これを読んで懐かしい本の名前が頭に浮かんだ。積立NISAで買うべき投信は「全米株式インデックス・ファンド」。この投資をコツコツと継続すれば、20年経って振り返った時、どえらい差がつきます。株のリターンの方がお給料UPより速く伸びているから、「生活防衛」のために株を持っていないと大変なコトになるということを知っておいてください。
ベストセラー「21世紀の資本」からもわかる、蓄財する人の優位性
ちょっと話がずれますし、また、小難しくなってしまうのですが、近年、ベストセラーになり、世界中で物議をかもした経済書が、本章の趣旨を違う角度から説明してくれるので、最後に触れておきましょう。トマ・ピケティ著、「21世紀の資本(みすず書房)」です。
ピケティ氏は、税務当局のもつ納税記録に着目し、世界二〇か国以上のデータを過去二〇〇年以上にわたって収集することによって、壮大なスケールで富と所得の歴史を紐解き、経済的格差の実態を明らかにしました。
結論は、「富める者はますます富み、そうでない人たちとの格差は開いていく一方であろう」というもので、それをr>gという不等式で表しています。rは資本収益率のことで、株、債権、不動産といった資産から生まれる収益の割合です。一方のgは経済成長率で、労働者が実際の経済を成長させるスピードを指しますから、これは、労働所得の伸び率と考えてもいいでしょう。資本収益率は歴史上、おおむね四~五パーセントで推移しているのに対し、今後、世界の経済成長率は一~二%程度にとどまるだろうから、資本家と労働者との格差は広がる一方である、というのがピケティの意見で、大いに説得力があります。
著者本人を含め、多くの人は、弱者に逆転のチャンスがないなんてアンフェアだ、という感想をもつことでしょう。しかし、そこで思考停止に陥り、資産家の子供に生まれなかった我が身の不運を嘆いても仕方がありません。もしピケティの予言するとおり、r>gの状態が今後も続くと思うのであれば、自分自身の努力によって、さっさとrの側、すなわち、所有する資本の収益で潤う側に回ってしまえばいいのです。この章で述べた、高い貯蓄率と運用によって経済的自立を果たす、ということは、「21世紀の資本」的に言えば、gからrの立場に移るということに他なりません。そのような発想を持たず、稼いだ金額のほとんどを使いきってしまうような生活を続ければ、いつまでもg、すなわち経済の発展から年に一~二%程度の恩恵しかうけられない状態が続くでしょうし、早々とr側に移ったアーリーリタイア組との差は、広がる一方になってしまいます。
一般的な解釈とは大きく異なるのでしょうが、私は「21世紀の資本」からこのような教訓を得ました。そうか、若いうちから意識的に蓄財をして、さっさとrの側になってしまえば、残りの人生を有利な立場で送ることができるのだな、と。
例えば、二〇歳代の一〇年間、頑張って毎月一〇万円を貯蓄し(合計額一二〇〇万円)、そのつど運用に回せば、五パーセントの複利で利益を得た場合、四〇歳の時点で二五八二万円にまで増えていることになります(三〇歳で資金追加は中止)。つまり二〇歳代に貯めたお金は、四〇歳時点では倍以上に膨らむのです。同じように毎月一〇万円を、三〇歳代の一〇年間運用した場合、四〇歳時点での資産額は一五八五万円にしかすぎません。同じ月一〇万円、一〇年間の運用であっても、二〇歳代だと、三〇歳代で同じことをした場合と比べて、六割以上も価値が増すというわけです。
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内山 直
作家、医師、医学博士。
1968年新潟県新潟市に生まれる。新潟大学医学部卒業、同大学院修了。
2004年に独立し自分のクリニックを立ち上げ、「行列のできる診療所」として評判を呼ぶが、その後アーリーリタイアメントを決意。
2016年2月、クリニックを後輩医師に譲りFIRE生活を開始する。
地方都市でゆるゆると生息中。
「お金、地位、美貌」で得られる幸福はたったの10%で遺伝が50%とされています。
残りの40%に目を向ければ、幸せはすぐにやってくる!をキャッチフレーズに幸福の啓蒙活動を継続中。