評判が悪い富士レビオの抗原検査「エスプライン」のデータを冷静に分析してみる


予告どおり、富士レビオの抗原検査キット「エスプライン」について考えてみる。

このキット、ひどく評判が悪い。実は僕自身も手厳しくツイートしたことが過去にはあった。
以下は添付文章からの(要約した)引用。
https://www.info.pmda.go.jp/tgo/pack/30200EZX00026000_A_01_10/

国内臨床検体を用いたRT-PCR法との試験成績は陽性一致率37%試料中の換算RNAコピー数に応じて比較すると、100コピー/テスト以上の検体に対して一致率83%、30コピー/テスト以上の検体に対して一致率50%でした。
行政検査検体を用いた試験成績陽性一致率66.7%。試料中の換算RNAコピー数に応じて比較すると、1,600コピー/テスト以上の検体に対して一致率100%、400コピー/テスト以上の検体に対して一致率93%、100コピー/テスト以上の検体に対して一致率83%でした。

臨床検体での陽性一致率37%、行政検査検体での陽性一致率66.7%。ぱっと見ると「全然ダメじゃん!」と言いたくなる。
このキットはその後臨床の現場で「診断目的」に利用され、実際に多くの偽陽性、偽陰性が出て問題視された。当時から抗原検査に注目していた僕にとっては、ため息をつきたくなるような事態だった。
しかし認めなければならない。この頃の僕は「診断・治療目的」と「公衆衛生上の目的」とをしっかり分けて考えていなかったのだ。

抗原検査はPCRよりはるかに感度が低い。臨床の現場で使えば、抗原検査で陰性だった人が後のPCR検査で陽性となってまったく不思議はない。
そもそも抗原検査を診断目的で使ってはいけないのだ。
あくまでも使用は「公衆衛生上の目的」すなわち無症状者の「スクリーニング」であるべきで、そうすればPCRと比較しての偽陰性が気にならなくなる。
気にならなくなるどころか、周囲への感染性をすでに失った人まで端から拾い上げてしまうPCR検査にくらべ、感染性がある程度ある例しか捉えられない抗原検査は「塩梅がいい」とさえ言えそうだ。

ではエスプラインの感度を見返していこう。
注目すべきはRNAコピー数が1,600以上の検体では100%陽性が出たという点だ。
PCR検査でのCt値に換算すると34以下。そして一昨日書いたとおり、どうやら感染性のある人のCt値が28以上であることは稀らしい。
となるとエスプラインの感度で「十二分」ということになるのだ。
そしてあらためてみると、多くの人が高評価を与えるアボット社の製品もエスプラインと比較してそう優れているわけではないらしい。
たとえばこちらの論文ではCt値30以下での感度は93%。
https://academic.oup.com/jid/advance-article/doi/10.1093/infdis/jiaa802/6061974
エスプラインよりはるかに劣る結果となっている。

かたや偽陽性はどうか?
上述した2種類の検査検体を単純に合算すると、145例中1例のみ。
しかもその1例はあきらかな陽性例ではなく、判定が難しく、本来なら再検をすべきだったのだが、検体量が足りなかったためそれが叶わず、やむなく陽性にしたとのこと(下記資料16頁)。
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kenkouiryou/tyousakai/dai22/siryou1-4.pdf
そのときの写真を公表し「このような微妙なラインは陰性」として周知すれば、元々少ない偽陽性はさらにゼロに近づくのではなかろうか?
昨日解説した「新型コロナウイルス感染症病原体検査の指針」によると抗原検査陽性例はPCR検査で再検となっているが、個人的には「他系統の検査キットで再検」すべきと考える。現場目線で考えれば、PCRの再検結果がでるまでの1日の間、被検者をどう隔離するかでひと苦労することになるだろう。
迅速抗原検査で再検し、再度陽性の場合のみPCR再検とすればいい。現場の負担が減るし、PCR資源の温存にもつながる。
それにそもそも(繰り返し書いてきたとおり)PCR検査ではすでに感染性がなくなった多くの人を捕捉してしまう。スクリーニング目的でいえばそれは「偽陽性」なのだ。抗原検査でわずかに生じる(本来の意味での)偽陽性などかわいいものという気がする。

というわけで富士エスプラインの精度についてまとめてみた。そう悲惨なキットではないことがおわかり頂けただろうか?
このレベルの精度で扱いが簡単かつ低価格なキットが市場にばら撒かれたら、状況は一変すると期待している(それにはまだまだ時間がかかりそうだが)。 


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内山 直

2016年、47歳でセミリタイア。地方都市でゆるゆると生息中。
「お金、地位、美貌」で得られる幸福はたったの10%で、遺伝が50%。
残りの40%に目を向ければ、幸せはすぐにやってきます!

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