岩田健太郎氏の「抑え込みをしないことも一つのプラン」論を批判する。


1月14日のミヤネ屋に岩田健太郎氏がリモート出演。そこで仰天の戦略をぶち上げた。
「抑え込みをしないこともプランの一つ」
「オミクロン封じ込め対策は、労多くして功少なし」

2022011415110000.jpg

この人の認識には現実社会とのずれが大きく、今までもたびたび批判してきた。
(参考記事「岩田健太郎著『丁寧に考える新型コロナ』を丁寧に読んだ」)
今回の発言もあまりにもひどいと思うので、僕の考えを述べる。
岩田氏の念頭にあるのはイギリスだそうだ。イギリスは経済を止めずオミクロンと対峙したが、すでに新規感染者数はピークアウトしているようにもみえる。死者数も過去の波と比べればさほど多くない。
日本も同様のやり方で乗り切ればいいのでは、 とのご意見だが、いやはや、馬鹿を言ってもらっては困る。
イギリスでは人口6700万人のうち3600万人がすでにブースター接種済みなのに加え、この半年間の累積感染者数が1000万人近い。集団免疫に近いものが形成されていると考えるべきだ。
一方、日本ではブースター接種が始まったばかりで、イギリス並みの接種率にするにはどんなに急いでも2-3か月はかかる。
オミクロン株の感染力はデルタ株の3倍以上と考えられており、その場合日本では週ごとに4倍程度感染者が増える可能性がある。計算すると4週間後には256倍だから、1日の新規陽性者数が500万人を超えることになってしまう(とっくに検査キャパを超えているのでこの数字がでることは実際にはないが)。
ある程度の行動制限あるいは自粛がない限り、ブースター接種が十分進む前に感染爆発や医療崩壊が起きる可能性が極めて高いのだ。
今後、日本の感染者数や死者数はどのように変化していくかを考えるとき、感染爆発が起き、かつブースター接種が進み、国民の抗体保有率が著しく高いイギリスと比べても得られる知見は少ない。情勢が極端な国は目立つのでつい比較の対象に選んでしまいがちだが、この場合、日本と条件がよく似ていて、かつ感染状況が先行している国を参考にすべきだ。
例えばオーストラリア。
日本、イギリス、オーストラリアでの人口当たりの感染者数がこちら(対数グラフ)。

スクリーンショット 2022-01-15 105032

イギリスと違いピークアウトの兆しがみえない。
死者数がこちら。

スクリーンショット 2022-01-15 105119

致死率はデルタ株より低いものの、当然のことながら感染者数の増加に比例して急増している。イギリスは過去の死者数がすさまじいのでグラフで見ると小さな山にもみえるが、オーストラリアでは過去最悪を更新中だ。
ちなみにオーストラリアのブースター接種率およびここ数カ月の感染者率、つまり国民の抗体保有率はイギリスよりずっと低いが、日本よりはかなり高い。日本でも適切な行動抑制がみられない限り、いくらマスク着用率が高いとはいえ、オーストラリアに近い道をたどる可能性が高いと考えるべきだろう。
もちろん日本では欧米よりさらに重症化率が低い可能性もある。僕は日本人に体質的ファクターXがあるとは思わないが、たとえば肥満率が低いことはプラスに働くかもしれない。
マスク着用率の高さや飛沫を飛ばしにくい言語特性から感染時のウイルス暴露量が低く、それに伴って重症化しにくい可能性もある。
でもそんなことはまだわからないのだ。希望的観測で楽観はできない。
逆にイギリスではすでに高リスクな人が相当数亡くなっていることを考えると、日本の方が死者数の「伸び代」があるという見方もできてしまう。
いずれは日本でも感染爆発を容認するしかなくなる可能性が高い。しかし今とブースター接種が進んだ後とでは、医療への負荷や犠牲者数は雲泥の差になるはずだ。
またこのウイルスは換気がしにくい冬に拡大しやすい。春まで凌げばそこからは同じ対策でも感染拡大速度は小さくなるだろう。
だから僕は少しでも早く緊急事態宣言を発出して、これ以上の急拡大を許すなと訴え続けているのだが、岩田氏にこの危機感はないらしく、今回、まるっきり逆方向の提言に至っている。
僕が正しいのかはわからない。僕の懸念は杞憂に終わり、日本では案外広がらない、あるいは重症化率が低い可能性もある。
でも医師や専門家は命に対してもって謙虚であるべきだ。十分なデータがない場合の見通しや提言において、我々はもっと慎重であるべきとの憤りを禁じ得ない。

専門家の称号が軽すぎるぜ……。



ランキングに参加してます。ぜひ一票を。
更新の励みになります!
    ↓
にほんブログ村 ライフスタイルブログ セミリタイア生活へ
にほんブログ村


スポンサーリンク

内山 直

作家、医師、医学博士。
1968年新潟県新潟市に生まれる。新潟大学医学部卒業、同大学院修了。
2004年に独立し自分のクリニックを立ち上げ、「行列のできる診療所」として評判を呼ぶが、その後アーリーリタイアメントを決意。
2016年2月、クリニックを後輩医師に譲りFIRE生活を開始する。
地方都市でゆるゆると生息中。

「お金、地位、美貌」で得られる幸福はたったの10%で遺伝が50%とされています。
残りの40%に目を向ければ、幸せはすぐにやってくる!をキャッチフレーズに幸福の啓蒙活動を継続中。

検索フォーム