なぜヨーロッパではここまで新規感染者数が増えたのか?【新型コロナ】


ヨーロッパでは新規感染者数の増加が著しい。EU全体で見ると1日の感染者は約7万人、 死者は500人。このところ横ばいで推移しているアメリカと肩を並べるまでになってしまった。
一方で日本の感染者数は500-600人と桁がふたつ違う。
自粛が緩んでいるのに日本で感染者数が増えない理由は、季節柄、野外活動に適しており、また換気をしやすいからだと考えているが、確証はない(参照;換気? 頻回検査? 日本がこの冬を乗り切る策はあるのか?
ではなぜヨーロッパではここまで感染が拡大しているのだろうか?
僕は第一波での感染拡大の違い、いわゆるファクターXを「マスク」だと考えてきた。以前から予防目的でマスクをする習慣があったあった日本では、たとえ咳が出てもマスクをしない欧米とくらべ、感染の広がりが圧倒的に小さくて当然だと考えたためだ。
その後、マスクの有用性を示す論文が次々と世に出され、やはりファクターXはマスクで間違いないと確信するようになった。現にマスク着用を取り入れた国々の多くでは感染が収束方向に向かっている。
なのに今回、ヨーロッパでの患者数増加が止まらない。マスクは一般的になったはずなのになぜ、と首を捻ることになる。
とりあえず片っ端から関連記事を検索してみると、徐々に様子がみえてくる。
今日はそれを紹介する。

7月26日の記事

スペインでは都会で深夜に集まっていた若者の感染が懸念材料になっている。
疫学の専門家、ダニエル・ロペス=アクナ医師はBBCに、「こうした若者から家庭内に伝染し、とりわけ高齢者に伝染している」ため、感染者の平均年齢は今後上昇するかもしれないと話した。家族の集まりやストリート・パーティー、ナイトクラブへの制限緩和は、コロナウイルス再流行の原因とされている。


これは7月31日の記事

夏休みのシーズンを迎えたヨーロッパでは、スペインやフランスなど各地でビーチやナイトクラブに集まった若者たちの間で集団感染が報告されていて、さらなる感染の拡大に警戒が強まっています。


フランス。8月20日の記事

仏政府は、5月に外出禁止令を解除した直後「最も美しい国土、フランスを再発見しよう」(ルメール経済相)として夏の国内旅行を奨励。海辺や湖畔が大混雑する様子が報じられ、街中で対人距離やマスクの着用義務を守らない人も相次いだ。


ドイツも同様。8月24日の記事

夏季休暇中に国外で過ごした人が帰国し、感染が拡大したもようです。パーティーへの参加や家族の集まりも感染拡大の原因とされています。

ナイトクラブや観光地での密から感染が拡大したようだ。その後、これがさらに拡散される。

9月2日の記事

夏休み期間の人の移動が要因となったとの指摘がある。国外旅行を控える人は多かったが、親族や友人との接触の機会は増えた。仏政府によると、クラスター(感染集団)による感染拡大は全体の2割で、残りは私的な家族の集まりが中心だという。

観光地以外でも、親しい人と会うことによって感染が拡大。この記事の段階ではクラスターよりもこちらが主とのこと。
報道で垣間見る映像だと、マスクをして社会的距離を保って、という節度ある交友ではない。あたかもコロナ禍が終了したかのような、密な接触も多かったようだ。

今月に入り10月11日の記事ではこうなる。

コロナ感染のクラスターの多くは会社、家族での集まり、結婚式やお葬式。

バカンス先から持ち込まれたウイルスが、無防備な環境で拡散していく様子がわかる。
10月15日のこの記事も似た内容。

欧州は今や一部でクラスター(感染者集団)が発生している状況ではなく、首都をはじめ人口密集地で感染者の増加が止まらない。
マクロン氏は規制強化の理由について、レストランでの飲食や知人同士の会合が感染拡大の主な原因になっていると説明した。

こうなってしまうと濃厚接触者の追跡など不可能で、ロックダウンに近い策を取るしか止めようがない。どの国も対策が後手に回った印象だ。

大陸を離れイギリスでは。10月8日の記事

イギリス版Go To Eatが「コロナ感染拡大の一因に」、英首相認める
8月にキャンペーンが終わり9月に入ると、いったん収まっていた新型コロナウイルスの感染が拡大し、中旬には第2波に見舞われた。


