日本では入院患者の死亡率が低いって、もうアホかと。


恒例のフィナンシャルタイムズHPより。
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新規感染者数を対数グラフで記している。このグラフをみて皆さんはどんな感想を持たれるだろうか?
まず各国での最近の傾向が似ていることがわかる。ついにイングランドでもマスク着用が義務化されたため、各国の新型コロナ対策には大きな差がない。ロックダウンをしている国はないし、まるっきり自由という国もない(しいて言えば日本が一番自由)。
傾向は同じとはいえ、中でも善戦しているのがイタリアとイギリス。
イタリアでは緊急事態宣言が続いているから、自粛要請の度合いは他国より(もちろん日本より)強い。とはいえこれは厳しいロックダウンではなく、感染者の多い地域から別の地域への移動禁止を禁止する程度。
イギリスでは今でもできるだけ外出しないようにとの呼び掛けがなされており(Stay Alert)、緊急事態宣言下の日本に近いものがある。
逆に新規感染者数の増加率が高いのは日本とスペイン。
僕の解釈は「キャバクラ・ホストクラブ通いを止められない国」と、「パーティーを止められない国」の状況が悪いというもの。他の解釈は成り立つだろうか?
スペインには同情の余地があって、他のヨーロッパ諸国よりも過酷なロックダウン政策をとったことにより、国民のストレス度合いが大きいのだと思う。観光地として人気なことも災いしている。
一方で日本にはそのような同情の余地はない。飲食店でのソーシャルディスタンス確保が義務付けられておらず、店によって対応が大きく違うのが特徴だ(世界的に極めて珍しい)。あのスウェーデンですらソーシャルディスタンスには厳しく、飲食店は半分程度の席数で営業している。
日本では小さな店舗が多いので、ソーシャルディスタンスの確保が難しいという事情もあるにはあるのだが。

「日本人はうつりにくい」との説には、そろそろ無理が出てきたようだ。
もし日本人が「遺伝子によって」「交差免疫によって」「人種的に」、あるいは「BCG接種によって」感染しにくいなら、現在の状況は説明困難になる。
そして致死率でみても日本は諸外国とあまり変わりがないことは、以前書いた通りだ。
致死率は0.5%から1%。日本で特に低いわけではない。
僕がずっと主張してきた「ファクターXはマスクであり、体質やBCG接種の影響はあっても軽微」という考えが、証明されつつあるように思える。

そんな中、不可思議な記事が世間をざわつかせている。
各紙が報じた、「日本のコロナ死亡率、欧米より大幅に低い7.5% 持病の少なさ影響か」という記事だ。
抜粋する。

“新型コロナウイルスに感染した国内の入院患者の死亡率は7・5%で、20%台の欧米などと比べ非常に低いことが国立国際医療研究センターの大規模調査で分かった。原因は不明だが、欧米と比べ糖尿病や肥満の割合が少ないことが影響している可能性があるといい、今後詳しく解析して重症化の予防などに役立てる。
(中略)
海外の死亡率と比較した結果、中国が28%、英国が26%、米ニューヨーク州は21~24%で、日本は桁違いに低かった。日本の死亡率の低さはこれまでも知られていたが、学術的な調査で裏付けた形だ。”

賢明なる当ブログの読者諸君は、すでにこの記事の問題点に気づかれたのではないだろうか?
そう、各国で入院の基準がまったく違うのに、入院患者数を分母にした死亡率を出したって何の意味もないのだ。
ベッドに空きがあるうちは、軽症患者も全て入院させていた日本。
それに対し医療体制のひっ迫により、一時期は血中酸素濃度が90%以下でないと入院できなかったニューヨーク。
死亡率が全然違って当然なのだ。

しかし記事の中では、国立国際医療研究センターの早川佳代子・総合感染症科医長が「糖尿病や肥満は重症化に関連しているとの報告が海外でも相次いでいた。日本の割合が非常に低かった点にヒントが隠されているのかもしれない」と大真面目に解説している。
本当に頭が痛い。
もちろん日本人の肥満率の低さや、皆保険制度に支えられた健康度の高さが新型コロナウイルスの致死率を(若干)下げている可能性は大いにあり、当ブログでも再三指摘している。
でもその話と今回のデータ(もどき)とは、まったく別次元の話なのだ。

この報道を受けてSNS上では、
「ほうら、日本人は死なないんじゃないかwww」
と喜んでいる人が多く、僕は頭を抱えている。
このウイルスと戦うのに必要なのは正しい知識に基づいた正しい恐れなのだ。なのにマスコミも、そして責任ある立場の医師さえも、アホかとしかいいようのない発信を繰り返している。
国立国際医療研究センターにチェック機能はないのだろうか? マスコミにはまともな大人がいないのか?
そう言わざるをえないほど、お粗末な報告であり報道だ。
昨日の「情報ニュース7days」でもこの報告が無批判に報じられていた。コメンテーターもスタッフも悪いけどアホ認定だ(たけしさんはファンなので除外 笑)。

新型コロナウイルスに関しては、非常にレベルの低い報道が目立つ。皆さんには、ぜひ惑わされないよう注意していただきたい。
僕だってもちろん間違うこともあるが、それでもこれらアホ記事とは次元の違う情報を発信している自負はある。ある程度信用していただければありがたい。

僕らはお互いに協力し合って、この敵と戦う必要があるのだ。
(実は最近、ちょっと絶望的になりつつもあるのだが……)




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内山 直

作家、医師、医学博士。
1968年新潟県新潟市に生まれる。新潟大学医学部卒業、同大学院修了。
2004年に独立し自分のクリニックを立ち上げ、「行列のできる診療所」として評判を呼ぶが、その後アーリーリタイアメントを決意。
2016年2月、クリニックを後輩医師に譲りFIRE生活を開始する。
地方都市でゆるゆると生息中。

「お金、地位、美貌」で得られる幸福はたったの10%で遺伝が50%とされています。
残りの40%に目を向ければ、幸せはすぐにやってくる!をキャッチフレーズに幸福の啓蒙活動を継続中。

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