人によって定義は違うようだが、受け継いだ遺伝子より家庭環境に重点をおいた論説が多いように見受けられる。「子どもは親を自ら選ぶことはできない」という意味です。 人生を大きく左右する家庭環境や境遇などは運任せだということを指します。
その人の今に影響を与える遺伝以外の要素は環境しかなく、環境は共有、非共有のふたつにわけることができる。双生児の相関係数からは、さらに細かな情報を得ることができます。双生児の相関係数、つまり類似性は、出生体重を例にとると、横軸にふたごのかたわれ、縦軸にそのきょうだいの数値を取った時の点の集まりのように、一方が重ければもう一方も重く、また逆に一方が軽ければもう一方も軽い、ただその類似性は完全ではなく、ある程度ばらついて下図のようになるものです。これが二卵性になれば、やはり同様に右肩上がりの図になりますが、一卵性ほどは似ていないことがわかります。
このようにわりと単純な計算によって遺伝の影響と、共有・非共有のふたつの環境の寄与率を算出することができる。おもしろいでしょ?ここで一卵性、二卵性それぞれに相関係数を調べてみますと、一卵性で0.70、二卵性で0.58になります。ここでなぜ一卵性が0.70になったかというと、それは全く同一の遺伝子によるという理由と、さらに同じ環境に育ったこと、つまり共有環境によるという理由があります。すなわち【0.70=遺伝+共有環境】ということになります。一方、二卵性双生児がなぜ0.58になるかというと、共有環境の影響は一卵性と同じと考えられますが、遺伝がその類似性に及ぼす影響は、遺伝子を半分だけ共有しているということから一卵性の半分ということになります。つまり【0.58= 1/2遺伝+共有環境】です。これで、遺伝と共有環境の簡単な連立方程式ができました。遺伝をx、共有環境をyとおけばもっとわかりやすいでしょう。
0.70= x + y、0.58= 1/2 x + y
ここから遺伝の影響(x)は0.24 (24%)、共有環境の影響(y)が0.46 (46%)であることがわかります。それだけではありません。同じ遺伝子と環境を共有する一卵性双生児でも、完全な一致である1には満ちていない。その1に満たない分は、同じ環境で育ちながらも一人ひとりに固有な環境の影響、つまり非共有環境の影響を表しています。
1-0.70=非共有環境
ここでは非共有環境の影響が0.30(30%)ということになります。このように一卵性双生児と二卵性双生児の類似性のデータがあれば、遺伝、共有環境、非共有環境という三つの要因の相対的な寄与率がわかるわけです。
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内山 直
作家、医師、医学博士。
1968年新潟県新潟市に生まれる。新潟大学医学部卒業、同大学院修了。
2004年に独立し自分のクリニックを立ち上げ、「行列のできる診療所」として評判を呼ぶが、その後アーリーリタイアメントを決意。
2016年2月、クリニックを後輩医師に譲りFIRE生活を開始する。
地方都市でゆるゆると生息中。
「お金、地位、美貌」で得られる幸福はたったの10%で遺伝が50%とされています。
残りの40%に目を向ければ、幸せはすぐにやってくる!をキャッチフレーズに幸福の啓蒙活動を継続中。