あれから抗原検査はどうなった? 最新の知見をまとめてみた。


今日は僕がツイッターで再三発信している、抗原検査について新しい知見を紹介したい。
まずはこの図をみてほしい。
En7zNHBW4AEDN7T.jpg
低感度検査が抗原検査、高感度検査がPCR検査と考えて頂いていい。感染者にウイルス量が多く、感染性が高い時期なら抗原検査でも十分捉まえられるのだ。
黄色で塗られた期間はPCR陽性、抗原検査陰性となるが、すでに感染性はほぼないので捉まえる意義はない。
抗原検査による唯一の欠点は赤のところを捉まえられないことだが、これはごく短期間にすぎない。
それよりも安く、頻回にでき、結果判明までの時間が短いという利点のほうが、スクリーニング目的と考えれば適しているというわけだ。

第一人者、Mina先生によるTIME誌記事。
https://time.com/5912705/covid-19-stop-spread-christmas/

抗原検査の感度と特異度の低さは解決しました。抗原検査は現在ウイルスを広げているほぼすべての人を捕まえるのに十分な感度があります。Abbott BinaxNOWの偽陽性率は1/200。確認迅速検査を追加すると特異度は99.9%を超える可能性があります。


この後もたびたびこの特異度という言葉が出てくる。これは簡単に言うと「偽陽性にならない率」。
99%もあればすごいんじゃない?と感じる人もいるかもしれないが、これをスクリーニングに使うことを想像してほしい。
100万人が検査をうけ、偽陽性が1%もあったら1万人もの人が感染をしていないのに感染者として隔離されることになる。大混乱だ。
偽陽性は限りなく0に近づける必要があるのだ。

同じくMina先生によるツイート。
https://twitter.com/michaelmina_lab/status/1330209322056478724

迅速検査が機能し、ウイルスと戦うための重要な武器になる可能性を示す素晴らしい研究。高ウイルス(Ct値 < 25)897人のうち888人が迅速検査で検出されました
感度:99.1%
特異度:99.5%
偽陽性が0.5%ありますが「陽性者は他系統キットで再検」とのルールを作れば問題なし。

いずれも、抗原検査はPCR検査とくらべ精度が落ちることは認めながらも、感度、特異度とも申し分ないレベルに達していると説明している。
最後の部分を補足すると、陽性が出た場合違う系統の検査(それも同じ特異度と仮定する)をうけ、ともに陽性の場合に限り陽性というルールにすれば、偽陽性率は0.0025%にまで低下するということ。
これなら十分に低いと言っていいはずだ。

ちなみに欧州委員会は18日Covid-19診断の抗原検査ガイドラインを発表した。
https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/ip_20_2047
EUの検査能力向上を目指し約44億円を割り当てる。PCR検査と比べて感度は劣るが、必要機器のシンプルさ、高度なスキルを持つ検査官が必要ない事、迅速安価で医療システムへの圧迫を和らげるのにも役立つと推奨している。

抗原検査の精度に関する論文(プレプリント)。
https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2020.11.12.20230292v1
5つの製品で特異度は98.53%から100%と記されている。
十分高いとまではいえないが、前述した陽性が出たら他系統のキットで再検するルールをつくれば、特異度(偽陽性)の問題はほぼクリアしたと言えそうだ。

一流紙、Science Advances に載った最新の論文。
https://twitter.com/3Cj0MeO8oomX9C6/status/1330335189264904193
効果的な防疫に重要なのは「検査の頻度」と「判定にかかる時間」であり、「感度の高さ」の意義は大きくない、と結論づけている。
「1回こっきりのPCR検査」より「頻回抗原検査」のほうが有効なのだ。そしてこれなら、なぜかなかなかPCR検査を拡充できない日本でもできるはずだ。

ちなみにアメリカの感染症研究の第一人者、ファウチ博士もインタビューに答え「皆が家で自己判定できるようにすべき」と答えている。
下記ビデオで10分頃から話がはじまるので、興味のある方はぜひ。
https://www.msnbc.com/mtp-daily/watch/dr-fauci-we-should-be-flooding-the-system-with-tests-96312901982
ファウチ氏のお墨付きも出た以上、もはやこの手段をとらない理由を探す方が困難だ。

ニューヨークでは入店前に抗原検査をうけ、陰性者のみが入店できる抗原検査バーが盛況とのこと。
https://www.fnn.jp/articles/-/111607
ウェイトレスは看護師のコスチュームで……というノリではない様子。

安価な抗原検査による感染抑制は、バイデン氏が打ち出した対新型コロナ対策にも盛り込まれている。
https://joebiden.com/covid19/
アメリカでは現実の選択肢になりつつあるのだ。

僕としては、日本では抗原検査キットを2-300円で買えるようにして、活用は民度の高い国民の自主性に任せればいいと思っている(ここに硬直化した保健行政をからめるとろくなことにならない)。
再生産数を少しは下げられて、特にデメリットもない気がするのだがどうだろう。

しかし残念ながら抗原検査によるスクリーニングに関しては、政権が興味を示さないどころか、報道さえろくにされないのが日本の現状だ。
完全に世界から置いてけぼり。
なぜこうなってしまうのか、僕には不思議でならない。



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内山 直

作家、医師、医学博士。
1968年新潟県新潟市に生まれる。新潟大学医学部卒業、同大学院修了。
2004年に独立し自分のクリニックを立ち上げ、「行列のできる診療所」として評判を呼ぶが、その後アーリーリタイアメントを決意。
2016年2月、クリニックを後輩医師に譲りFIRE生活を開始する。
地方都市でゆるゆると生息中。

「お金、地位、美貌」で得られる幸福はたったの10%で遺伝が50%とされています。
残りの40%に目を向ければ、幸せはすぐにやってくる!をキャッチフレーズに幸福の啓蒙活動を継続中。

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