各都府県で始まろうとしている施設でのスクリーニング検査。PCR検査のほうが適しているって、ホント?


ちょっと古いが2月12日の赤旗より。
https://www.jcp.or.jp/akahata/aik20/2021-02-12/2021021201_01_1.html

新型コロナウイルスの感染症拡大に伴う緊急事態宣言が10都府県で延長され、高齢者施設や医療機関でのクラスター(感染者集団)が多発するなか、少なくとも18都府県が高齢者施設などでの社会的検査を実施し、今後、実施を計画している自治体は7県にのぼることが本紙の調査でわかりました。全国の半数を超える25都府県が社会的検査を実施または計画しています。自治体レベルで高齢者施設や医療施設などへの社会的検査とその計画が広がっていることが明らかになりました。


すばらしい。もちろん僕は大賛成だ。
しかしSNS上では一部の県がPCR検査ではなく抗原検査を選択したことに批判が集まっている。
……だろうね(苦笑)。
でもそれはおそらく間違い。この場合は抗原検査のほうがすぐれているのだ。

下は高山義浩氏による記事からの抜粋。
https://news.yahoo.co.jp/byline/takayamayoshihiro/20210217-00222551/

PCR検査で陽性となる人には、4つの類型があることが分かります。
第1類型は、「発症前の感染者 presymptomatic」です。とくに感染性が強く、活動性も低下していないので、感染拡大の主たる要因と考えられます。スクリーニングで最も発見したい人たちですが、陽性となる確率は(発症者ほどは)高くありません。
第2類型は、「症状を有する感染者」です。感染性も保たれていますが、症状を自覚しているので、活動を自粛しているのが一般的でしょう。この類型を発見したいのなら、スクリーニングではなく、「症状あるなら、病院に行きましょう」と呼びかけることです。
第3類型は、「感染性を失った既感染者」です。症状が遷延していることもありますが、もっぱら症状も感染性も失っています。しかし、ときに数週間にわたってPCR陽性が継続します。いまさら発見しても仕方のない方々です。
第4類型は、「無症候のままの感染者 asymptomatic」です。これは、濃厚接触者の調査などで発見されることがありますが、どれくらいいるのか把握することは困難です。若年者に多い印象ですが、高齢者が多かったダイヤモンド・プリンセス号の分析でも、17.9%が発症しないままだったと推計されています(Euro Surveill. 2020 Mar;25(10):2000180.)。


感染を広げないことが目的なら、第3類型を捕捉する意味はない。しかしPCRではここの(既)感染者をつかまえてしまうので、必要以上の「隔離政策」が必要となってしまうのだ。
そしてさらに留意してほしいのが、今が 感染収束期 であるということ。
収束期には新規感染者より感染後数週間たった人のほうが多い。すなわち第3類型の感染者の割合が非常に高くなってしまうのだ(ついてこれているかな?)。
片や抗原検査は第3類型はほとんど捉えない。第1類型、第4類型の捕捉はPCR検査に劣るが、排出ウイルス量が多い感染者は捉えられるし、収束期には第1類型の感染者は率として非常に少ない。それでも不安なら数日後にもう一度行えばいい。
逆にこれが感染拡大初期であれば、第4類型は少ないからPCRの高感度ゆえのデメリットは激減する。
感染拡大初期のスクリーニングにはPCRの利点が増すし、収束期には欠点が目立つことになるのだ。

さらに費用に目を向けよう。
神奈川県は3600か所余りの施設で働くおよそ10万8000人を対象に2週間に1回、計3回の検査を行うとのこと。
https://www.nhk.or.jp/politics/articles/statement/53471.html
その予算は32億円。
一方で和歌山県。
新たに入院・入所する人は症状の有無に関わらず全員に抗原検査。入院設備がある医療機関83施設に計2万7000人分、入所設備がある高齢者・障害者施設の計2170施設に計6万1000人分の抗原検査キットを配布する。
https://mainichi.jp/articles/20210215/k00/00m/040/149000c
その予算は8800万円。

検査数は神奈川県が3.7倍で、費用はなんと36.3倍。つまり検査あたりで約10倍の費用がかかる。
そこまでのお金と貴重なPCR資源を大量導入してまで、第3類型の感染者を大量に捕捉する意義がはたしてあるのだろうか、と甚だ疑問に感じている。
そしてそもそも本当に目詰まりなくこれだけのPCR検査ができるのか。
陽性者が出た場合、その周囲の一斉検査ができるか。それとも「陽性者は出たが、施設内に濃厚接触者はいないので問題なし」という検査をした意味がよくわからない説明が乱発されるのか。
ちなみにすでに感染性がない人ばかりが捕捉された場合、その人たちの隔離で収束するが、感染性が強い人が捕捉された場合、周囲には感染したてでまだ検査で検出できない人がいるため、その後もさらに陽性者が出る。
一見すると前者の方が成功にみえるが、意義があるのは実は後者なのだ。

そんなことを頭に起きながら、今後の動きを注視していきたい。



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内山 直

作家、医師、医学博士。
1968年新潟県新潟市に生まれる。新潟大学医学部卒業、同大学院修了。
2004年に独立し自分のクリニックを立ち上げ、「行列のできる診療所」として評判を呼ぶが、その後アーリーリタイアメントを決意。
2016年2月、クリニックを後輩医師に譲りFIRE生活を開始する。
地方都市でゆるゆると生息中。

「お金、地位、美貌」で得られる幸福はたったの10%で遺伝が50%とされています。
残りの40%に目を向ければ、幸せはすぐにやってくる!をキャッチフレーズに幸福の啓蒙活動を継続中。

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