経験の積分量が充実した人生の目安? 「エンド」の効用を忘れずに ~ 「DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール」のご紹介3


一昨日から紹介しているのは、ビル・パーキンス著「DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール(ダイヤモンド社)。


予告どおり、今日からはあまり共感できなかった点について述べる。

p044
人生は経験の合計だ。あなたが誰であるかは、毎日、毎週、毎月、毎年、さらには一生に一度の経験の合計によって決まる。最後に振り返ったとき、その合計された経験の豊かさが、どれだけ充実した人生を送ったかを測る物差しになる。

だから楽しみを先送りせず、あるいは活動が落ちる老年期まで待たず、中年期こそ積極的に散財せよというのが本書の趣旨なのだが、あえてそのコアな部分に疑念を呈したい。
最後に振り返ったとき、人生の充実度の物差しになるのは、本当に「合計された経験の豊かさ」だろうか?
そう考えるのはあまりにリスキーに思える。

たとえばあなたが明日死ぬ運命だとしよう。
振り返った時、あなたに幸福感を与えてくれるのは、ここ10-20年の人生だろうか? それともそれより前、少年期から青年期の思い出だろうか?
そう考えれば、ほとんどの人は「比較的新しい思い出のほうが重要」と答えるはずだ。
少年期に神童と呼ばれ、あるいはスポーツ万能だった人が、社会人としては冴えない結果に終わった時、「子供時代はもてはやされたから幸せ」と感じ続けるのは普通は難しい。

さらに、自著「4週間で幸せになる方法」から重要なポイントを引用。

皆さんはピーク・エンドの法則という言葉を聞いたことがあるだろうか? 行動経済学者、ダニエル・カーネルマンによって1999年に提唱されたもので、あらゆる経験の喜びや苦痛は、そのピーク時と終了時で決まるとされている。
我々はコンピューターのように、正確に体験を記録するわけではないし、過去の出来事を均等に思い起こすわけではない。記憶に大きく作用するのは、経験のピークとエンド、すなわち絶頂部と終わりの部分であり、その他の要素、例えばその出来事がどのくらい続いたかといったことは、ほとんど無視されてしまうのだそうだ。
実際にダニエル・カーネルマンは次のような実験を行っている。
① 痺れるほど冷たい水に両手を60秒浸す。
② 痺れるほど冷たい水に両手を60秒浸した後で、同様にとても冷たいが、少しは温度が高い水にさらに30秒浸す。
苦痛の総量でいえば、もちろん②のほうが大きい。しかし被験者である学生に、「どちらの経験ならもう一度してもいいか」と尋ねたところ、②を選ぶ人が8割を超えたのだそうだ。
この場合、ピークの苦痛は同じだが、エンドの苦痛が少ない分、②のほうがましな経験としてインプットされたということになる。
実生活での記憶においても、ピークの高さが大きな意味を持つことに関しては、今さら言うまでもないだろう。体験から得られる感動が大きければ、その分いい思い出になりやすい。
終わり方の重要性はピンと来にくいかもしれないが、映画やドラマに当てはめれば簡単にわかるはずだ。たとえ序盤から中盤にかけて盛り上がったとしても、それに続く後半の場面が退屈なら、作品の印象も今ひとつということになってしまう。
もちろん制作する側もそんなことは百も承知だから、ストーリーの終盤で見せ場をつくったり、最後にオチを用意したりするというわけだ。
そのような事実を踏まえれば、幸せな思い出を残すためには、「ピーク」をできるだけ良いものにするのに加え、「エンド」を盛り上げればいいということになる。
まあまあの楽しさが長期間続き、最後が尻つぼみになるような経験は、幸福感の積分量が大きいわりには、いい記憶として残りにくいようだ。



経験が後々幸福に貢献してくれるのは、その「積分量」ではなく「ピークの高さ」と「終わり方」らしい。
筆者の主張する、
「最後に振り返ったとき、その合計された経験の豊かさが、どれだけ充実した人生を送ったかを測る物差しになるから、活動が落ちる老年期まで待たず中年期こそ積極的に散財すべき」
との主張に僕が首を傾げる理由がわかっていただけただろうか?

筆者はこう続ける。

p60
老後で何より価値が高まるのは思い出だ。
だから私はあなたに、できるだけ早く経験に十分な投資をしてほしいと考えている。

華やかな人生を送ったものの、カツカツのお金で老年期を過ごす人と、平凡ではあったけれど、金銭的に恵まれた老年期を過ごす人。
前者のほうが幸福だとは、僕にはどうしても思えないのだ。

本書の全否定になってしまいかねない論評だが、皆さんにはどう聞こえただろう?
明日はさらに、この本に大きく欠けている視点を指摘したい。



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フレンチ。

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内山 直

作家、医師、医学博士。
1968年新潟県新潟市に生まれる。新潟大学医学部卒業、同大学院修了。
2004年に独立し自分のクリニックを立ち上げ、「行列のできる診療所」として評判を呼ぶが、その後アーリーリタイアメントを決意。
2016年2月、クリニックを後輩医師に譲りFIRE生活を開始する。
地方都市でゆるゆると生息中。

「お金、地位、美貌」で得られる幸福はたったの10%で遺伝が50%とされています。
残りの40%に目を向ければ、幸せはすぐにやってくる!をキャッチフレーズに幸福の啓蒙活動を継続中。

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