致死率は0.5%から1%。日本で特に低いわけではない 【 新型コロナウイルス】


ニュース番組やワイドショーではいまだに、
「新型コロナウイルスは致死率がわからない」
という発言が聞かれる。
ゲスト出演している医師も含め、誰も訂正しないところをみると、本当に知らない人が多いようだ。確かに新聞でも見かけない。
そこで今日はこの致死率について書いてみる。
あなたの周りの人も知らないようなら、ドヤりながら教えてあげてほしい。

まずは科学雑誌ネイチャーに掲載された論文を紹介する。
ここで出てくるinfection fatality rate (IFR) というのが、致死率(致命率)のこと。病気にかかった人のうち、それが原因で死亡する割合を指す。
最初のうちは致死率の推定が難しかったのは、分母となる感染者数がわからなかったから。
何人亡くなったかがわかっても、感染者数がわからなければ致死率は計算できない。

初期になされた信ぴょう性のある報告は、ラッセルらによるもの。
全数検査が行われたダイヤモンドプリンセス号での集団感染から得たデータを利用して、中国での致死率を計算した結果、0.6%程度と算出している(株は武漢型ということになる)。

その後、抗体検査が広く実施されたことにより、世界各地から報告がなされるようになった。それらを集めた結果、どうやら致死率は0.5〜1%であるようだ、とこの論文では書かれている。
しっかりしたデータと考えてもらって間違いない。
(天下のネイチャーに僕がお墨付きを与えるというのも妙な話だが)。


次に紹介するのが、けんもう新型コロナ対策本部さんに教えていただいた以下の表。

Ed0cLRlU4AEj41d.jpg
ウォール・ストリート・ジャーナルの記事からのもので、実にわかりやすい。左上に infection fatality rate と記されているのがわかってもらえると思う。
平均すると致死率は0.7%くらい。
国、地域によってのばらつきが、実際に致死率が違うのか、それとも得られる数字がまだ不正確なだけなのかは、現時点ではわからない(どちらかと言えば後者のような気はするが)。
これについては今後、徐々に明らかにされていくだろう。

僕自身、手計算で致死率の計算を行っていて、日本では0.8%、医療崩壊が起きたニューヨーク市では1.3%と推定している。
上記知見と概ね合致しているようだ。
新型コロナウイルス感染症での致死率(世界)は1%と試算する!

とはいえ、僕のブログ記事は読んでいただくに値しない。
ネイチャーの論文やウォール・ストリート・ジャーナルの記事のほうが、比較にならないほど優れているからだ(当たり前だけど)。
じゃあなんで面倒な計算をわざわざ自分でしたのかって?
当時は情報がなかったから。
そう、僕が上記ブログ記事を書いたのは、ネイチャーの論文やウォール・ストリート・ジャーナルの記事が出るよりも先なのだ。

ドヤッ!
―― 忍法、読者にドヤることを勧めておきながらまずは自分がドヤるの術 ――
という冗談はさておき。

皆さんご存じの季節性インフルエンザにおける致死率は0.1%以下とされている。これを約0.1%と勘違いしている人が多いが、実際は0.1%よりはるかに低い。
インフルエンザにかかった人の1000人に1人が死んでいたら大騒ぎだし、皆さんにもそんな実感はないはずだ。
これは、
「世界の医療水準が低い地域では、さほど重症ではなくても死んでしまうことがある。そういう地域でもせいぜいで0.1%」
あるいは、
「インフルエンザ関連死も考慮して推定した超過死亡を分子にすると0.1%」
といった意味。あくまでも最大で0.1%なのだ。
日本での季節性インフルエンザの致死率は0.02~0.03%で、しかもここには新型コロナの場合と違い、無症状感染者や診断されていない人を含んでいないから、実際の致死率はもっと低い可能性がある。
いまだに、
「インフルエンザでも人はたくさん死んでいる、新型コロナウイルスを特別扱いするな」
という人がいるが、おそらく致死率の大きな差に気づいていないのだと思う。
周りの人に教えてあげて、その際はぜひ皆さんもドヤッて・・・って、しつこいね。
(本記事ではここまでとするが、興味があるようならIFRとCFRで調べれば違いがわかる。日本ではともに致死率または致命率で、呼び分ける一般的名称がないため混同されやすい)。

ちなみに日本で特に致死率が低いわけではないのは、新型コロナウイルス感染症での致死率(世界)は1%と試算する! でも指摘している。
こちらは先日ツイッターで教えていただいた表。
https://twitter.com/HironoriFunabi1/status/1287599268702937088
Hironori Funabiki先生ツイッターより)

圧巻なので、面倒くさがらずにぜひ開いてほしい。
日本では致死率が低いって言ってたの、誰だよ! と叫びたくなることうけあいだ。
(ただし、ここではIFRではなくCFRなのでご注意を。既述した他の知見より高めの数字になっている)


賢明なる本ブログの読者諸君は耳にタコだろうが、今日も同じ台詞を繰り返して終わりにする。
僕たちは「正しく」怖がる必要があるのだ、と。


いつも有意義な情報を下さる ノートCOVID19_Infoさんに感謝。

(僕の新型コロナ記事に興味をもってくださる方はこちらへ。お薦めの記事がまとめてあります)





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内山 直

作家、医師、医学博士。
1968年新潟県新潟市に生まれる。新潟大学医学部卒業、同大学院修了。
2004年に独立し自分のクリニックを立ち上げ、「行列のできる診療所」として評判を呼ぶが、その後アーリーリタイアメントを決意。
2016年2月、クリニックを後輩医師に譲りFIRE生活を開始する。
地方都市でゆるゆると生息中。

「お金、地位、美貌」で得られる幸福はたったの10%で遺伝が50%とされています。
残りの40%に目を向ければ、幸せはすぐにやってくる!をキャッチフレーズに幸福の啓蒙活動を継続中。

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