ファクターXは「多くの日本人がもつ効率的なキラーT細胞」? んなわけ、ないっ!


先週、新型コロナに関してひとつの研究結果がマスコミを賑わせた。

理研がコロナの「ファクターX」一部解明
https://news.yahoo.co.jp/articles/5c3b2bcd7625ba2e6580afd3ef935d58726c3fca

日本人の新型コロナ患者の重症者や死亡者が、欧米人に比べて非常に少ない理由として存在が指摘されてきた謎の要因「ファクターX」について、理化学研究所は8日、「日本人に多い特定の免疫タイプが要因の一部だと解明した」と発表した。
新型コロナのウイルスが細胞に感染すると、免疫の作用で細胞の表面に、ウイルスが侵入したことを示す抗原となるペプチドという物質が表れる。これにキラーT細胞が刺激されて増殖し、感染細胞を破壊して重症化を防ぐ。
研究チームは、日本人の約6割が持っているが、欧米人は1~2割しか持たない「A24」という免疫タイプに着目。このタイプの細胞が新型コロナに感染した際、細胞表面にどのような種類のペプチドが表れ、それらにキラーT細胞が反応するか分析した結果、「QYI」というペプチドにキラーT細胞が効率的に反応することが判明。
日本人の新型コロナ感染者に重症者などが少ないファクターXは、この免疫タイプの多さが要因の一部だと結論づけた。

あまりの馬鹿馬鹿しさに最初は記者がわかっていないのだと思い、理研のホームページを覗いてみる。
https://www.riken.jp/press/2021/20211208_1/

日本人のCOVID-19感染者数や死亡者数の割合は、欧米と比べて低いことが知られていますが、その根拠は明確ではありません。この理由を探るため、本研究では日本人に多いタイプのキラーT細胞が認識する抗原部位を探索し、実際に多くの人が反応する部位を同定することに成功しました。


ダメだコリャ。
あちこちの報道をチェックしたが、感染症専門家達も概ねこの報告を「ファクターXの一部が判明」と考えているようだ。
こいつらはいったい何を考えているんだ、と呆れてものが言えない。
(ここまで読んだ時点で僕が何に腹を立てているかに気づいたようなら、あなたも立派な「コロナ通」です)

そもそもファクターXとは何なのか、考えてみよう。
これは昨春、感染拡大初期に山中教授が提唱したもので、氏のホームページにはこのように記載されている。
https://www.covid19-yamanaka.com/cont1/74.html

新型コロナウイルスへの対策としては、徹底的な検査に基づく感染者の同定と隔離、そして社会全体の活動縮小の2つがあります。日本は両方の対策とも、他の国と比べると緩やかでした。PCR検査数は少なく、中国や韓国のようにスマートフォンのGPS機能を用いた感染者の監視を行うこともなく、さらには社会全体の活動自粛も、ロックダウンを行った欧米諸国より緩やかでした。しかし、感染者や死亡者の数は、欧米より少なくて済んでいます。何故でしょうか?? 私は、何か理由があるはずと考えており、それをファクターXと呼んでいます。

ファクターXの肝は「なぜ規制の弱い日本で感染があまり広まらないのか?」であって、致死率や重症化率の話ではない。
日本では致死率が低いと当時は考えられていなかったし、今でも大きな差はないとされている。日本で死者数、重症者数が少ないのは感染者数が少ないことが主な原因なのだ。
もちろん医療崩壊が起きたり、肥満者の割合が高い国々より多少は致死率が低いが、その点とファクターXとは何の関係もない。

そもそもダイアモンド・プリンセス号では日本人と外国人乗客との間で感染率や死亡率に大きな差はない。
https://covid19-evidence.paho.org/handle/20.500.12663/2043
多民族国家、アメリカでの人口当たりの死者数を比べると、白人とアジア系は同レベルとされている。
https://forbesjapan.com/articles/detail/36316
ダイアモンド・プリンセス号やアメリカでは、なぜA24が日本人を守ってくれなかったのだろうか?
ね、全然筋が通ってないでしょ。

ファクターXは感染の広まりにくさについての謎であり、致死率や重症化率ではない。
そして実効再生産数をみると、諸外国が日本より著しく高かったのは昨春の感染初期だけで、その後は日本と大差ない。
つまり欧米は昨夏までにファクターXを手に入れているのだ。
大きく当てはまるのはマスクしかない。
諸外国の報道をみると、日本の成功の筆頭に挙げられるのがマスク装着率の高さだが、なぜか日本国内ではこの「当たり前」が中々受け入れられず、自然免疫、交差免疫、BCG、ネアンデルタール人由来の遺伝子(!)といった珍説が代わる代わる取り沙汰されている。
研究者も感染症専門家も、木を見て森を見ずの視野狭窄に陥っているようにしか思えないのだが。

ご興味のある方は、下記記事もぜひ。
「ファクターXとは何なのか? 徹底的に考えてみる」
https://fire-earlyretire.com/blog-entry-293.html



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夕食時のキャンドルが最近の我が家の流行。

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内山 直

作家、医師、医学博士。
1968年新潟県新潟市に生まれる。新潟大学医学部卒業、同大学院修了。
2004年に独立し自分のクリニックを立ち上げ、「行列のできる診療所」として評判を呼ぶが、その後アーリーリタイアメントを決意。
2016年2月、クリニックを後輩医師に譲りFIRE生活を開始する。
地方都市でゆるゆると生息中。

「お金、地位、美貌」で得られる幸福はたったの10%で遺伝が50%とされています。
残りの40%に目を向ければ、幸せはすぐにやってくる!をキャッチフレーズに幸福の啓蒙活動を継続中。

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