さて、どんな知見が後述されているかというと……。p146~
実際のところ、知能テストも学力試験もその有用性には限界があることは強調しなければならい。それらは、「世代内の」一般知能の差を測るには有用だが、「世代間の」差を測るには適していない。なぜなら、社会の基礎的なインフラが変化して、人々がテストにもっと慣れて、テストの点数を上げるような思考をするようになるからだ。(中略)一般知能の経時的変化を測るには、知能テストは適していない。もっと文化的な変化に対して頑健で、客観的な変数が望ましい。それについては後述する。
反応時間(p158~)
反応速度は、認知能力についての頑健な「比率尺度」の指標である。
(中略)
例えば7000人以上のサンプルに基づくスウェーデンの研究では、1959年から1985年の間に、音に対する反応速度は3から16ミリ秒遅くなった。
色の識別(p161~)
知覚的な識別能力がg因子(内山注;一般知能因子)と相関するのは、近くの識別が明瞭であればあるほど、微妙な違いに気づくことができるからだ。(中略)これが最近の研究において、一般知能と一般的な識別能力が、時に0.92にもなる高い相関を見せる理由である。
(中略)
4つの研究を通じて、色の識別能力は大きく低下しており、それは10年あたり3.15ポイントに相当する。
難度の高い言葉の使用(p163~)
ウドリー・オブ・メニーと同僚たちは、難易度の高いワードサムテストの4つの言葉について、16世紀から現代に至るまでの頻度を調べた。その結果、16世紀から19世紀までそれらの言葉の頻度は上昇し、その後は低下していた。
数字の逆暗唱(p165~)
数値を与えられた反対の順番で思い出すテストは「逆暗唱」として知られているが、それはワーキング・メモリの能力を表す。(中略)
1923年から2008年にかけれ出版されたデータを再解析した結果、逆暗唱は、知能にして10年あたり0.16ポイントほど低下していた。
空間認知(p166~)
空間認知能力は、環境要因の改善から生じる表現型の限界に達した後に、一般知能の低下が顕在化したことになる。簡単にいえば、我々は三次元物体の動きについて、次第に理解しづらくなってきている。
天才の割合とマクロ・イノベーション(p168~)
人口比率で見た天才の数と、天才が生み出すマクロ・イノベーションは19世紀中盤以来、低下してきた。チャールズ・マレーによると、主要な科学的なブレイクスルーは1825年ごろにピークを迎えた。もちろん、これは産業革命の全盛期にあたる。その後は科学的なブレイクスルーは減少し、同じようにマイクロ・イノベーションの割合も低下した。
創造性(p172~)
心理学者キョム・ヘ・キンは「想像のトーランス・テスト」を用いて、27万2599人の人々の、平均的な創造性の変化を調べた。(中略)1990年以降、創造性は急速に低下していた。
教育水準と変異遺伝子(p176~)
1910年から1990年生まれの12万9808人のアイスランド人のサンプルから、平均的なPOLYEDU(教育水準についての遺伝子)スコアは、およそ10年に0.010標準偏差の割合で低下していることを見出した。
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内山 直
作家、医師、医学博士。
1968年新潟県新潟市に生まれる。新潟大学医学部卒業、同大学院修了。
2004年に独立し自分のクリニックを立ち上げ、「行列のできる診療所」として評判を呼ぶが、その後アーリーリタイアメントを決意。
2016年2月、クリニックを後輩医師に譲りFIRE生活を開始する。
地方都市でゆるゆると生息中。
「お金、地位、美貌」で得られる幸福はたったの10%で遺伝が50%とされています。
残りの40%に目を向ければ、幸せはすぐにやってくる!をキャッチフレーズに幸福の啓蒙活動を継続中。