇ほど前から症状出現直後にかけてウイルスの増殖がみられ、感染性を発揮する可能性が指摘されています。そのため、無症状あるいは症状が軽微な職員から他の職員や患者への感染を防ぐために、すべての職員が院内では常時サージカルマスクを着⽤することを検討してください。“
これを院内や薬局内のみならず地域社会全体に広げようというのが、昨今言われ始めている「ユニバーサル・マスキング」だ(ユニバーサル・コミュニティ・マスキングとも呼ぶ)。
新型コロナウイルスが出現するまで、マスクは呼吸器症状がある場合に装着するとされてきた。
これが皆さんご存じ、いわゆる「咳エチケット」だ。
ところが新型コロナウイルス感染者では、症状出現2⽇前から症状出現直後にかけて咽頭でのウイルスの増殖がみられ、その時点で感染力が高いとされている。
無症状者からの感染のほうが、症状がある患者からの感染より多いとの説もある。

このような理由から新型コロナウイルスでは有症状者だけでなく、症状のない地域住民全員がマスクを装着する意義が大きくなる。
従来の「咳エチケット」ではダメなのだ。
これが僕の言う、そして昨今広まりつつある「ユニバーサル・マスキング」ということになる。
よくある勘違いは、マスクを「自分が感染しないため」にするということ。
この効果は比較的小さいと考えられている。
肝心なのは万が一自分がすでに感染していて、しかし何ら症状がない場合でも人にうつさないことで、そのためにはマスクの装着がとても有用になる。
ユバーサルマスキングの目的は飛沫を吸い込まないことではなく、出さないことにあるのだ。
マスク装着によって飛沫を防げることを疑問視する人はまずいないと思うが、最近 “The New England Journal of Medicine” で効果がはっきりと報告されていることも付け加えておく。
NEJM: Visualizing Speech Generated Oral Fluid Droplets with Laser Light Scattering
マスク装着に関する報告
ちなみに新型コロナウイルスにおけるマスク装着の意義については、すでに多くの報告や推測がなされている。
興味がある方は、ぜひ僕の過去記事を読んでほしい。
(古い順) 7月27日 更新
日本はなぜ感染爆発を逃れられたのか?~新コロのファクターXに迫る西欧から学ぶ、自粛レベルの目安とは?僕が考えるファクターX ~ 前編 感染者数効果を最大限にするための「新しい生活」とはユニバーサル・マスキングと ドイツからの報告~新型コロナウイルス「中韓とは別の道を模索」「マスクについて新たな論文」の新コロ記事2本立てオーストラリアで新型コロナの感染が急拡大。これでファクターXはマスクに決定か?西欧の状況を見れば、新型コロナウイルスを抑える鍵はユニバーサルマスキングと考えざるをえない。「ここで新規感染者数増加は止まるのか?」「世界のマスク事情」「分科会」の3本立て。日本人はコロナに強いと過信してはいけない~オーストラリアの感染動向から考える神戸大学の岩田健太郎教授は日本での拡散防止にマスクはほとんど役に立たなかったと書いているが(
岩田氏のブログ)、僕の考えは違う。
日本で感染が広まらなかったのは、単に“スタート地点が違っていた”から??皆がマスクをしていれば、新型コロナウイルス感染は終息に向かう。
問題は会食といったマスクをはずさざるをえない状況に限られる。
それに関しても僕なりのアイディアを提起しているので、お時間のある方はぜひ読んでみてほしい。
新しい「会食」様式について考える。 今日の結論
何度でもくり返す。
このウイルスと戦うのに、ロックダウンといった強力な対策は必要ない。
マスク、ソーシャルディスタンス、換気、できればテレワーク。
会食は少人数で、時間的・距離的感覚を空けて。
これだけで十分だ。
効果を最大限にするための「新しい生活様式」とはご賛同いただける方は、ぜひ家庭や職場で「ユニバーサル・マスキング」という言葉と意味を広めてほしい。
その他、新型コロナウイルスに関するお薦め記事一覧
7月29日更新
(新しい順)
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医師の端くれとして、新型コロナウイルスについて思うこと。これは非常事態宣言発出直後の4月10日にアップしている。
iPS細胞でお馴染みの山中伸弥教授が「ファクターX」と言い出す1カ月以上前から同様の提言をし、かつ当時からマスクなどにの生活習慣が主たる理由であろうと推察している点は、ちょっとだけ自慢させていただく。
マスクに関する追記
7月19日追記
CDCがマスクの有効性を強調。
https://www.wsj.com/articles/face-masks-really-do-matter-the-scientific-evidence-is-growing-11595083298?mod=e2twこれで世界的な理解が大きく進むはず、と期待。
7月22日追記
ついにトランプ大統領がマスク装着を推奨。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200722/k10012527651000.html
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