金融資産100億円超えの方から学んだこと


ご本人に迷惑がかかるといけないので、詳細については一切書かないが、とある地元財界の大物と親しくさせて頂いている。
Aさん、と書かせてもらう。
どのくらいすごいかというと、たとえば僕が知り合った前の年の納税額は数十億円だったそうだ。ふるさと納税の手配が大変だったとのこと(それだけ資産があっても、ふるさと納税するのね)。
こういう方と知り合うことになったのも、僕が現在細々と行っている、出版やブログを通じて停滞する資本主義下での新しい幸福論を考察したいという活動に、賛同してくれる人が仲介してくれたから。
実にありがたい。
さて、そのAさん。
もちろん社会的地位も高いし僕よりも年上なのだが、とにかく一切偉ぶらない。自慢話もしない(すごい話もするが、事実だけを淡々と語るだけで自慢に聞こえない)。僕の生意気な意見にも真剣に耳を傾けてくれる。
ちなみにお金にはほとんど興味がないそうだ。普通の服を着て、普通の家に住んでいる。豪邸に住みたいなどとは思ったことがない。腕時計ももっていないそうだ(実際、この日もつけていなかった)。
車や腕時計で見栄をはる気持ちが全然わからない、と言っていた。
金儲けには昔から興味はなく、ただ「いいと思うこと」「正しいと感じること」を重ねてきたら、いつのまにか資産家になったと、豪語、ではなく、呟くように口にする控え目な立ち居振る舞いが印象的だった。
僕は自著“幸せの確率”やこのブログの中で、幸福は物質的なものではなく、精神的なものや人とのつながりの中にあるはずだ、と繰り返し書いてきた。
きれいごとを言っているつもりはない。実際、幸福学のデータにも、そのようなものは多々ある。
実際にこれだけの資産家が、物質的なものに何の関心ももたない姿を目の当たりにして、より多くの富を目指すのではなく、アーリーリタイアして自己実現のための時間を確保するという僕の選択は正しかったとの思いを深めた。
(そしてそういう人だからこそ僕に興味をもってくれたのだと思う)
Aさんは社会勉強のためもあって、株は10億円くらいもっているとのこと。たいした額でなくても(←本当にそう言った)、株をもつことによって経済記事の読み方が違ってきて興味深いのだそうだ。
そういう視点だから、保有しているのはすべて個別株になる。
自著でも書いた通り、僕は個別株を所有しておらず、人にもすすめていない。世界中に分散投資したほうが基本的にはリスク・リターン率が高いと考えているし、そもそも短い人生で銘柄調査にあてる時間がもったいない。
僕が株を保有する目的は「できるだけ時間を割かず、楽に資産を増やすこと」であるのに対し、Aさんの発想は、「株を所有することによって、経済の理解を深めたい。儲かるにこしたことはないが、まあ、そこはどうでもいい」なのだから、やり方が真反対で当然だ。
ちなみに株はかなり利益が出ているとのこと。
Aさんは首を傾げながら、こう言うのだった。「多分だけど、儲けようとしないから儲かっちゃうんじゃないかなあ?」(←ホントにホントにこう言った!)

Aさんからうかがった話しの中で、一番感銘をうけた言葉。
「僕は本当に、なんにも考えないで生きてるのよ」
結果としてこれだけの社会成功を収めたのだから、直感だけで正しい決断を重ねてきたということになる。なぜそのようなことができるのか?それは心の中に、邪心や雑念がないからだと僕は考える。
だから自分が心底欲しているものが、すぐさま理解できるし、結論も見えてくる。これはできそうでできない。
実はAさんと会う数日前、僕はヨガ・瞑想の達人と呼ばれている人と話をする機会があって、その人に、
「なぜ君は答える前に考える。即答しなさい」
と注意されたばかりだった。
なぜ僕は即答できないのか?
まず、心の中が自分でもよくわかっていない。即答しようとすると、それは単なる反射神経によって繰り出された、実のない見識になってしまうように思えるので、反射的な発言は控えようとする癖がある。
それに加え、相手が気を悪くしないかとか、こんなことを言ったら自分の浅はかさが見透かされないかなどとつい考え、予防線を張ってしまう。これらの作業はほんの一瞬で終わるのだが、その一瞬の逡巡を会ってすぐに見抜かれてしまったというわけだ。
そのような経験の直後だったのもあって、Aさんに向かって僕の想いを熱く語ってみた。
「Aさんが瞬時に決断できるのは、自分の真の心が常に見えているからではないですか?雑念や保身、執着心が多く、心が濁っていれば、そうはいかないはずです。仏教でいうところの『悟り』に通じるところがあるように思えてなりません。実は僕は、そのような境地を目指していて、アーリーリタイアした理由のひとつもそこにあります。現在は瞑想やヨガを通じて、自己実現を目指しているところです」、と。
僕の熱弁に対するAさんの言葉は、あっさりとしたものだった。
「どうかねえ。瞑想なんて、考えたこともないなあ」

なるほど、さすがは「ミスター・考えない人」だ。それだけの境地に達するのに、瞑想など必要としない何らかの経験か、あるいは、もって生まれた才覚があったのだろう、と僕は想像する。
「考えない」というのは素晴らしい。Aさんの気取りのない微笑みに触れると、ロダンの「考える人」なんて、深刻ぶっているだけでまるっきり馬鹿みたいに思えてくる(個人的見解です。すいません)。
僕はAさんの収入も資産も、別にうらやましくはない。ビル・ゲイツも言っている通り、10億円を超えるような資産はトラブルの元であるようにさえ思える。
ただ、Aさんの「考えない人生」、僕なりに解釈すれば、「心中に曇りのない境地」には強く惹かれた。

将来、僕はAさんのような人生の達人になれるのだろうか? そのためには、今の僕のやり方でいいのだろうか?
コロナ禍もあってAさんには久しく会えていない。
前向きな方向に背を押してくれる、新しい刺激がほしいなあ。



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内山 直

作家、医師、医学博士。
1968年新潟県新潟市に生まれる。新潟大学医学部卒業、同大学院修了。
2004年に独立し自分のクリニックを立ち上げ、「行列のできる診療所」として評判を呼ぶが、その後アーリーリタイアメントを決意。
2016年2月、クリニックを後輩医師に譲りFIRE生活を開始する。
地方都市でゆるゆると生息中。

「お金、地位、美貌」で得られる幸福はたったの10%で遺伝が50%とされています。
残りの40%に目を向ければ、幸せはすぐにやってくる!をキャッチフレーズに幸福の啓蒙活動を継続中。

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