新型コロナウイルスのスクリーニング検査として僕が推している抗原検査について解説する。
よく知らない人はまずこちらを読んで欲しい。抗原検査についての基本的な考え方がまとめてある。
なぜ日本では頻回抗原検査が有用なのか。とことんわかりやすく解説してみる!
抗原検査はPCR検査より相当感度が低い。
まずはっきりさせておきたいのは、治療目的の診断にはPCR検査が向いているということ。発症したときに必ずしも検体内のウイルス量が多いとは限らないから、抗原検査では見逃してしまう可能性がある。
一方でスクリーニング目的ならどうだろう?
問題なのはその人が周囲にうつす危険性があるかどうかだ。ないのであれば隔離する必要はない。
ではどの程度のウイルス量で感染性があると考えるべきなのか?
これについては最近知見が積み上がってきている。
まずは一流紙NEJMに先日掲載された韓国からの報告。
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMc2027040?query=TOC「ウイルス培養陽性はPCR検査でCt値が28.4以下のもののみ」となっている。RNAコピー数に換算すると数万以上ということになる。
(Ct値とRNAコピー数との関連は下記記事を参照してほしい。
https://www.thermofisher.com/blog/learning-at-the-bench/qpcr-basic37/ )
これならかなり出来の悪い抗原検査キットでも十分検出できる。
日本を代表する富士レビオエスプラインは感度が低すぎると評判が悪いが、それはあくまでもPCRと比べた場合の話で、データをみると1600コピー以上ではPCRとの一致率が100%となっている。
https://www.info.pmda.go.jp/tgo/pack/30200EZX00026000_A_01_10/数万コピーあればバリバリに陽性がでると考えてほぼ間違いない。
となると「培養が難しいだけで、本当は陰性でも感染性はあるんじゃない?」と考える人もいるかもしれないが、この論文では発症から12日目まで培養陽性が出ている。
新型コロナでは発症から10日たてばほぼ感染性はないとされており、発症者の隔離義務も10日間だ。
12日目まで陽性例が出るということは、培養試験が感染の有無を知る指標としてうまく機能していることを示唆する。
次はこちらの論文。
https://www.nature.com/articles/s41467-020-20568-4さきほど紹介したものよりやや大きな数字で、RNAコピー数10万以上でようやく培養可能となっている。これに関しても発症後20日まで培養陽性がでているので、培養技術が低いわけではなさそうだ。
Ct値に換算するとやはり28以下で、上の論文と同じ数字が算出される。
僕の知る限り認可を受けている抗原検査はすべて、ウイルス量が多い検体での感度は100%に近い。
つまり
「新型コロナウイルスを人に感染させるには相当量のウイルスが必要であり、抗原検査でも容易に検出できる」
ことになるのだ。
感染を周囲に広げるのは感染者の2割程度との従来からの知見とも合致する。
こちらの論文は査読前だが、PCR検査陽性例でのCt値、培養の可否がきれいにまとめられている。
https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2020.11.18.20234104v1.full.pdf
培養ができて抗原検査陰性だったのはオレンジの部分だけ。ごくわずかであるとわかる。
特にCt値25以下だと897人のうち888人が迅速検査で検出されている。
ここでよくある意見が「それでも見逃しは少しはある!」というもの。
その通り。ある。
あるいは「感染初期のウイルス量が増える前なら陰性になってしまう」との意見。
これまたその通り。
しかしそれはPCR検査でも同様なのだ。抗原検査よりは少ないが、一定数の見逃しがある。だからこそ「頻度」が重要になってくる。
現実問題として、国民の多くが週に複数回PCR検査を受けることはできない。例えできたとしてもとてつもない費用がかかるし、どこかの過程で目詰まりがおき、結果がでるまで日数がかかる事態も容易に想像できる(昨夏のニューヨークのように)。
しかし抗原検査なら1回200-300円ですみ、家庭で診断できてしまうのだ。
ちなみにこの図はPCR陽性例での培養結果。陽性は■のみ。
https://twitter.com/michaelmina_lab/status/1350703490142773258
PCR検査をスクリーニングに用いると、感染性のない膨大な数の人(
〇)が隔離されてしまうことになる。
「抗原検査はPCR検査より精度で劣るが、感染力のある人を捕捉するには十分な感度である」この見解が正しいことを示す知見が積み上がってきていると言ってよさそうだ。
ちなみに日本で承認されている抗原検査キットは下サイトでチェックできる。
意外と種類も多く高感度のものも多いので、ご興味のあるかたはぜひ。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_11331.html明日は最近日本で生じた大きな(そしてほとんど報道されない)動きについて触れる。
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