新型コロナウイルス。ここまでのまとめ1


新型コロナウイルスが今後日本でどのように感染を広げていくか、自分なりに考えてみたい。
それに先駆けて、今までの自分がどのように予想してきたかを振り返りながら、今までの経過を振り返ってみる(何らかのヒントがみつかるかもしれない)。
僕が初めてブログで新型コロナに言及したのは4月10日の「医師の端くれとして、新型コロナウイルスについて思うこと」。
地方都市にすんでいるのに2月下旬から外出自粛を始めたぐらいだから、もちろん関心はあったのだが、感染症専門医でもない僕が安易に発信していいのだろうかという逡巡があった(まさかツイッターなる場所では医者以外の有識者も入り混じって激論が交わされていることは、この頃は知らなかった)。
この頃から日本で感染が広がらにくい主な要因はマスクなどの生活要因だと考えていた。以下引用。

なぜ日本では感染が今のところ、欧米と比し拡大が抑えられているのか?まず、単純に人種差である可能性もあると思う。中国との往来が多いので、一定数が類似ウイルスに対する抗体をもっていた可能性も否定はできない。ウイルスの型が違うことも指摘されている。
また、BCG接種が有効だという意見もある。BCGが行われていない欧米諸国では重症化しやすいというのだ。これも可能性はあるし説としてはおもしろいが、ちょっと信じがたい気もする。
しかし日本での拡散スピードが少ない一番の理由は、やはり生活スタイルだろう。平時でも手洗いをするし、レストランではおしぼりが出てくる。屋内では靴を脱ぐなど、清潔な環境で生活している。
無症状であっても感冒流行期には予防的にマスクをする習慣がある。握手、ハグなどといった身体的接触は少ない。


その後、5月29日の時点でファクターXはマスクとの結論に至っている(日本はなぜ感染爆発を逃れられたのか?~新コロのファクターXに迫る
当時の乏しいデータの中から「日本では感染者数は少ないものの、どうやら致死率はあまり変わらず、であればファクターXは生活習慣などで十分説明がつくと考えた。以下引用。

Xファクターに関してまとめる。
1、Aの「生活様式、クラスター班」の影響はまず間違いなく大きく、Bからは「肥満の少なさ」が利点になっている可能性が高い。
2、Bの肥満以外、すなわち人種、免疫、BCG接種といった要素が影響している可能性は否定できないが、今のところそれを示唆するはっきりしたデータや医学的知見はなく、また、それなしでも十分に説明可能である。日本とドイツの致死率の近さを考えれば、関連がない可能性が高い。
3、ウイルスの遺伝子変異によるものとは考えにくい。
やはり特筆すべきはマスク文化だろう。
流行の初期から、行政からのアナウンスや規制なしで、多くの無症状感染者がマスクをしていてくれたのだ。


その後6月7日、自粛を嫌う人たちが「スウェーデン万歳」と言い始めたことに苛立って書いたのが「失敗したスウェーデンから学ぶ適正な自粛レベル
スウェーデンは決してノーガードではなく、考えようによっては日本よりよほど厳しい対策をとっていると指摘した上で、下記のように書いている。

スウェーデンはいまだにマスクをしていない人がほとんどで、これが最大の失敗だと僕は捉えている。
なぜガイドラインで、マスクの着用を求めなかったのだろうか?
それを加えさえすれば、実効再生産数が1以下になった可能性は大いにあったのに。

この考えは今も変わらない。そしていまだにマスク非推奨に固執するテグネル氏には怒りさえ覚える。
翌日の6月8日の記事は「なぜ東南アジアでは新型コロナウイルスの感染者が少ないのか?
これはやはりネット上で、「東南アジアでも感染が広がらないくらいだから、アジア人はコロナに強いんだ」と吹聴する人が多いことに苛立って書いた(この頃は苛立ってばっかりだね)。
ベトナムについての個所を引用する。

ベトナムはさらに見事な対応をしている。
3月18日からすべての外国人に対するビザ(査証)の発給を停止(このときの感染者数は50人)。
3月22日にはすべての外国人の入国を停止(感染者96人。ちなみに日本が米英からの入国を禁止したのは4月3日)。
3月24日、ホーチミン市は席数の多いレストランなどに対し、同日午後6時以降の営業停止を指示。
3月26日、3月28日から4月15日の期間、外出を最大限制限、商業サービス活動の休止などを指示。
とすべてが早い。
さらに見事だったのが感染者の追跡だ。
感染者との濃厚接触者はすべて政府の用意した施設で隔離。さらに濃厚接触者の接触者までも自宅隔離(アプリでの監視あり)。
SARSや鳥インフルエンザで苦しんだ経験が、しっかりと生かされていたというわけだ。
ベトナムではここ1カ月間、国内での新規感染者は報告されていない。死者数はゼロのまま。となると欧米株は水際で止めた可能性が高い。

