換気? 頻回検査? 日本がこの冬を乗り切る策はあるのか?


このところ全国でも東京都でみても、新規患者数は横ばいのまま。これだけ人の動きが増えているのに増加の兆しがない。
一部の方は思っているのではないだろうか?
「内山に散々煽られたけど、本当はこのまま終息するんじゃない?」と。個人的には「そうだったら、どんなにいいか」と思っている。
でも断言しよう。残念ながら、それはない。

日本での第一波は比較的小さなものに終わった。そこで山中教授が唱えたのが「ファクターX」。なぜ日本では感染を、そして死者数を欧米と比しはるかに小さい規模で抑えることができたのか。
散々書いて来たとおり、一番の要素はマスクだろう。マスクの有効性については日に日に知見が積み上がっており、いまだにその有効性を認めないのは世界中でスウェーデンくらいだ。
加えて専門家会議が成し遂げた功績も実に大きい。
三密の回避を!との掛け声。一部の人しか周囲にうつさないとの分析。そして高度な接触者追跡能力。これによって日本は第一波を乗り切ることができた。
そんな中政権は? 何もしなかったとは言わないが、入国管理の杜撰さ、検査体制を拡充できなかった柔軟性のなさは、及第点とは言い難い。

その後、緊急事態宣言が解除され、5月下旬から自粛が緩んだ。すると7月には人出の増加に呼応するかのように新規感染者数が増加。一部では「湿度、気温とも高い夏は流行しないのではないか」と期待されていたが、見事に期待を裏切られることになった。
7月に人々は再度自粛。それををうけて8月には患者数は減少。その後、お盆休暇を無事乗り切ったことにより、9月からは再び自粛が緩み始める。さらにシルバーウィークではGoToトラベル効果もあって多くの移動がみられた。今までの自粛→患者数減、緩み→患者数増の繰り返しを考えれば、10月に入れば間もなく患者数が増えるはずだった。
ところが冒頭に書いた通り横ばいのまま。
何故だ?
僕はこれを(勝手に)ファクターYと名付けた。何らかの理由があるはずなのだが、さっぱり思いつかない。
一部の人が主張する集団免疫成立の可能性すら「ひょっとして…」と頭をよぎった。

そんな中、米CDCの不可解な動きが報道された。今まで否定してきた空気感染を認める文言を一旦はガイダンスに掲載。しかし翌日にはその部分を丸ごと削除し、「手違いだった」と釈明したことから、政治的介入があったのではとの疑惑が生まれた。
関連記事を読み進めるにつれ、僕は初めて真剣に考えることになる。「そもそも新型コロナの感染経路ってどうなっているんだろう?」
CDCが渋々認めるずっと前から、空気感染があるとは確信していた。合唱、結婚式、レストランなどでのクラスター事例を考えれば、ないわけがない。
しかし判明している事例の多数は近距離でのものだ。当然、飛沫感染、あるいは接触感染が主たるものだと思っていた。
でも、それは本当だろうか?
そこで僕はツイッター上で知り合った「呼吸器内科医先生」に色々と教えてもらうようになる(そういう図々しさは僕の短所であり、大抵は顰蹙を買うことになるのだが、たまにはこのようによくして頂けることもある)。
その結果、僕がたどりついたのは多くの人が訴えてきた、しかしほとんどの感染症専門家が否定しているひとつの仮説だ。
「新型コロナウイルスの『主』たる感染経路は、空気感染なのではなかろうか?」

ではなぜ近距離での感染報告が多いのか? エアロゾルに含まれるウイルスが空気中に長時間浮遊し、感染をもたらすにせよ、近距離では量が多いぶん感染確率が高い、そう考えれば何の矛盾もない。
となれば空気が動いていれば、近距離でも感染は生じにくいことになる。
なら屋外では感染しないのか?
そうだ!と思い至った。「屋外での感染事例はほとんど報告されていないではないか!」
新型コロナウイルスは感染性を残したままエアロゾルに含まれる。これは確実だ。調べてみたところ(正確に言うと呼吸器内科医先生に論文を教えてもらったところ)、人が発出する量はエアロゾルのほうが飛沫より遥かに多いようだ。
そしてこのことは肺炎発症率が高いことも説明しうる。エアロゾルは小さい分、上気道でひっかからず容易に肺に達するというわけだ。
多くの専門家、医師が「空気感染ならこんな程度の感染拡大ではすまないはず」との思い込みにとらわれている。
しかし元来、空気感染するかどうかと感染スピードとの間に明確な関連性を見出す科学的根拠はない。結核・麻疹・水痘と似た感染経路をたどるが、感染性はかなり低い、と考えれば辻褄は十分に合う。

