運動の秋。速く走るコツとは? 10年前の長男とのエピソードを紹介する。


運動の秋。
子供たちの運動会で、一番記憶に残っているのが、10年近く前、まだ長男が当時小学校2年生だったときのもの。
このエピソードは、当時、僕がやっていたクリニックのホームページに書いた。
気にいっているので、今日はその時の記事を転載する。


先週末、長男が通う小学校の運動会がありました。
現在2年生の長男は運動が大の苦手。
去年の運動会でも4人中、3位に大きく引き離されての4位でした。
事前の予行練習では、いろいろな組み合わせで走ってみたけれど、いつもビリだったと言っていたので、おそらくクラスで一番足が遅いのでしょう。
完全に、父親似です(笑)。

運動会まであと一か月となった4月の下旬、「そろそろ運動会だから、走る練習でもする?」と声をかけてみたのですが、答えは、「どうせ速くならないから、練習したくない」と、かなり消極的。
自分は運動には向いていない、と完全に決めつけてしまっているようでした。

無理やり練習させるのもどうかと思い、とりあえずほうっておいたのですが、5月の中旬、本番まであと10日という段階になって、突然、「やっぱり練習がしたい」と言い出しました。
理由を聞いてみると、足の遅さを同級生にしつこくからかわれ、くやしい思いをしたのだとのこと。やる気になったのは、親としてはうれしいけど、しかし、たった10日間では ・・・。

「前から父さんは練習しようって言っていたのに、お前が嫌がったんだぞ」
とにらみつけると、長男はそれまでの無気力な態度を反省してか、小さくなっています。
「もう時間がないから、練習は毎朝する。遅くても6時までには起きて、起きたら父さんを起こしにくること。自分で起きられないなら、練習はしないからな」
少し厳し目の条件にもかかわらず、「うん」と勢いよく首をたてに振る長男。
ほほう、本当にやる気なんだな ・・・。

たかが徒競走、されど徒競走。いろいろコツもあるに違いないと思い、本屋さんに行ってみました。
そこでみつけた本は、ずばり、
「かけっこが速くなる 1週間おうちレッスン (主婦の友社 刊)」
というもの。
ざっと目を通して見ると、腕の振り方、足の運び方などの基本に加え、指導のこつが細かく解説されています。
しかも、「運動会まで1週間しかなくても、練習で走りは変わってきます」とのこと。
これはよさそう、と早速購入してみました。
ところが、家に帰ってからしっかりと読んだら、最後の方にこんな一文が。
「タイムに結果がでるまでは、1~3か月は必要です」
がくっ ・・・。
ということは、1週間で走りは変わるけど、タイムは縮まないってこと?
それは最初に書いてほしかった ・・・。

しかし、本人がやる気になっている以上、私の方から、「10日じゃ無理みたいだよ」 とあきらめるわけにもいきません。
「結果じゃないぞ! 努力の過程が大切なんだぞ」 と4位に終わったときのためのフォローをさりげなくつけ加えながら、早朝練習を開始することにしました。

まずはスタート。
ポイントは、前ではなく前斜め下をみることと、小幅に足を運ぶこと。
そして、スピードがのってから初めて、視線は前方にうつし、歩幅も広めにシフトするのだそうです。
なるほど、言われてみればその通りだけど、きちんと整理して考えたことはありませんでした。
やはり、本を買ってよかったみたい。

スタート練習は短期間でも結果につながりやすいはずだと考え、かなりの時間をさきました。
「位置について、用意」 で重心を前にもってくる、といった当たり前のことも、子供には難しいらしく、腰が引けたり、スタートと同時に体がのけぞったり。うむむ、道は険しい ・・・。

走るフォームに関しては、まずは矯正しやすい腕の振り方から指導をはじめ、まあまあできるようになってから、足の運び方を教えました。
長男の場合、後ろの足はしっかり蹴り上げているのですが、前の足があまり伸びず、結果として、ドタドタ、という走り方になっています。
本によると、これは腿前面の筋肉が弱い子の特徴とのこと。
10日間で効果がでるかは疑問でしたが、とりあえず腿上げを毎日の練習に取り入れるようにしました。

意外とうまくできないのが、ゴール・イン。
ゴールを駆け抜けるのではなく、ゴール・ラインのところでチョコンと止まってしまうのです。
「勢いがあれば、ゴールで止まれるわけがない。ゴールで止まってしまうのは、ゴールの前からスピードを落としている証拠」 と説明すると、そのときはゴールを駆け抜けるのですが、またすぐに、もとの「チョコン」に戻ってしまいます。
これはセンスの問題なのか、それとも闘争心が足りないのか ・・・。

