前回からの続きで、コロナ禍におけるオリンピック開催について。
今日は選手へのスクリーニング検査について書く。
「アスリート・チーム役員公式プレイブック」より
https://gtimg.tokyo2020.org/image/upload/production/kv3qebn4sau52nc0it6q.pdf40p
私は抗原定量検査に使用する唾液サンプルを1つ提出しました。もし検査結果が陽性または不確定だった場合は、この提出した同サンプルが、PCR検査により分析されます。
とある。

どうやら選手に対する連日の検査はルミパルスという抗原検査らしい。
SNSで反響をチェックすると、ほとんどの意見が
「なぜPCRより感度の低い抗原検査を使うんだ~」
と否定的なものであった。
抗原検査と聞いただけで、条件反射的に「感度が低くて使い物にならない」という結論が出てきてしまう人が多いようで、いまだそれぞれの検査の特色が理解されない現状にため息がでる。
まず知って欲しいのは定量抗原検査と定性抗原検査キットは似て非なるものであるということ。
ウイルスの抗原を探知することに違いないが、オリンピックで使われる予定の定量抗原検査ははるかに高精度で、PCRに近い感度をもつ。
専門的になるが、ウイルスのRNAが100コピー程度検体中に含まれれば、問題なく検出できるようだ。定性抗原検査キットと比べ、一桁検出能力が高いと考えていい。
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1201971220306585そしてPCRと違いすぐに結果がわかる。実際の運用において結果待ちのため選手を閉じ込めておくのは難しいだろうし、自由にさせれば結果が出るまでの間に感染が広まる可能性がある。
定量抗原検査がそんなに便利なら、なぜいままでPCRの代わりに多用されなかったの?と疑問に思う人もいるだろうが、定量抗原検査には専用の読み取り機器が必要なのだ。
普通の病院にはこれがないため、結局はそれをもつ施設まで検体を送らざるをえず、結局PCRに近い時間がかかってしまう。
それならその場ですぐ結果がわかる定性抗原検査キットか、より感度が高いPCR検査のほうがいいわけで、定量抗原検査は中途半端で使い勝手が悪い手法になってしまうのだ。
そのような特性から定量抗原検査の出番は一か所で多くの人を検査する場所に限られ、そしてそのようなケースでのパフォーマンスは非常に高い。
たとえば日本では現在、もっぱら空港検疫に用いられている。定量抗原検査の特性を考えれば悪くない選択だ。
SNS上では空港検疫を抗原検査にしているから変異株が流入した、との批判もあるが、これもピントがずれていると思う。というのは、たとえPCR検査にしたって一定数の見逃しはあるし、現に検疫にPCRを用いている国でも変異株は流入している。
検疫に重要なのは検査手段ではなく、十分な隔離だ。
極端にいえば「隔離さえ十分に行えれば検査などしないでいい」とすらいえる。
そもそも検疫という制度は、14世紀にヨーロッパでペストが大流行した際、感染した街の港から来た船がベネチアに入港するときに40日間の海上での停泊が求められたのが最初といわれている。
検疫を英語でいうとquarantine。語源はイタリア語の「quaranta giorni」で「40日」。
検疫とは本来、一定期間の隔離を指す言葉だったのだ。
日本の検疫の問題は検査手法というより、ほとんどの入国者に対する隔離を「自主隔離の要請」レベルにとどめている点にあると僕は考えている。
閑話休題。オリンピックでの連日検査に定量抗原検査を用いるというのは妙案、というより、検査に詳しい人なら誰でも思いつく真っ当なアイディアだと僕は考える。
オリンピックに備えて読み取り機器をそろえるだけなら、貴重な国民の検査資源(PCR、定性抗原検査キット)を割り振る必要もない。
オリンピックの開催の是非については語りたくない。
「オリンピックなんてできる状況じゃない」という多くの国民がもつ懸念は僕も共有しているが、他方ではどうしてもアスリートたちの気持ちを思ってしまう。
もしこのまま開催されるなら、オリンピックが選手、関係者、そして国民にとって可能な限り安全なものになることを祈っている。
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