集団免疫や行動規制によって感染拡大はどのように収束するのか? 欧米のデータから考えてみる。


以前の記事、「諸外国の動きを見るとオミクロン株の感染拡大は早期に収束する模様…って、冗談じゃないよ!」で、多くの国で短期間の拡大の後、感染が縮小している現状について、僕は下のように書いた。

僕が考える唯一の蓋然性がある説明は、「それらの国々では局所的にせよ集団免疫に近い状態が得られたのではないか?」というもの。

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これらの国々ではほとんどの場合、ブースター接種率が高く、それまでの既感染者が多く、かつオミクロン株による感染の波も高い。多くの人々が高レベルの抗体を保有しているのなら、それ以上広がらなくて当然、という見方ができるはずだ。
さらにピーク時の新規感染者数は人口の0.1-0.5%だから、日本の人口換算だと1日に12-60万人。
たとえ短期間であってもこれだけの感染が続けば。国全体でみた場合の抗体保有率が十分ではなくても、感染流行地域に住む感染リスクの高い人々には概ね感染がいきわたった可能性がある。

その後、西浦博氏も一部の国では集団免疫が成立していると解説。
https://www.buzzfeed.com/jp/naokoiwanaga/covid-19-2022-nishiura-1?bfsource=relatedmanual

(沖縄について)ピークアウトをどう捉えるかにもよりますが、南アフリカやイギリスのロンドンのように、「集団免疫」が一過性に人口内でできあがることによって減ってきたかというとそういう状況ではありません。

古瀬祐気氏もツイートで
https://twitter.com/ykfrs1217/status/1483007197009559557

①「R0(基本再生産数)=4, 世代期間=6日」と②「R0=2, 世代期間=2日」だと、②のほうが感染拡大速度が速いです。一方で、流行の制御が感染者の免疫獲得によって起こるとすると、②のほうが【早く・累計の感染者が少ない段階】で達成されます。

これが急速に感染が収束した国々で起きている可能性があるとと述べており、つまり直截ではないが集団免疫成立の可能性を示唆している。
しかし実際に調べてみると、欧米のどの国でも感染拡大が収束しているわけではないことがわかる。
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フランスは一旦落ち着いた後、再拡大。
イタリアは感染拡大が止まるもその後は横ばい。
オーストラリアやカナダは急速に収束。
日本に似て(日本よりペースは速いが)ジリジリと感染者数が増え続けているのがドイツ。
これだけの多様なパターンを集団免疫成立だけで判断するのは困難だ。
そこでこれらの国々での「行動規制の厳格さ」を12月25日時点、1月25日時点で比較してみる(色が濃い方が規制が強い)。

12月25日時点。
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こちらが1月25日。
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見ての通り、感染が収束方向にあるオーストラリアやカナダでは規制が強まっており、逆に感染拡大に歯止めがかからないフランスでは規制が弱まっていることがわかる。
横ばいのイタリアや緩やかに増加中のドイツでは規制は以前から厳しく、この1カ月で変化なし。
となるとオミクロン株感染拡大の収束には集団免疫だけでなく、各国の行動規制による側面もあるように思えてくる。
集団免疫成立によって感染拡大が収束した場合は、何の手を打たずともその後感染は急速に収束していく。しかし逆に、行動抑制策によって感染拡大を抑え込んだ場合、国内の抗体保有率は大して高くないままだから、規制を緩めれば感染の再拡大が起こりやすい。
となると成立する理屈としては、
・集団免疫が成立した南アフリカやイギリスでは急速に感染が収束
・行動規制で感染拡大を抑え込んでいるイタリアではピークアウト後も中々収束しない
・同じくドイツも行動規制で拡大を抑え込んでいるが、まだピークアウトできない状態
・オーストラリアやカナダは規制強化が成功した面もあるが、(人口が少なく、人口密度が極端に低いことが幸いして?)局所的な集団免疫が早期に成立した
となる。
単なる推測ではあるが、これ以上シンプルに現実の事象を説明するのは難しそうだ。
もちろんこれに加え、ブースター接種の進捗度合や気候変化、流行株の違い(特にBA.2の浸透度)も関与していると考えるべきだろう。

さて、これを踏まえて今後の日本での感染状況の推移を予想してみる。
まずは三浦瑠麗氏、宮沢孝幸氏らが唱える「一定期間の後、勝手に収束」という理屈は、一部の、自分たちに都合のいい国しか参考にしていないことがわかる。
「勝手に収束」してくれるには集団免疫の成立が前提になっている可能性が高く、日本の感染者数とブースター接種の進捗具合ではまだまだ先のことになってしまう。
ここでもう一度、上で提示した規制の厳格さを表す地図を見てほしい。日本の色は薄い、すなわち諸外国に比べかなり緩い規制しかしていないことがわかる。
これを強化すれば(今月初めから僕がずっと主張しているように緊急事態宣言を発出すれば)、イタリアのようにピークアウトはするかもしれないが、その後も感染者の減少は緩やかにしか起きない可能性が高い。
医師で作家の知念実希人氏が主張するような、一旦実効再生産数を1以下にすれば後は急速に収束する、というような理論が成立するとは僕には思えない。
https://twitter.com/MIKITO_777/status/1486527347444830208
(それにしてもいろいろな主張があるね)

僕からの提言はこうなる。
一刻も早く緊急事態宣言を発出して医療崩壊を防ぐ必要がある。
換気がしやすい春になれば感染の自然収束が見込まれるし、ブースター接種も進むだろうから、なんとかそれまでの時間稼ぎを!
長々と書いたあげく、今日の結論も今月の初めから繰り返している主張と何ら変わらないものとなった。

結局、それしかないのである。




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内山 直

作家、医師、医学博士。
1968年新潟県新潟市に生まれる。新潟大学医学部卒業、同大学院修了。
2004年に独立し自分のクリニックを立ち上げ、「行列のできる診療所」として評判を呼ぶが、その後アーリーリタイアメントを決意。
2016年2月、クリニックを輩医師に譲りFIRE生活を開始する。
地方都市でゆるゆると生息中。

「お金、地位、美貌」で得られる幸福はたったの10%で遺伝が50%とされています。
残りの40%に目を向ければ、幸せはすぐにやってくる!をキャッチフレーズに幸福の啓蒙活動を継続中。

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