見事の一言。日本とは端から能力が違うのだ。
いまだにこの点はあまり理解されていなくて、PCR検査さえ拡充すれば日本でも新型コロナを完全に封じ込めると主張している人が多い。
残念ながらNOだ。
接触追跡と強制隔離ができない日本では、封じ込めは大変に難しいと考えざるを得ない。

6月11日には「新型コロナウイルス。今後の展開を予想する」との記事を上げている。内容を検証してみる。

感染封じ込めに成功した国や地域、台湾、香港、ベトナム、ニュージーランドなどは今後も安泰だろう。
うまくいったのはたまたまではない。行政の迅速な判断と、綿密な追跡・調査機能があった。今後、国境開放に伴っての再流入に備えて、その優れたノウハウをさらに強化しているはずだ。
ちなみにニュージーランドは2週間以上新規感染者ゼロが続いているが、少しでも怪しいとPCR検査になるので、いまだに1日平均2000件以上PCRを回しているとのこと。人口は日本の20分の1だから、日本に換算すると1日4万~5万件ということになる。
今週の月曜日にはついにすべての規制を廃止。国境は閉じたままだが、国内旅行、コンサート、スポーツ観戦もコロナ前のように、自由に楽しむことができる。
中国も見事に制御した。今でも多少新規感染者がいるとはいえ、人口当たりで考えれば限りなくゼロに近い。
強権国家の実力をまざまざと見せつけられた思いでいる。

当時の状況を正確に書いていると思うし、予想も当たっているようだ。日本についてはこう書いている。

日本には数々の財政的・法的・歴史的・文化的弱点がある。
日本が第1波にうまく対応できたのは、元々もっていた生活習慣、クラスター班の活躍、民間に早く広まった危機感、そして同調圧力だ。
それでも実効再生産数がはっきりと1を下回ったのは、4月の最初から緊急事態宣言が一部地域で解除された5月15日頃まで。わかりやすくいえば、緊急事態宣言発出の少し前から一部地域で解除されるまでの1カ月半しかなかったことになる。
3月下旬や、5月中旬から現在までの自粛レベルでは、感染収束には至らない。
東京ではいまだカラオケボックス・ライブハウス・飲食を伴う接客業に休業要請がなされたままだ。これが解除され、さらに自粛ムードが弱まれば、実効再生産数は再び1を上回るだろう。
今月中旬以降は首都圏から地方への移動制限も弱まる。
東京でいつまでも感染がくすぶり、時折それが地方に飛び火するという展開を個人的には危惧している。

この懸念が記事を上げた3週間後の7月に現実となるのは、皆さんもご承知の通りだ。
翌日の6月12日にはちょっと変わった記事を上げている(久々に読み返したら笑ってしまった)。効果を最大限にするための「新しい生活様式」とは

専門家会議による「新しい生活様式」があまりにも複雑だ。このくらい単純でいいと提言している。
1.Mask 屋内では飲食時以外、マスクを着用(飲食店での調理・接客時も)。
2. Open Air できれば活動は屋外で。屋内では換気の徹底を。
3. Social Distanceソーシャル・ディスタンスの確保(最低1m、できれば2m)
4. Tele‐work テレワーク、遠隔授業の活用
これだけでMOST(最大限)の効果が得られます!

ちなみにこのときすでに「夏の流行」を予想している。

秋~冬に警戒が必要とされる第2波だが、まずはすぐ先の夏が心配だ。
新型コロナウイルスは多くの他のウイルス同様、高温、湿気、日光に弱いが、それらの要素はあくまでも屋外の話。
冷房の効いた屋内ではすべて消えてしまう。
現にインフルエンザも、東南アジアでは乾期でなく雨季に流行し、これは屋内に人が集まるため、接触感染が増えるのが理由と推測されている。
今までクラスターとなった場所はライブハウス、ホストクラブ、ジムなどいずれも屋内であり、高温、湿気、日光のいずれも期待できない。
暑さから十分な換気を怠るリスクは、新型コロナウイルスの第1波が起きた3月や今頃より高くなりそうだ。



この後も6月の間に新しい会食様式を提言したり(これは読売新聞に載った)、新型コロナでの感染致命割合(IFR)を世界に先駆けて計算したりとアクティブに発信をするのだが、ずいぶん長くなってしまったので省略する。
明日は7月以降の経過を振り返る予定だ。


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内山 直

作家、医師、医学博士。
1968年新潟県新潟市に生まれる。新潟大学医学部卒業、同大学院修了。
2004年に独立し自分のクリニックを立ち上げ、「行列のできる診療所」として評判を呼ぶが、その後アーリーリタイアメントを決意。
2016年2月、クリニックを後輩医師に譲りFIRE生活を開始する。
地方都市でゆるゆると生息中。

「お金、地位、美貌」で得られる幸福はたったの10%で遺伝が50%とされています。
残りの40%に目を向ければ、幸せはすぐにやってくる!をキャッチフレーズに幸福の啓蒙活動を継続中。

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