そんなこんなの練習の日々。結局、運動会当日まで、朝起きられず練習を休んだのは、風邪をひいた1日のみ。
もともと決して朝に強いタイプではないにもかかわらず、毎朝、しっかり自分で起きて、私を起こしにくる長男の健気さに軽く感動を覚えながら、晴れた日は近所の公園で走り込み、雨の日は軒下でのスタート練習を、10日間、みっちりと続けました。
長男もがんばったけど、毎朝練習につき合った私も偉い!
誰もほめてくれないので、自分で言っておきますね(笑)。

そして、当日。
朝の練習を始めた後も、学校での予行では、やはり毎回4着だったとのこと。
もちろん4人いれば誰かが4着になるわけですから、それは仕方がないことなのですが、これだけ練習をしたのですから、なんとか3着に滑り込んでほしいと思うのが親心。
「結果じゃないからな。練習した成果を出し切るよう、がんばることが大事なんだからな!」 と毎日繰り返してきたフォローの言葉をもう一度かけて送り出し、私は応援のため、ゴール近くに陣取りました。

低学年、50m徒競走。
1年生が競技を終え、2年生の部が始まりました。
何を基準に走る順番が決まるのかはわかりませんが、長男は前から5番目の組。ゴールのあたりからでも、緊張した様子が見てとれます。
そして、いよいよ、その時が。
「位置について、用意」の掛け声。
続いて、ピストルの音。

スタートは横一線。
去年、1年生の時は、この時点で明らかに出遅れてしまったので、ここまでは順調です。
しっかり前をみているし、腕もふれている。
腿の上がりも長男にしては上出来です。
そして数秒後、20m地点のあたりから、なんと長男が他の子よりも体一つ前にでてくるではありませんか。

(あれ、抜けてきたぞ)
まさかの展開に親の方が驚いてしまいました。
長男は相変わらず、前を見据え、真剣な表情で走っています。
少しずつ近づいてくるゴール・ライン。
ここで例の、チョコンと止まってしまう癖がでなければいいけど ・・・。

「止まるなよ! 駆け抜けろ!!」
練習のとき繰り返し伝えたその言葉を、気がついた時には大声で叫んでいました。
その声が届いたわけではないでしょうが、そのまま一気にゴールを駆け抜ける長男。

「やった!」
なんと、まさかの1着!
今まで、3着にさえなったことがないのに!
私の方が興奮のあまり、ガッツポーズなんぞをとってしまいました。
いやあ、本当にがんばらせてよかった!
早起きにつきあってよかった!(眠かったけど)。

その日の夕食、私はビール、長男はノンアルコールの甘酒で(なぜか好物なんです)祝杯をあげました。
長男は興奮さめやらぬ様子で、日焼けして赤くなった顔を、さらに紅潮させて話しかけてきます。
「がんばれば、速くなるんだねえ」
もちろん1着になったのは素晴らしいことですが、肝心なのは順位ではなく、苦手な分野であっても、真面目にがんばれば上達するのだということを、長男が身をもって感じてくれたこと。
私の方も上機嫌で、「うん、そうだね」と返します。
「これで短距離はばっちりだから、次は長距離だなあ」
そうか、そうか。
「秋にマラソン大会があるから、がんばるね」
よし、その調子だ。
「それでね、父さん。朝の練習、マラソン大会まで続けようと思うんだけど」
えっ? それはどういうことかな?
「今から練習しておけば、マラソン大会でも、すごく速く走れると思うんだ」
つまり、秋まで6時起きってこと? いや、それはちょっと ・・・。
躊躇する私をよそに、妻が長男に加勢します。
「そうね。せっかく走るフォームがきれいになったのに、忘れたらもったいないものね」
・・・ あのね、君、他人事だと思って。
とりあえず、しばらくは休んで疲れをとろうということで、能天気な母子を説得しましたが、今後、どうなりますことやら。
いやはや、早起きはそろそろ容赦願いたい ・・・。

父親稼業も中々大変でございます。
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これはまだ僕がアーリーリタイアなど考えてもいなかった頃のエピソードだ。
あれから早8年。長男はこの春から高校に通っている。
たまに一緒にジョギングをするが、僕はもうかなわない。
子供たちはあっという間に大きくなってしまう。
今この時を大切にしなければ、と気持ちを日々新たにしようと努めている。

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秋の甘味。
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内山 直

2016年、47歳でセミリタイア。地方都市でゆるゆると生息中。
「お金、地位、美貌」で得られる幸福はたったの10%で、遺伝が50%。
残りの40%に目を向ければ、幸せはすぐにやってきます!

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