ここで話はようやく前半とつながる。思い出していただくためにその部分を引用する。

9月からは再び自粛が緩み始める。さらにシルバーウィークではGoToトラベル効果もあって多くの移動がみられた。今までの自粛→患者数減、緩み→患者数増の繰り返しを考えれば、10月に入れば間もなく患者数が増えるはずだった。
ところが冒頭に書いた通り横ばいのまま。
何故だ?
僕はこれを(勝手に)ファクターYと名付けた。


僕はなんて愚かだったんだ。大切なことを見落としていたようだよ、ジョン。
野外活動に適し、屋内であっても換気が容易だった9月は感染が広がりにくくて当然じゃないか。一方で感染者が増えた6-7月は雨が多く、雨水が吹き込まないように窓を閉めざるをえない日も多かった。
例外があるとしたら……北海道だ! 北海道ではすでに窓を開け放せないほど冷え込んでいるに違いない。僕はすぐさま北海道の患者数をチェックした。
悪い予想は的中。全国の新規患者数推移とは異なり、9月下旬から少しずつ増えてきていることがわかる
これが冬場の、言い換えれば「換気に乏しい状態」でのウイルスの感染力だ。僕にはウイルスによる犯行予告が聞こえる。
「1か月後には、今北海道で起きていることを全国規模で起こしてみせよう。楽しみにしてまえ、シャーロック」
まずいぞ、ジョン。連中はどうやら本気だ。
対抗するには……換気だ。ひたすら換気をするんだ!そうすれば屋内は屋外みたいなものになる。
が、しかし。しかし……


(内山注:イミフですいません。今更ながらイギリスドラマ『シャーロック』にはまってまして……)

以上、新型コロナウイルスの感染経路と換気の重要性についてまとめてみた。今日のブログは半ば僕の妄想だと思ってもらってかまわない。
でも個人的には確信の度合いを深めつつある。このやっかいなウイルスの『主』たる感染経路は空気感染なのかもしれない。
この仮説が正しければ、今後も北海道で感染者数が増え続け、じきに日本全体がそれに続くことになる。みなさんもぜひ北海道での動きを注視して頂きたい。
では、実際に予想通りになったとして実行可能な解決策はあるか?
学校では十分な換気が可能だし、給食の時間以外はマスク装着が可能だ。児童や保護者にはこの冬は厚着で授業をうけることになると説明すればいい。問題は換気の重要性を十分に周知できるかどうかだが、これはうまくいくと信じたいし、僕自身も微力ながら啓蒙活動を続けたい。
しかし残念ながら、経済に関しては絶望的だ。日本のほとんどの飲食店には満足な換気が得られる設備はないし(一般的な24時間換気ではまったく不十分だ)、雑居ビルの店舗では空気を通すための基本、「できるだけ離れた2か所での窓の解放」すら難しい。
たとえ十分な換気ができたとしても、よほど暖房出力が強くない限り、店内は客もスタッフもコートを脱げないレベルの寒さになるだろう。多くの店が実施してくれるとは考えにくい。そしてもちろん、食べ物、飲み物を口にいれるときにはマスクを外さざるをえない。
来る冬、国民が三たたび自粛生活に入る以外に感染の蔓延を防ぐ手立てはなさそうだ。飲食店は接待を伴うかどうかに関わらず、大きな被害をうけることになる。

それに対する処方箋は「頻回抗原検査」しかないと考えている。2か月前からそれを訴え、ツイッターブログで発信するほか、各種マスコミや地元保健所に情報提供をし続けてきた。しかし関心を向けてくれる機関はない。
日本は世界中が必死で取り組んでいる「検査体制の拡充」にほとんど注意を向けないまま、「換気が厳しい」冬を迎える。
このブログではずっと「もう時間がない」と訴えてきたが、残念ながら今日はその台詞を繰り返すことはしない。
時間はすでに尽きた。チェックメイトだ。
この冬、日本は良識ある国民による外出自粛で経済の息の根を止めながら、かろうじて感染爆発と医療崩壊を防ぐしか手はない。受診控えが生じ、それによって多くの人が健康を害し、場合によっては亡くなるだろう。
その勢いを大きくしようとたくらんでいるかのように、政権はついにGoToEATを始めてしまった。イギリスではこの政策のせいで感染が拡大し、ジョンソン首相でさえ失敗を認めているというのに。

信じられないほど無能な政権の失策によって、耐えがたきを耐えるしかない冬が来ることだろう。
断腸の思いで予想しておく。



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内山 直

作家、医師、医学博士。
1968年新潟県新潟市に生まれる。新潟大学医学部卒業、同大学院修了。
2004年に独立し自分のクリニックを立ち上げ、「行列のできる診療所」として評判を呼ぶが、その後アーリーリタイアメントを決意。
2016年2月、クリニックを後輩医師に譲りFIRE生活を開始する。
地方都市でゆるゆると生息中。

「お金、地位、美貌」で得られる幸福はたったの10%で遺伝が50%とされています。
残りの40%に目を向ければ、幸せはすぐにやってくる!をキャッチフレーズに幸福の啓蒙活動を継続中。

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