我が家の3人の息子のうち、真ん中の次男は僕に似て大の読書家なのだが、上と下は本に対する関心が薄い。
その3男が珍しく、「読みたい本がある」と言ってきた。
ブレイディみかこ著「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」(新潮社)。
ならばさっそく図書館で借りてやろうと思い、自宅パソコンからログインして驚いた。
待ち人数、550人!?
55人ではない。それでもすごいが、間違いなく550人となっている。
借りた人が皆、1日で読んでくれるとする。
翌日に返却し、その日のうちに次の人が借りる。
その人がまた1日で読んで翌日には返却。
これが最短パターンだと思うが、それでも自分の番が来るまで1100日かかる。
休館日もカウントすれば、約1300日。
3年半かかる計算になる。
もちろん、そんなにスムースに貸し借りが進むことはありえない。
一旦借りれば2週間は手元においていい決まりになっている。
自分の番が来ても、1週間は取っておいてくれる。
ということは最長パターンだと、本が次の人に渡るまでに3週間かかることになる。
僕の番が来るのは31年後だ。
3男は42歳、僕は83歳。
3男は予約したことなど確実に忘れているだろうし、僕に至ってはまだ生きているかどうかもあやしい。
どうやらとてつもない人気のようだ。
調べてみたところ、2019年の本屋大賞の中の、ノンフィクション本大賞を受賞していた。
なぜか今までは僕のアンテナにひっかかっていなかった。
僕のアンテナは一般的な傾向とはかなり異なった確度を指しているようだ。
せっかく3男が本に興味をもったのに、30年以上待たせるのも忍びない。
思い切って、買ってみることにした。
我が家ではまず本を買わない。
アーリーリタイアを目指し始めて以来ケチになったのもあるが、すでに書庫には本が3000冊ほどあって、保管場所に困っているのが一番の理由だ。
可動式書架はたわみ、一部は強く押さないと動かなくなっている。
時折本を整理し、処分するようにしているのだが、愛着のある本が多くてなかなかはかどらない。
というわけで、子供たちは図書館から借りるボロボロの本に慣れている。
そんな中、染みひとつないピカピカの本を渡したものだから、3男は飛び上がって喜んでいた。
「買ってくれたの? これ、僕のなの?」
と叫びながら小躍りする。
こんなとき、ケチな親をもった我が子を少しだけ不憫に感じる・・・。
物を買い与え、子供が興奮する姿をみるのは、親にとって大いなる喜びだ。
しかしそれは危険な罠で、親が子に物を過剰に与えることによる弊害は大きい。
興味のある方は、ぜひ自著“
幸せの確率 あなたにもできる! アーリーリタイアのすすめ
”を手に取ってほしい。
子供にお金ではなく「心のエネルギー」を費やすことは、アーリーリタイア達成のためだけではなく、子供の教育にも重要なのだ。
閑話休題。3男に話を戻す。
久々に買ってもらったピカピカの本だ。
さっそく手にとって読み始めたのだが、5分で読むのをやめてしまった。
「おもしろくないの?」
と訊くと、
「そういうわけではないんだけど・・・」
と言葉を濁す。
ということはきっと、おもしろくないんだろうな。
自分から読みたいと言って買ってもらった手前、はっきりと「つまらない」とは言いにくいのだろう。
残念。
さあてこの本、どうしよう。
そもそも3男が興味をもったから買ったにすぎない。
僕にはタイトルのキャッチーさがあざとく感じられ、特に読みたいとは思わなかったのだが、せっかく買ったのに放置するのももったいない。
軽く目を通してみよう、と手に取ってみたところ・・・。
おもしろい!
イギリス在住の日本人女性(今は国籍は向こうなのかな?)によるエッセイなのだが、読み始めからすぐにグイグイと引き込まれた。
1編目の終わり辺りでは早くも涙が止まらなくなった。
なんなんだこの本は!
すごすぎる。
しかし同時に、小学生には難しいな、とも感じた。
中、高校生くらいにならないと、この本のおもしろさはわからなそうだ。
3男にはあと数年したら勧めてあげることにしよう。
収載されているのは全部で16篇のエッセイ。
一気に読むのがもったいなくて、1日に1篇ずつ大事に読んでいたところ、昨日読了した。
読み終えるのが悲しくてたまらないなんて、どのくらいぶりに受ける感情だろう。
僕がここ10年で読んだエッセイ集では、間違いなく、そしてダントツでナンバーワンだ。
明日はこの本の魅力について書きたい。
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西瓜を使ったガスパチョ。
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