人生相談の回答者さん。安易な回答をしていると、相談者の人生を破壊するよ!


紙の新聞をとる人が減っていると聞く。1か月で4,000円くらいかかるし、紙ごみの処理も面倒。おまけに今はネットで大体の情報は仕入れられるし、その方が早い。
僕も以前は数紙とっていたのが現在は一紙のみ。しかしこれまで止めることは考えていない。
朝、子供たちが朝食をとる傍らで、カプチーノを飲みながら紙面をめくるのは大好きな時間で、これがネット記事を見ながらとなると僕としてはしっくりこない。
そしてアーリーリタイア以降は時間がある分、以前よりじっくり紙面に目を通すようになった。
たとえば人生相談。以前は読み飛ばすことがほとんどだったが、最近は(僕が回答者ならなんて答えるだろう)と考えながら読んだりしている。
以下、とある日の人生相談から。

20代の男性。大学生です。自分の怠け癖を直したいと思っています。
昔から、好きなことにはのめり込みますが、興味のないことには全く身が入らず、嫌いなものから逃げたがる正確です。夏休みの宿題はいつも、休みの終わり頃に慌ててやりました。
勉強もテスト直前にならなければやる気が出ません。テスト直前でも、わからない問題にぶつかると集中が途切れてしまい、ゲームをやってしまいます。ゲーム機を手の届かないところに置いて勉強してみたら、不安になって逆に集中できませんでした。
(中略)
親からは「嫌なことから逃げるな」と言われます。自分でも、このままではもし希望通りに就職できてもすぐ辞めることをくり返してしまいそうで、ダメだと思います。
どうすれば気持ちを強く持って、怠け癖を直せるでしょうか。

一読して、「これは切実だな」というのが僕の感想。
大学生が新聞の人生相談に悩みを送るというのも不思議だが、この内容では友人に相談しても適切な回答はえられないだろう。目上の人となればますは親だが、相談を読む限り親は厳格なタイプのようで、相談者目線に立った対応をしてもらえていないようだ。
僕がまず考えたのは「ADHD(注意欠陥・多動性障害)」の可能性。新聞に相談するほど思い悩んでいながら、自分の力で改善できないということは、本人がもった素因が大きい可能性が高い。心療内科を受診し、もし僕が予想したとおりADHDの診断が下るようであれば、コンサータやストラテラの投薬によりQOLを大幅に上がられる可能性がある。
僕が相談者なら、心療内科受診を薦める内容になるだろう。

さて、そこで今度は、紙面に掲載された回答に目をやる。回答しているのは、作家・出久根達郎氏。
唖然とした。

怠け癖を直したい、と欲するのですから、あなたは救いがあります。
一番手っ取り早い方法は、まず親元を離れて自活することです。
(中略)
あなたはお金を稼いだ経験がないのでしょう。だから、お気楽なことを言っていられるのです。学生だから仕方ないとは言えない。
あなたの根本の短所は、想像力の欠如です。怠け者とはどういう類か、怠け癖がつくとどのような将来になるのか、少しでも考えたならわかるはずです。わからないようでは、大学生を名乗れない。恥ずかしい話です。その相談自体を恥と思いなさい。


根本に精神疾患がある可能性も否定できない相談者に向かい「相談自体を恥と思え」とは。第一、学業不振で悩む大学生に「家を出て自活しろ」という時点で無茶苦茶だ。
想像力が欠如しているのは相談者ではなく、出久根達郎氏のほうだと断じざるをえない。厳しいアドバイスは受け手のキャパをしっかり把握することが先決という、対人関係の基本がわかっていない。
この相談者がどれだけ傷ついたかと思うと、医師として胸が痛くなる。アホな回答は無視して、よりより生活に向けてのステップを踏めていればいいのだが。

しかしもちろん、こんなひどい回答だけではない。中にはうならされるような素晴らしいものもある。
明日は「お口直し」としてそちらを紹介したい。




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内山 直

作家、医師、医学博士。
1968年新潟県新潟市に生まれる。新潟大学医学部卒業、同大学院修了。
2004年に独立し自分のクリニックを立ち上げ、「行列のできる診療所」として評判を呼ぶが、その後アーリーリタイアメントを決意。
2016年2月、クリニックを後輩医師に譲りFIRE生活を開始する。
地方都市でゆるゆると生息中。

「お金、地位、美貌」で得られる幸福はたったの10%で遺伝が50%とされています。
残りの40%に目を向ければ、幸せはすぐにやってくる!をキャッチフレーズに幸福の啓蒙活動を継続中。

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