7年前の「院長ブログ」記事から転載。いやあ驚いた!
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映画「ローマでアモーレ」鑑賞記 (一部ネタバレあり)
先日、WOWOWでウディ・アレンの監督作品、「ローマでアモーレ」 が放送されました。私は大のウディ・アレン・ファンなのですが、同時に大の出不精でもあるため、映画館には中々足が向きません。本作品も公開時には見ることができなかったので、この機会にしっかり録画して鑑賞しました。
感想としては正直に言ってイマイチ。前作「ミッドナイト・イン・パリ」 が素晴らしかったため期待し過ぎたというのもあるのかもしれませんが、ストーリーも盛り上がりに欠けたし、ウディ・アレンならではのウィットに富んだ会話も今回はどことなく不調に終わったように思えました。
この映画では4組のカップル、夫婦が描かれており、共通点は場所がローマだというだけで特にお互いのエピソードが交わることなく、最後まで別々に描かれるという仕立てになっています。その中で気になったのが、一般人が突如有名になるというエピソード。
単なる平凡なサラリーマンであるレオボルド (ライフ・イズ・ビューティフルでアカデミー男優賞を受賞したロベルト・ベニーニが演じています!) が何の理由もなく注目されるようになり、マスコミに追い回されるわ、美女にはもてまくるわで狂乱の日々を過ごしたのち、ある日突然、やはり何の理由もなく忘れられてしまうというナンセンス・コメディなのですが、見ていて何度も既視感に襲われたのです。その理由を映画を見終ってから考えたところ、一作の短編小説にいきあたりました。
筒井康隆著、「おれに関する噂」。
私は中・高校生の頃、おそらく書籍はすべて読んだであろうというくらい熱心な筒井康隆ファンなのですが、映画でのそのエピソードが筒井康隆の昔の小説に酷似しているのに気づいたのです。設定、アイディアが一緒なだけでなく、なんとオチまで一緒!
これは映画が公開された時、話題にならなかったのだろうかと思い、「ウディ・アレン」 「筒井康隆」でネット検索したところ、なんと筒井康隆さん本人も今回の放送を見て初めて気づいたということが、本人の公開日記に記されていました。本人の耳に何も入っていなかったということは、劇場封切り時は誰も気づいたり、指摘したりしなかったということですよね。ひょっとして両作品の類似性にすぐ気づいたのは、筒井康隆さん本人と私だけだったりして! だとしたら鼻が高いなあ。
その筒井康隆さんの日記がとても印象深かったので、該当する部分を引用しますね。
四月十四日(月)
昨夜、BSでウディ・アレンの 「ローマでアモーレ」 を見ていたら、四つあるエピソードのうちのひとつが、なんとおれが四十年前に書いた 「おれに関する噂」 そのままではないか。平凡な会社員が突然マスコミによって有名人にされてしまい、取材攻勢に悩む。会社でももてはやされる。最後は別の一市民が有名になって、本人は見向きもされなくなるというところまで一緒だ。これが日本映画なら盗作騒ぎになる筈である。小説はアメリカでも翻訳されて出ているが、まあ、ウディ・アレンならいいか。許すとしよう。
この、「ウディ・アレンならいいか。許すとしよう」 のところ。上から目線でありながら、敬愛している様子もうかがえるなんとも奥深い一言に、思わず笑ってしまいました。さすが筒井康隆さん、男っぷりがいいですね。
本棚を探したらちゃんと残っていたので (我ながら物持ちがいい!)、久々に 「おれに関する噂」 を読んでみました。今読んでも、実におもしろい! 映画では一連の騒動の意味づけはなく、単に無茶苦茶な話として終わっているのですが、この作品ではなぜそのような現象が起きたのかを登場人物の会話の中で解説しており、マスコミの自走性に警鐘を鳴らす、社会的な側面もみてとれます。これが40年も前の作品とは! と唸らされました。
それにしてもウディ・アレン。この類似性は単なる偶然なのか、それとも昔たまたま読んだ筒井作品の記憶が頭の片隅に残っていたのか。まさか気づいていてパクッたなんてことはないと思うけど。大監督なんだから、その辺はもう少し気をつけてほしいなあ。
でもまあ、筒井康隆さん本人がそれでいいのなら、私がとやかく言うこともないですよね。うん、許すとしよう (笑)。
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ちなみに今でも売られています。約半世紀前の作品。もはや古典ですね。
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