本当に、「さまざまなことを自由に決断」できるほうが、人は幸せになることができるのか?“p123
私は即座にオランダでヴェーンホーヴェン教授と話し合うことにした。
「自由すぎても不幸になることはありませんか?」そう訊くと教授はこう答えた。
「自由にはもう1つ別の側面があります。それは、何かを選択しなければならないということです。たとえばあなたがジャケットを買いたくなったとしましょう。もしジャケットが何種類もあれば、その中から選ぶのは楽しいことです。けれども同時に、自分に合わないジャケットを買ってしまう危険を冒すことにもなります。また、ジャケットが1種類しかない場合には、そのジャケットがたいていの人に合わないことはほぼ確実です」
つまり、選択にはそれなりの危険が付きものなのだ。同教授はうなずきながらこう続けた。
「しかし選択にはそれ相応のメリットがあります。さまざまなことを自由に決断できる社会で暮すほうが、人間は幸せになれるのです」“
ううむ、難しい・・・。“なぜそのようなことになるのか、自分でも不思議に思って調べたところ、TED(毎年アメリカで行われる、大規模な講演会)における心理学者・バリー・シュワルツのプレゼンテーションに行き当たりました。彼は、「現代の先進国においては、選択肢の多さが逆に人々の幸福度を下げている」と述べ、その理由を次のように説明しています。
1、 あまりにも多くの選択肢を前にすると、間違った選択をしたくないというプレッシャーから、人は、ストレスや無力感を感じる。
2、 自分が選んだものに少しでも不満が生じると、選ばなかった他の選択肢への未練により、満足度が低くなってしまう。
3、 選択肢が多いと、商品に対する期待値が上がってしまうので、たとえベストな選択をしたとしても、やはり満足度は低くなってしまう。
4、 自分が取った選択に満足できなかった場合、選択肢が少なければ、店や社会のせいにできるが、選択肢が多ければ、自分を責めざるをえない。
実際に、お店で商品の種類を増やし過ぎると、売れ行きが悪くなってしまう、という実験データもあります。何を買うのかを決めるために、より多くの労力が必要になるので、そのストレスを避けるため、一部の客は購入自体を見送ってしまうのだそうです。
シュワルツ氏は、「全く選択肢がないよりはあったほうがいいが、多ければ多いほどいいということではない。どれくらいが適切なのかはわからないが、現代の先進諸国において、選択肢の多さが私たちに快適さをもたらすという段階は、とっくに通り越してしまった」と結論づけています。“
スポンサーリンク
内山 直
作家、医師、医学博士。
1968年新潟県新潟市に生まれる。新潟大学医学部卒業、同大学院修了。
2004年に独立し自分のクリニックを立ち上げ、「行列のできる診療所」として評判を呼ぶが、その後アーリーリタイアメントを決意。
2016年2月、クリニックを後輩医師に譲りFIRE生活を開始する。
地方都市でゆるゆると生息中。
「お金、地位、美貌」で得られる幸福はたったの10%で遺伝が50%とされています。
残りの40%に目を向ければ、幸せはすぐにやってくる!をキャッチフレーズに幸福の啓蒙活動を継続中。