自著、”幸せの確率~あなたにもできる! アーリーリタイアのすすめ” はamazonでも販売されていて、今までに多くのカスタマーレビューをいただいている。
中で一番「役に立った」の票数が多いのは、DOG_EYEさんという方によるものだ。
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その一部を抜粋させていただく。
“人生の残り時間を意識し、その残り時間でなにをやりたいのか?
それを自覚することの大切さを、この著書は教えてくれます。
そして、著者の辿ったアーリーリタイアへの過程は、間違いなくアーリーリタイアを目指す人にとっては道標になるでしょう。”
自著の特性を端的に指摘してくれていて、かつ、高評価をくれているのだから、著者としては、とてもありがたい。
ただ、こんな個所もある。
“確かに投資に関することも書いてあります。
しかし、それはインデックス投資を薦めるというよくある内容です。
こういう内容は山崎元氏の著書に、具体的な投資商品や投資方法も書いてあり、そちらの著書を読んだほうが役に立つでしょう。”
この部分は読みながら、
「ああ、それは言わないで・・・」
と身悶えた。
日本でインデックス投資の元祖といえば、やはり山崎元氏の著書だろう。真っ向から張り合う気など、さらさらない。
山崎氏は経済・金融に関してはプロ中のプロであり、僕はそれなりに勉強したとはいえ、一素人に過ぎない。
自著を書くにあたって、投資についてはインデックスをおすすめすると記した上で、自論は展開せず、山崎元氏をはじめとして、橘玲氏、バートン・マルキール氏、チャールズ・エリス氏による名著を数冊紹介するのにとどめるのも手かな、とも考えた。
だが詳細に検討した結果、やはり僕の読者に山崎氏の本を全面的にお勧めするわけにはいかない、という結論に達した。
今回は蛮勇をふるって、名著「超簡単 お金の運用術」に反論したい。
山崎氏はこの本の中で日本株を半分もつことを推奨している。その理由はこうだ。
“細かな計算抜きに説明すると、第一の理由が「日本株と外国株のリスクと期待リターンをほぼ同じと想定してリスク資産の最適化を行うと、両者半々になった」ということだ。”
さらっと読むと、納得しそうになる。
でも、ちょっと待ってくれ。
「期待リターンをほぼ同じと想定して」しまって、本当にいいのだろうか?
日本株と外国株の期待リターンを同じと想定すれば、両者のリスクはそれほど変わらないし、連動性は年々高まってきているとはいえ、まったく一致するわけではないのだから、ほぼ半々にもつのが正しいとなるに決まっている。
細かい計算などそもそも不要だ。
でも、もしここ30年間がそうであったように、日本経済が世界経済の発展から置いてきぼりにされる状況が今後も続くようなことがあれば、日本株を半分ももっていたらさっぱりパフォーマンスがふるわないということになってしまう。
もちろん逆に過去20年とは違い、今後、日本経済が世界経済をけん引していく可能性だってある。その場合は日本株を半分、あるいは半分以上もったほうがよかったということに結果的にはなるだろう。
だが、そんなことは誰にもわからない。
わからないからこそ、投資の基本は分散なのだ。
世界中に時価総額に沿った割合で分散投資すると、日本株は約10%でいいということになる。
ならば10%程度でいいのではないか?
山崎氏はそうすべきではない理由を、以下のように説明している。
“日本人は日本円で大半の将来の支出を賄うという構造を考えると、「国内株式」に為替リスクがないことのリスク縮小のメリットが効いてくるから、「国内株式」のウェイトがこの程度あってもおかしくないと申し上げておこう。この比率は、主として為替ヘッジを行わないことの反映だ。”
お金を使う時は主に円なのだから、資産の多くが円であるべき、というだけなら筋が通る。問題は日本の「株式」をオーバーウェイトしてしまうことであり、この文はそれに対する答えにはなっていない。
僕自身は自著 “幸せの確率” の中で、山崎氏が推奨する比率も「あり」だとした上で、それでもやはり、日本株比率はせいぜい20~30%にとどめるべきでは? と提案している。
日本株50%は怖い。
僕自身も一度、アベノミクス初期に50%まで上げたことがあり、結果としてはそれで正解だったのだが、それでも不安で落ち着かない日々を過ごした。
世界中に適正な比率で分散投資していれば、何かあってもじきに戻るだろう、とたかをくくることができる。
しかし日本の株をオーバーウェイトしていれば、何らかの予期せぬ理由(震災や周辺諸国とのいざこざ)で、日本株だけが暴落するような場合、回復が難しい、深いレベルでの損失を抱えることになりかねない。
心配で眠れぬ夜もあった。あんな思いはもう二度としたくない。
日本株をオーバーウェイトすることに疑問を感じた僕はその後割合を少しずつ減らし、現在はまったく保有していない。
実は以前、山崎氏は自身のコラムで、自分はヴァンガード・トータル・ワールド・ストックETFに投資していると言っている。これは各国株式の時価総額にほぼ沿った配分で、日本株の割合は(当時で)約8%。
つまり山崎氏は、日本株を50%もつことを自著では推奨していながら、自分自身は8%しか保有していないのだ。
おかしな話だと個人的に思っているのだが、これに対する批判の声はさっぱり聞こえてこない。皆が思考停止に陥るくらい、山崎氏が神格化されてしまっているのでは、と危惧している。
山崎氏の著書を評価し、参考にしている人たちは、本当に日本株を50%も保有しているのだろうか?
怖く思ったり、おかしく感じたりはしないのだろうか?
山崎氏自身は約8%しかもっていないと知っても、動揺しないのだろうか?
また山崎氏の著書では高いリスクを避けたい人に対し、その程度に応じて「個人向け国債」や「MRF」を保有することをすすめている。
読者の中には、資産の半分以上をこれらの低リスクな運用先に振り分ける人もいるだろう。
その場合、低リスク資産を円で所有するわけだから、その配分に応じてリスクマネー中の日本株比率は引き下げるべきだ。
しかし山崎氏はそこにまったく言及していない。
これを不適切というのは言い過ぎかもしれないが、僕にはやや不親切なように思えた。
確かに経済的知識において、僕は山崎氏に到底及ばない。巨人とアリくらいの格差があることは認める。
しかし自己資金の投資歴や投資額においては、山崎氏に圧倒的に勝っている。世の中には、実際に経験してみなければわからないことが多々あるはずだ。
さらに僕には山崎氏とは違い、社会的束縛が一切なく、自由に書きたいことが書けるという多大なるメリットがある。
よって僕が書いたインデックス投資の解説は、山崎氏のそれを凌駕する可能性があるのだ。
……ごめんなさい(笑)。
なんにせよ、株式投資を始める前に読んでおくべき本のひとつであることは間違いない。
現在は改定版が販売されているが、ここでも「日本株は5割」と述べていて残念。その辺は読者ひとりひとりが勉強の上、自身の方針を定めてもらうしかない。
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