前回までに書いたように橘氏の著作は、幸福の「資本」論も含めなかなか一筋縄ではいかない。
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「おもしろいなあ」と「ちょっと待てよ」をくり返しながら読み進めるうちに(疑問を感じながらもどんどん読めてしまうのは、筆力の見事さというしかない)、ついに本書のクライマックス。
金融資産、人的資本、社会資本を一体としてとらえる「幸福の統一理論」を以下のように結論づけている。
① 金融資産は分散投資する
② 人的資本は好きなことに集中投資する
③ 社会資本は小さな愛情空間と大きな貨幣空間に分散する
内容は、しっくりくる。それどころか、100%同意する。
だってこの結論って・・・
僕が自著、“幸せの確率~あなたにもできる!アーリーリタイアのすすめ” で提唱している生き方、そのまんまじゃないか!
① 金融資産は分散することによってリスク・リターン率を高めることができるので、あまり運用の勉強をしたり、時間を割いたりしたくない人にとってはうってつけの方策である、ということを自著ではほぼ1章を使って書いている。
② 僕がアーリーリタイアしたのはのんびりしたいからだけではなく、自分が興味があることに全力投球するためだ。医者という仕事はすばらしいものであったが、人生が有限であることを考えるとそろそろ違うことがしたくなった。
人的資本のすべてを自己実現に向けることが大切であり、金融資産はその手段に過ぎない。
この考えはブログで書いてきたし、自著でも詳述している。
③ 僕はほぼ1日中家にいて家族と過ごしている。
少ないが、仲のいい友人はいる。ここまでが、小さな愛情空間。
さらに今回の活動を通じて、いろいろな種類の比較的「軽い」つきあいの友人が増えてきたことは(大きな貨幣空間)、これまた自著でもふれている。
という具合だ。
橘氏が本書で数々の論文を下敷きに、鋭い考察を重ねていきついた幸福をつかむための生き方は、なんと、「幸せの確率」の著者、内山直が日々実践し、著書の中で紹介している生き方、ほぼそのままということになるのだ。
最後まで読んで、「どひゃぁ」となった。
もしなんらかの縁で橘氏が僕の本を手にとることがあったら、橘氏にも「どひゃぁ」となってもらえる自信がある。
そのくらい主張がかぶっている。
そして橘氏が「幸せな生き方」とは何かを考察しているのに対し、僕が書いたのは「その達成術」だ。
だから先に橘氏の本を読んで、その後僕のものを読めば、自著はちょうど「対」というか、「実践編」のような形になっている。
橘玲ファン、そして幸福の「資本」論を楽しんだ人には、ぜひ自著を手にとってもらいたいものだ。
いや、とるべきだと主張したい。
なのに・・・。世の中は実に不条理だ。
だって幸福の「資本」論はベストセラー。
自著は一去年3刷が出たあたりで、売れ行きがすっかり鈍ってしまった。
似たような内容の本のはずなのに、そして、とりようによっては成功術にも言及した僕の本のほうがより親切だとすら言えそうだというのに、この見事なまでの負けっぷりって、いったい・・・。
それにしても自著が発刊されたのが2017年でよかった。僕の本のほうが後だったら、橘氏のパクリだと思われたかもしれない・・・。
橘氏は、本書の最後をこのように結んでいる。
“あらゆるひとに適した、普遍的な「幸福の法則」はありません。この本もすべての読者が満足することはないでしょうが、それは仕方のないことでもあります。しかし心理学者は、どのようなアドバイスが有用なのかを明らかにしました。その原則はとてもシンプルです。
ひとは、自分と似ているひとからの助言がもっとも役に立つ。
この本が、「私に似た」あなたの人生になんらかの役に立てば幸いです。“
いろいろと文句をいいながらも、最終的に僕が橘氏の著作に惹かれるのは、僕が橘氏と「よく似たタイプ」だからなのかもしれない。
というわけで、橘玲著、幸福の「資本論」。橘玲をほとんど読んだことのない人には、「臆病者の株入門」と併せての購読をお薦めする。
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前述したように、氏の著書はそれまでに書いたものも含めての最終版、という側面が常にあるから、僕が記事で紹介した部分の他にも参考になる記述がぎっしり詰まっている。
ただし氏の著作を何冊ももっている人にとっては、重複の多さ故、買うほどではないと思う。図書館や立ち読みで十分かもしれない。
そしてもしこの本を楽しめたのならば、あなたは「橘玲似」であり、それはすなわち「内山直似」であるということになるから、きっと、自著“幸せの確率” も気に入るはず、とさりげなく宣伝したところで(さりげないか?)、書評はおしまい。
僕らの幸福はすぐそこにあるのだ!
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