日本人はコロナに強いと過信してはいけない~オーストラリアの感染動向から考える


今日はオーストラリアについて。冬に入りビクトリア州を中心に感染の急拡大が生じていたオーストラリアだが、新規感染者数は横ばい(すなわち実効再生産数1)になりつつあるようだ。
僕はこれをある程度予想していた。まずはその理由と、大体の経緯から始める。

以下はちょうど1カ月前にアップした記事からの引用(一部文章を修正)。
オーストラリアで新型コロナの感染が急拡大。これでファクターXはマスクに決定か?

“3月20日、渡航者の全ての入国を禁止(オーストラリア市民および永住者を除く)。この日の新規感染者数は167人。
3月23日、不要不急な大規模行事への参加を控える呼びかけとともに、バー、ナイトクラブ、レストラン、映画館、宗教施設、カジノ、ジム、デパート、美術館などを閉鎖。この日の新規感染者数は364人。
ロックダウンのタイミングはヨーロッパ各国と同時期で、特に早かったわけではない。しかしその時点での感染者数はヨーロッパよりはるかに少なかった。
理由としては以下のことが考えられる。
・暖かい季節であり、ウイルスの感染力が比較的弱かった(これは東南アジアの多くの国にも当てはまる)。
・中国からの旅行者がヨーロッパより少なかった(意外に感じる人もいるかもしれないが、北京からの距離でいうと、シドニーはローマより遠い)。
・周辺国との人の往来がヨーロッパより格段に少なかった。“

この後、豪州の新規感染者数は減少し、感染阻止に成功したとみられていた。しかし帰国者らに対する2週間の隔離措置が甘かったことから、7月に入り感染が急拡大。7月30日の新規感染者数は過去最多の698人に達した。
メルボルンを抱える南東部ビクトリア州では、7月8日深夜からロックダウンを発動。その2週間後、7月23日から(僕が)待ちに待っていたマスク着用が義務化が開始された。

今から1週間前、僕はこんなツイートをしている。
「(オーストラリアで)マスク着用が義務化されてから1週間です。来週にはその効果が出てくるかと」

どうやら予想は当ってくれたようで、マスク着用義務化からちょうど2週間たった今、感染者数の推移が横ばいになろうとしている。
僕は以前から、新型コロナウイルスと戦うのにはマスク着用とソーシャルディスタンスの確保で十分であり、それ以上の規制、すなわち「ロックダウン」や「8割削減」といったものは不要なのでは、と推測してきた(西欧から学ぶ、自粛レベルの目安とは?)。オーストラリアでの最近の対策と感染者数の動向をみると、やはりマスク着用の効果が大きいように思える。
ちなみにマスク装着の意義は、最近急速にその評価が高まっている。
米疾病対策センター(CDC)のロバート・レッドフィールド所長は7月14日、新型コロナウイルス感染予防のために米国民全てがマスクを着用すれば、現在の感染拡大を4-8週間以内に抑え込むことができるとの考えを示した。
7月21日にはトランプ大統領さえも「マスクには効果がある」と認め、全てのアメリカ国民に対してマスクを着用し「愛国心」を示すよう求めたことは、報道で知っている人も多いと思う。

と書いたところで、こんなニュースが舞い込んできた。
ファウチ氏「コロナ抑制に再封鎖不要」、マスク着用など呼び掛け。
これで大体結論が出たような気がする。自慢しているようで恐縮だが、僕が5月から主張していたとおりだ。


さて、ここからが本題(いつも前置きが長くてごめん)。これらの知見を踏まえ、3点ほど述べておきたい。
1つめ。いまだに「マスクなんていらない。コロナには効かない」と言っている人がSNS上にはたくさんいる。これはさすがに禁治産者レベルなので、そろそろ考えを改めてほしい。
2つめは改めて浮き彫りになる日本の弱点だ。日本は法律で義務化されていないにも関わらず、マスクの装着率が非常に高い。
しかし最近報告されている感染例の多くは、飲食など「マスクをはずす場」での感染だ。
マスクで守られている空間はかなり安全で、現に通勤電車内での明確なクラスターは報告されていない。しかし多くがマスクを外している場所は、非常に危険なのだと再認識してほしい。
ソーシャルディスタンスの確保、換気。大声を避ける。宴会は少人数で。そういった工夫で感染リスクを少しでも下げる必要がある。

最後の3つめ。僕が一番訴えたいこと。今までも散々言ってきたが、ここでも繰り返す。それは、

日本人が新型コロナウイルスに強いなんて、まったくの嘘かもしれないよ。

ということ。
ヨーロッパ各国、オーストラリアはマスク装着を義務化してから確実に実効再生産数を切り下げてきている。これだけマスクが有効なら、第一波到来当初からほとんどの人がマスク(ユニバーサルマスキング)をしていた日本では、感染増加が緩やかで当然だった可能性があるのだ。
そうだとすると、「遺伝子によって」「交差免疫によって」「人種的に」、あるいは「BCG接種によって」日本人は感染しにくいのではないかという甘い期待は見事に吹き飛ぶ。
現に欧米の多くの国でマスク装着が義務化された今、日本での感染者数増加率はほとんどの欧米諸国より高い。もし日本人が体質的に感染しにくいのなら、この状況を説明するのが難しくなる。
ちなみに致死率でいうと、日本は諸外国とあまり変わりがないことは、以前書いた通りだ。
致死率は0.5%から1%。日本で特に低いわけではない。


僕からの提言。
日本人がこのウイルスに体質的に強いという科学的根拠はない。高橋泰先生の説など、まったく話にもならない。
高橋氏による「自然免疫説」 木村太郎氏による「弱毒化説」をまとめて批判する
それをしっかり頭に叩き込んだ上で、適切な自粛行動を続けてほしい。それがないと、秋冬には大変な事態になる可能性が高いと、僕は強く危惧している。

僕らにできることは引き続き「正しく」怖がることだけ。それに必要なのは「正しい」理解だ。
このブログを読んで納得するようなら、ぜひあなたの家族や友人にも紹介してほしい。僕らにはひとりでも多くの「共に戦う」同志が必要なのだ。
SNSを見ると、必死に動いている人たちを上から目線で冷笑する「評論家きどり」が増えている気がして、僕はそのことも危惧している。




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毎夏、妻子はヨット。僕はぎっくり腰が怖いので見てるだけ。


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内山 直

作家、医師、医学博士。
1968年新潟県新潟市に生まれる。新潟大学医学部卒業、同大学院修了。
2004年に独立し自分のクリニックを立ち上げ、「行列のできる診療所」として評判を呼ぶが、その後アーリーリタイアメントを決意。
2016年2月、クリニックを後輩医師に譲りFIRE生活を開始する。
地方都市でゆるゆると生息中。

「お金、地位、美貌」で得られる幸福はたったの10%で遺伝が50%とされています。
残りの40%に目を向ければ、幸せはすぐにやってくる!をキャッチフレーズに幸福の啓蒙活動を継続中。

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