幸せになるのに、社会変革を待ってなどいられない~「格差は心を壊す」を読んで。


まずはプロローグから引用。

“所得格差が大きな社会では人々が健康を害しがちである。平均寿命が短くなる一方で、幼児死亡、精神疾患、違法な薬物使用、肥満などの比率が高まる傾向がある。不平等はさらに社会問題を悪化させる。たとえば不平等が高まれば(殺人率の比較から分かるように)暴力犯罪が増え、刑務所への収監率が上昇する。住民の間では不信感が強まり、地域の連帯が弱まる。不平等の拡大によって子供の将来性も損なわれる。子どもの幸福や学力が低下を余儀なくされ、その一方で未成年出産が増加をたどる。社会階層間の移動も停滞する。”

なんともはや、悪いことばかりだ。
僕も個人的には社会格差は小さいほうがいいと思っている。北欧など所得格差が小さい国の方が総じて国民の幸福感が高いのは、よく知られた事実だ。ある程度以上の格差が人を不幸にすることに、もはや議論の余地はないように思える。
日本も所得格差は小さい。ただし日本の場合、高齢者に富が集中していることや、行政が政策によって世代間格差をむしろ拡大させる傾向がある点を問題視する向きもある。


続く本編では、格差に関するありとあらゆる所見が網羅される中(この本は429ページもある)、僕が注目したのは次の箇所だ。

“371ページ~
心理学の研究によれば、私たちを消費に駆り立てているのは、広告主が私たちに信じ込ませようとしているような、幸せな気分に浸り充足感を味わうためではない。それは、社会的地位に対する不安である。人間の幸せと“物質主義的”な消費行動との関係を調べた研究は250件以上存在する。それらの最新の分析によると、個人的な幸福感と物質的な豊かさを追い求める生き方の間には、明確な負の相関関係があることがわかった。“

これには両方の側面があるように思える。
幸福なら物質的豊かさに拘泥しないですむ。極端な例を出せば、熱々カップルの「愛さえあれば何もいらない」の心境だ。
逆から捉えれば、物質的な豊かさを追い求めるのを止めれば幸せになれる、となる。これもまた真であるように思える。
僕自身、物欲に捉われる愚に気づいてからは、憑き物が落ちたように気持ちが軽くなった。
ブランドものの服も、高級車もいらないじゃん。今まではなんでそんなものにこだわって、大切な自分の世界をせせこましい、ギスギスした価値観の中にたわめ込んでいたのだろう、と。

著者らの専門は格差だから、この相関関係もそこに結び付け、「社会的地位を巡る競争を激しくしている不平等をまず是正しなければならない」と結論づけていて、それはもちろんもっともなのだが、自分が幸せになるのに社会変革を待っているわけにはいかない。
物欲のもつ愚かしい側面に、ひとりひとりが勝手に気づけばいいのだ。
人と比較することによって得られる幸福感が長続きしないことを理解する。
これは知識から攻めてもいいし(たとえば地位財・非地位財)、瞑想を通して感覚的に理解してもいい(僕自身は両方を行った)。
そうすれば、社会制度に関わらず幸福度は上がる。
そこで、「いっそアーリーリタイア」と思うかどうかは個人差があるだろうし、もちろん正解はないのだけれど。

本書では世界中から格差に関するデータが集められ、とても濃厚に仕上がっている。
このテーマに興味がある人にとっては、「これ1冊で十分」と言っていい大作だ。






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桃とアーモンドの冷製スープ。
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内山 直

2016年、47歳でセミリタイア。地方都市でゆるゆると生息中。
「お金、地位、美貌」で得られる幸福はたったの10%で、遺伝が50%。
残りの40%に目を向ければ、幸せはすぐにやってきます!

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