子供が20代のうちに相続をすませる⁉ それって逆に過酷な話に思えるけどな ~ 「DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール」のご紹介5


ビル・パーキンス著「DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール(ダイヤモンド社)の続き。


今日が最終回。共感できなかった点について続ける。

ゼロで死ねば遺産がなくなる。稼いだお金を子供へ残してはいけないのか、という疑問に著者は次のように答えている。
p115~

私は決して「子どたちに与えるべき金までを含めて、死ぬ前に使い果たすべきだ」などとは言っていない。子どもたちに与えるべき金を取り分けた後の、残りの「自分のための金」を生きているうちにうまく使いきるべきだと主張しているのだ。

そもそも子どもたちには、あなたが死ぬ「前」に財産を与えるべきだ。
なぜ、死ぬときまで待つ必要があるのか?

死んでから分け与えるのでは遅い。大切な子どもたちが、受け取った財産を最大限に活用できるタイミングを考えてあげるべきだ。

ご存じの通り、人生は気まぐれだ。何が起こるかわからない。相続する額にかかわらず、受けとる側が一番金を必要としているタイミングでそれを手にするには、かなりの運が必要だ。
たいていの場合、相続のタイミングが遅すぎて、相続人は値打ちのある金の使い方ができない。

筆者が指摘するのは、死んでからの相続だと子どもたちもすでに老齢になっていることが多く、お金をもっとも必要とする時期をすぎているという点。
もちろん、ある程度の説得力はある。
でも、一旦子供たちの幸福は置いておいて、「自分自身の幸福な老後」だけに的を絞るとどうだろう? 早めの相続によって子どもたち、場合によっては孫たちへの「求心力」が減ってしまわないだろうか。
ありていに言えば、さっさと相続をすませてしまうことにより、相続を先延ばしにした場合と比べ、終末期にさほど大切にしてもらえなくなる可能性が出てくるのでは、との疑問だ。
「そこまで打算的になりたくない」
「うちの子に限ってそれはない」
という反論が聞こえてきそうだし、そう考えるのならもちろんそれでいい。
でもシビアに現実を見つめてみれば、それなりの額を子どもたちに譲ってから、その2~30年後に自身の死を迎えるまでの間、子供たちからの感謝の念が減少せず、贈与当時のまま維持されるなどということは、ちょっとありえない気がする。
全部を死ぬまで確保しろとは言わない。でも、「譲れる分は早めに譲ってゼロで死ぬ」よりも、「確実に余る分があればそれだけ譲って、残りは念のため自分が死ぬまでとっておく」ほうが、やはり安全なのではなかろうか?
万が一、早すぎる贈与のために自分の老後がみじめになったり、あるいは、お金を譲った後に子供たちに裏切られることになったら、お金を譲ることなく裏切られたより何倍もつらい経験になりそうで怖い。

次は贈与のタイミングについて。

p128
私には継子の息子もいる。もう29歳なので、彼には与えるべき財産の9割をすでに渡した。彼はこの金で家を買った(こんなふうに、何回かに分けて財産を与えるのは良い方法だ)。

多少の前倒しには賛成とさっきは書いたが、30歳までに大変を相続し終えるというのは早すぎるのではないか。むしろ20歳代は、少ない収入でやりくりしながら、自分の身の丈や好みに合った消費スタイルを探るべき年齢だと思う。
20歳代で家を与えられ、その後は追加供給なしでは、長い目で見た場合、子供たちの人生は逆に過酷になりはしないだろうか。
過去記事より引用。
子供のためにお金を使い過ぎてはいけない! ~ ベストセラー“となりの億万長者”から学ぶ より)

ベストセラー「となりの億万長者(早川書房)」の中で紹介された実際のエピソード。
サウス医師(仮名)の親は金持ちで、彼を甘やかして育った。だから彼も学生時代から贅沢な生活を当然のことのように送っていた。
医師として成功した彼の年収はなんと1億円近くある。ただしその分を使ってしまうのでお金はさっぱり貯まらない。
例えばサウス家は衣料費に年間300万円以上使っている。(当時の)アメリカ人の平均所得に近い額が服だけで消えてしまうのだ。
車には年間750万円、住宅ローンに1100万円、クラブの年会費と飲食費で500万円。そんな調子で夫婦だけでなく、子供たちも競うようにお金を使ってしまうので、さっぱりお金が貯まらないのだそうだ。
それでいいじゃない? と思う人もいるかもしれない。稼ぎがいいんだから、それで豊な生活を享受して何が悪いの? と。
「金の使い道なんて本人たちの勝手だ」と言われればその通り。
ところがサウス家には深刻な問題がある。彼には4人の子供がいるが、皆、サウス医師ほど優秀ではないのだ。
取材に対しサウス医師も「自分の何分の1かの所得でも稼ぎ出すのは容易ではない。子供たちには無理だろう」と認めている。
しかし倹約の意義などまったく教わらずに成長した子供たち、特に上の2人は、もう社会人であるにも関わらずサウス医師からの仕送りで豊な日々を享受しており、支出を減らそうとはしていない。
サウス医師は次の2点で心を痛めているのだそうだ。

・子供たちが親の資産を自分のものと考えていること。
・子供たちが成人してからも金銭的援助をしてやる必要があること。



子供を甘やかすことと、20代のうちに財産の贈与をすませることが同じとは言わないが、若いうちに富を与えることによって、幸せどころか、悲劇的な事態が引き起こされる場合もあるのだと頭の片隅には置いておきたい。
それに、税金の問題もある。アメリカの税制に詳しくないが、日本で家が帰るほどの額を贈与する場合、複数回にわけたとしてもそれなりの贈与税がかかってしまう。

というわけで、僕自身はゼロで死ぬつもりはさらさらない。
ささやかではあっても、不安感をある程度払拭でき、予期せぬ困難が生じたときに対応できるだけの資産は持ったまま死にたいものだと考えている。

5日にわたり論評を続けた結論から言うと、僕にとってこの本は限りなく「トンデモ本」に近い。一部でいいことを言って、他の箇所の「極端な言説」をカバーしようとする、この手の本にありがちな手法に思えてならない(筆者が意識しているかどうかは別として)。
さらに言わせてもらえば、この本がなんでベストセラーになるのか、不思議でしょうがない。
もし多くの人が筆者の論説を、
「いくつになってもさっぱり貯蓄ができない自分」や「浪費癖が直せない自分」
を正当化するために使っているのだとしたら、なかなかにホラーな状況で人生の終焉を迎えることになるかもしれないよ、と警鐘を鳴らして本シリーズはお終い。



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内山 直

作家、医師、医学博士。
1968年新潟県新潟市に生まれる。新潟大学医学部卒業、同大学院修了。
2004年に独立し自分のクリニックを立ち上げ、「行列のできる診療所」として評判を呼ぶが、その後アーリーリタイアメントを決意。
2016年2月、クリニックを後輩医師に譲りFIRE生活を開始する。
地方都市でゆるゆると生息中。

「お金、地位、美貌」で得られる幸福はたったの10%で遺伝が50%とされています。
残りの40%に目を向ければ、幸せはすぐにやってくる!をキャッチフレーズに幸福の啓蒙活動を継続中。

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