さらに大学が始まる。10月12日の記事

大学がスタートし、学内でクラスター発生。状況がここまで悪化した一つ目の理由は大学が9月末に始まったことです。
多くの大学が学生に「安全な」環境を提供すると言い、学生を大学に戻した結果、学生らは住んでいる地域からこれまであまり影響を受けていなかった大学周辺の地域にコロナウイルスを持ち込んでしまいました。これが大学内でのクラスターにつながりました。
例えば、ニューカッスル大学の1000人以上の学生が、ノッティンガム大学では1400人以上が陽性になるという結果なったのです。

GoToEATで助走をつけて、大学スタートで一気に拡大。これはもはや人災と言っていいのではなかろうか?(そして日本はイギリスの失敗をそのまま真似ようとしてるかにみえる)

一方肝心のマスク着用はというと、7月31日にドイツに帰国した日本人による記事

ドイツの普通の人たちは、マスクの効果などさほど信じている様子がないし、どちらかというと今でもバカにしている。お店に入るとき、持っていない人に、自分の付けていたマスクを貸してあげている人も見た。日本人なら卒倒しそうなシーンだ。

ここまで緩んでいたとは、と驚かされる。
次はフランスからの情報

新型コロナウイルスの感染の広がりを受け、フランスでは9月1日から企業の建物内でもマスク着用が義務化されることになりました。
ノール県では人が多く集まる場所ではマスク着用義務が。

つまりそれまでは、公共交通機関などではマスクをしても、オフィス内でははずしているケースが多かったことになる。夏季休暇終了後、バカンス先から持ち帰られたウイルスが蔓延して当然だ。
ちなみに同記事には下記記載も。

フランスでは、専門家機関の提案に従い隔離機関を14日間から、実際に他者を感染させるリスクのある7日間に短縮する。その代わりに、7日間の隔離が確実に守られるようより監視を行う。

これもそれまでは監視がなかったことを意味する。権利意識の強いフランス人が2週間の自主隔離をきちんと守ったとは、ちょっと考えにくい気がする。
外食や休暇での気の緩みで拡散されたウイルスをそれぞれが家庭、学校、職場でさらに拡散。マスク装着や感染者隔離が不徹底だったこともあり、とんでもない事態を招いてしまったようだ。

一方で日本はどうか?
7月の感染者数をうけて8月は自粛ムードが強まった。お盆の帰省も遠慮しながら、そして実家の高齢者に感染させることがないよう注意した人が多かったようだ。
9月に入ると外出する人が増え、特にシルバーウィークは場所によってはかなり混雑したようだが、マスク着用をはじめ、日頃のマナーを旅先でも守った人が多かったであろうことは、ニュース映像からも推測できる。現にシルバーウィーク2週間後、目立った感染者数の増加はなかった。
ではこのまま日本は危機を脱することができるのか?
僕はそうは思わない。対策を国民の自主性に頼っている以上、いい状態が続けば当然自粛は緩む。いったん市中に多くのウイルスが出回れば、あっという間に広がることは3月、7月に経験した通りだ。
今は北海道を除き、野外活動に適し、換気も簡単な心地よい気候だ。
これが寒くて満足な換気ができなくなるとどうなるか? そこからは再度指数関数的に患者数が増加する可能性がある。
検査数が増やさず、濃厚接触者追跡に比重を置かざるをえない日本では、いったん市中感染が広まれば後は自粛するしかない。
以前から僕が予想している「自粛によって感染爆発は押さえられるが、経済的損失は巨大なものになる」との状態になることを懸念している。

今日の記事では日本とヨーロッパでの違いをまとめてみた。新規感染者数のあまりに大きな差をみると、やはり日本人はうつりにくいんじゃないの?という気もするし、もちろんその可能性もあるのだが、今のところは真面目な国民性や同調圧力で説明がつきそうだ。
ヨーロッパは別次元だが、たとえばヨーロッパのように国境を開いていないオーストラリアの感染者数は日本と大差ない。これは感染ペースの差異が人種差による違いではないことを示唆しているように思える。

今後、GoToEATの影響や寒さによる換気不足の影響がどうでるか。
遅くても来月中にはみえてくるはずだと考えている。


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内山 直

作家、医師、医学博士。
1968年新潟県新潟市に生まれる。新潟大学医学部卒業、同大学院修了。
2004年に独立し自分のクリニックを立ち上げ、「行列のできる診療所」として評判を呼ぶが、その後アーリーリタイアメントを決意。
2016年2月、クリニックを後輩医師に譲りFIRE生活を開始する。
地方都市でゆるゆると生息中。

「お金、地位、美貌」で得られる幸福はたったの10%で遺伝が50%とされています。
残りの40%に目を向ければ、幸せはすぐにやってくる!をキャッチフレーズに幸福の啓蒙活動を継続中。

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