ちなみにラムネの語源はレモネード。それが変化してラムネになったのはご存じの方も多いだろう。日本人ならだれしもラムネというと、ガラス玉の入ったあのびんの形を連想するが、どうやらあの形は日本だけのものらしい。イギリス人が特許をとったびんの形でありながら、すでにイギリスからは姿を消しているというのだ。私はふだん、外国人留学生に日本語を教えているので、学生たちにラムネのびんを見せたところ、自分の国では見たことがない、という学生ばかりだった。
となると使われたのは昭和初期か。当時の「モボ」や「モガ」が、「このロイド眼鏡、ラムネで買ったんだ」なんて言っていたのかな、と想像すると楽しい。げっぷが出るから「月賦」を「ラムネ」といっていたなんて聞いたことがないけど、どの辞典にも記載があるので、ある時期までは使っていたのだろう。炭酸ならまだほかにもあるじゃないか、コーラとかサイダーとか、と思いそうなものだけれど、ラムネのほうが歴史が古い。明治5年には東京(製造販売の許可を取得した年で、発売自体は慶應元年に長崎でされた)で発売されていたというから驚きだ。月賦の歴史も近代に入ってからのもので、全国的に広まったのは関東大震災以降の消費文化が到来してからだから、実際に使われていた時期は限られているかもしれない。
日本にはじめてラムネの元祖である炭酸飲料がやってきたのは、ペリーが浦賀に来航したときだという。1853年、交渉にあたった幕府の役人がふるまわれた。ラムネの栓をあけたときの「ポン!」という音を銃声と勘違いした役人たちは、いっせいに刀の柄に手をかけたという。
160年以上がたった今、私たちはラムネの音に驚かないし、帯刀もしていない。
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内山 直
作家、医師、医学博士。
1968年新潟県新潟市に生まれる。新潟大学医学部卒業、同大学院修了。
2004年に独立し自分のクリニックを立ち上げ、「行列のできる診療所」として評判を呼ぶが、その後アーリーリタイアメントを決意。
2016年2月、クリニックを後輩医師に譲りFIRE生活を開始する。
地方都市でゆるゆると生息中。
「お金、地位、美貌」で得られる幸福はたったの10%で遺伝が50%とされています。
残りの40%に目を向ければ、幸せはすぐにやってくる!をキャッチフレーズに幸福の啓蒙活動を継続中。